会計・監査ダイジェスト 会計及び監査を巡る動向 2020年10月号

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

ハイライト

今月は米国基準にいくつかの動きがありました。

1. 日本基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

日本基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(日本基準)

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2.国際基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

IFRSについての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(IFRS)

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3. 修正国際基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

修正国際基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(修正国際基準)

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4. 米国基準

会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))

【最終基準(会計基準更新書(Accounting Standards Update; ASU))】
(1)ASU第2020-08号「ASCの改善、債権 - 返還不要な手数料及びその他の費用(サブトピック310-20)」の公表(2020年10月15日 FASB)

FASBは、意図しない形でガイダンスが適用されないようASC(会計基準編纂書)を改善・明確化するプロジェクトを進めており、本ASUの公表もその一環として行われた。当該プロジェクトで取り扱われている事項は、基本的には、現在の会計実務に重要な影響を与えたり、その適用にあたって多くの企業に負担を増加させたりすることは想定されていない。なお、本ASUは、利害関係者の認識を高め、適用を促進するために、同プロジェクトのもとでの他のASCの改善とは独立して公表されている。

FASBは、2017年3月にASU第2017-08号「債権 - 返還不要な手数料及びその他の費用(サブトピック310-20):償還可能負債性証券のプレミアム部分の償却」を公表し、プレミアム価格で購入した償還価格及び償還可能日が確定した償還可能負債性証券のプレミアム部分については最も早い償還可能日までに償却する旨の改訂を行った。本ASUは、発行者による償還可能日が複数存在する場合における上記の規定の取扱いの明確化を図るものである。具体的には、そのような証券の保有者は、各報告期間において帳簿価額が次回償還日における償還価格を超過するか否かを判定し、超過額については原則として次回償還日までに償却を行うことを明確化した。

本ASUは、適用開始事業年度の期首時点で保有する償還可能負債性証券及びその後に新規購入した償還可能負債性証券について将来にわたって適用する。適用開始と早期適用は以下のとおりである。

  公開の営利企業 その他の企業
適用開始 2020年12月15日より後に開始する事業年度(期中期間は年度と同じ) 2021年12月15日より後に開始する事業年度(期中期間は2022年12月15日より後に開始する期中期間)
早期適用の可否 認められない 2020年12月15日より後に開始する事業年度及び期中期間より認められる

 

(2)ASU第2020-09号「負債(トピック470):SECリリースNo.33-10762に基づくSEC関連の要求事項の改訂」の公表(2020年10月22日 FASB)

本ASUは、2020年3月に公表されたSECリリースの内容をASCに反映するためのものである。当該SECリリースの解説については下記Defining issues(英語)を参照。

KPMGの関連資料:Defining issues(英語)


(3)ASU第2020-10号「ASCの改善」の公表(2020年10月29日 FASB)

「ASCの改善」は、基準の技術的な改正のためのFASBの継続的なプロジェクトの一環で、基準の明瞭化や意図しない基準の適用を排除するため、実務に重要な影響がないと見込まれる範囲で基準の改訂を行うため、継続的に公表されている。本ASUには、「その他の表示(Other Presentation Matters)」セクションと「開示(Disclosure)」セクションとで要求事項の整合性を取るための改訂などが含まれている。

KPMGの関連資料:Defining issues(英語)

【公開草案(会計基準更新書(ASU)案)】
(1)ASU案「リース(トピック842) - 限定的な改善」の公表(2020年10月20日 FASB)

ASU案は、リース(トピック842)の適用後レビューで利害関係者から指摘された複数の論点に対応するため、以下の改訂を行うことを提案している。

論点1:変動リース料を含む販売タイプリース - 貸手の会計処理

トピック842では、指数やレートの変動に基づかない変動リース料は、リース債権の当初測定に算入されず、当該変動リース料の基礎となる事実及び状況の変動が生じた期のリース収益として処理される。このため、リース料のほとんどが指数やレートの変動に基づかない変動リース料から構成されるリース契約について、貸手がこれを販売タイプリースに分類した場合、リース期間全体でみれば利益の発生が見込まれるリース契約であっても、リース開始日において認識中止される原資産の帳簿価額と、当該変動リース料が算入されないリース債権との差額が損失として認識される場合がある。このような契約は特にエネルギー産業でより広まってきており、利害関係者から会計処理が実態を表さないという指摘がされていた。

