新型コロナが会計処理に与える影響ー契約が赤字になる可能性

新型コロナの影響により契約の採算性が悪化するケースについて、お悩みを解決する可能性のあるヒントをお伝えします。

新型コロナの影響により契約の採算性が悪化するケースについて、お悩みを解決する可能性のあるヒントをお伝えします。

IFRSのヒント

IFRSの適用現場から、実務のつれづれを語ります。

1.はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大は、ソーシャル・ディスタンスの確保や3密の回避、テレワークや時差出勤といった「新しい生活様式」への変化だけでなく、休業や外出自粛による消費の減少などビジネスにも大きな影響を与えています。

たとえば、新型コロナウイルス感染症に関連してこんな状況は生じていないでしょうか?

  • 遅延に係るペナルティが発生するかもしれないけれど、お客様と工事完成期日の延期を相談できないだろうか(損失を生じさせる不利な契約)

上記のようなお悩みは、企業の会計及び開示に対して重要な影響を及ぼす可能性があります。この点、KPMGでは、IFRS適用企業の経営者及び