本ASU案は、貸手がリースの分類を検討するにあたり、リース料のほとんどが指数やレートの変動に基づかない変動リース料から構成されているリース契約について、トピック842の販売タイプリースの要件を満たすか否かに関わらず、オペレーティング・リースとして分類することを提案している。

論点2:リース負債の再測定の選択 - 借手の会計処理

トピック842では、リース契約に指数やレートに基づく変動リース料が含まれている場合、借手が、当該指数やレートの変動のみに伴いリース負債を再測定することは禁止されている。一方、IFRS第16号「リース」は、指数やレートの変動によりリース料が変動した場合、借手にリース負債を再測定することを要求している。米国会計基準とIFRS基準の両方で財務諸表を作成しているデュアル報告企業が借手の場合、この要求事項の相違により同一のリース契約について異なる会計処理が求められることから、実務上の負担が生じているという指摘がされていた。

本ASU案は、指数やレートの変動によりリース料が変動した場合に、リース負債を再測定することを企業全体の会計方針として選択できること、また、この選択を行った企業はその旨を開示することを提案している。

論点3:リース契約の範囲を縮小する契約変更

複数のリース構成要素を含むリース契約について、契約を変更し、その一部を早期解約した場合(例えば、自動車100台をまとめてリースする契約について、そのうち30台を早期に解約するようなケース。当初契約に含まれていた解約オプションの行使による一部解約の場合は含まない。)、トピック842は、残余部分について、リースの分類を再検討し、会計処理を修正することを企業(借手及び貸手)に要求している。しかし、早期解約が残余部分の経済実態に影響がない場合でもリースの分類の再検討や会計処理の修正が求められることで、実務的な負担が生じている点や、経済実態に影響がないリース契約の残余部分について会計処理を修正することは実態を適切に表さないことについて、利害関係者から問題が指摘されていた。

本ASU案は、リース契約の一部のみの早期解約が行われ、残余部分の経済実態に影響がない場合に、これをリースの条件変更としては扱わず当該残余部分のリース分類の変更や会計処理の修正は行わないことを提案している。

本ASU案の適用時期は、利害関係者からのフィードバックを踏まえて決定される。早期適用を認めること、また、企業が、本ASU案に含まれる各論点の改訂を個別に適用し、それぞれに経過措置を採用することを認めることが提案されている。
ASU案のコメント期限は2020年12月4日である。

KPMGの関連資料:Defining issues(英語)

(2)ASU案「1株当たり利益(トピック260)、借入金 - 条件変更及び消滅(サブトピック470-50)、報酬 - 株式に基づく報酬(トピック718)並びにデリバティブ及びヘッジ - 自己の株式に係る契約(サブトピック815-40):単独で存在し資本に分類される先渡契約及びオプション契約の特定の条件変更又は交換に関する発行者の会計処理」の公表(2020年10月26日 FASB)

ASU案は、単独で存在し資本に分類される先渡契約及びオプション契約(例えば、新株予約権)に対して条件変更又は交換が行われる場合で、条件変更又は交換後の契約も同じく資本に分類される場合を対象としている。このような場合の発行者の会計処理は、現状、明確なガイダンスがないことから、たとえ経済的に類似の条件変更又は交換であっても実務にばらつきが生じている。そこでFASBは会計処理の明確化を図るために本ASU案を公表した。本ASU案はFASBの発生問題専門委員会(EITF)の会議のコンセンサスに基づいている。

本ASU案は、「報酬 - 株式に基づく報酬(トピック718)」の対象となる金融商品の条件変更又は交換、又は「デリバティブ及びヘッジ(トピック815)」に基づきデリバティブとして会計処理されている契約には適用されない。また、本ASU案は、保有者の会計処理にも影響を与えない。

本ASU案は、単独で存在し資本に分類される先渡契約及びオプション契約に対して行われる条件変更又は交換の影響について、発行者が行う認識及び測定の会計処理が取引の経済的実質を反映するよう、原則主義的な枠組みを提案している。本ASU案の主な提案は以下のとおりである。

1.  条件変更又は交換は、既存の金融商品を新たな金融商品に交換するものとして取り扱う。

2.  条件変更又は交換の影響は、条件変更又は交換後の金融商品の公正価値が取引前の金融商品の公正価値を上回る場合において、その超過分として測定する。なお、下回る場合については本ASU案の適用はない。

3. 条件変更又は交換の影響は、その取引の実質に基づき、あたかも対価として現金が支払われた場合と同様に、以下の通り認識する。

a. 資本を発行する取引:「その他の資産及び繰延費用(トピック340)」に基づき、資本発行コストとして認識する。
b. 負債を発行する取引又は負債の条件変更:「借入金(トピック470)」及び「利息(トピック835)」に基づき費用として認識する。
c. 財又はサービスの対価:「報酬 - 株式に基づく報酬(トピック718)」に基づき費用として認識する。
d. 上記以外:配当金として認識する。

4.  取引の実態が複数の要素から構成されている場合には、影響額を各要素に按分する。

本ASU案の適用日は、関係者からのフィードバックの後に決定する予定である。企業は、本ASU案の適用方法として、遡及適用又は将来に向かっての適用のいずれかを選択でき、早期適用も認められている。

本ASU案のコメント期限は2020年12月28日である。

KPMGの関連資料:Defining issues(英語)

(3) ASU案「参照金利改革(トピック848):適用範囲の改善」の公表(2020年10月29日 FASB)

FASBは、2020年3月にASU第2020-04号「参照金利改革(トピック848) - 財務報告へ及ぼす影響に対する軽減措置」を公表し、LIBOR等、公表停止が予定される金利指標を参照している契約について、参照金利改革から生じる潜在的な会計処理上の負荷を軽減するための選択可能なガイダンスを提供した。ASU第2020-04号についての解説は会計・監査ダイジェストの2020年3月号を参照されたい。

ASU第2020-04号の適用範囲は公表停止が予定される金利指標を参照する契約又はその他の取引とされている。この点、公表停止の予定がない金利指標を参照しているデリバティブであっても、公正価値を算定する際の割引計算、デリバティブの公正価値を基礎とする証拠金の計算、証拠金の付利の計算には特定の金利指標が使用されており、当該金利指標が参照金利改革により代替される場合には会計的な影響がある、との指摘が利害関係者からなされていた。

本ASU案は、上記のような割引計算や証拠金計算、証拠金の付利計算に使用される金利が金利指標改革により代替される場合(これをdiscounting transitionと称する)は、デリバティブの参照金利に公表停止の予定がなかったとしても、当該デリバティブが軽減措置の対象となるよう、ASU第2020-04号の適用範囲を明確にすることを提案している。結果として、当該デリバティブは、契約変更の軽減措置の対象となり、またヘッジ手段に指定されている場合にはヘッジ会計に関する特定の軽減措置の対象となる。

ASU案は、最終基準として公表された日から適用されることが提案されている。適用にあたっては、2020年3月12日(ASU第2020-04号の公表日)が含まれる期中報告期間の期首から、もしくはそれ以降の任意の日から遡及適用するか、または最終基準が公表された日を含む期中報告期間内の任意の日から、もしくはそれ以降の任意の日から新たな契約変更に対し将来に向かって適用することが選択できる。また、本ASU案による軽減措置は、ASU第2020-04号と同様に、原則として2022年12月31日を超えては適用できない。

本ASU案のコメント期限は2020年11月13日である。

米国基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(米国基準)

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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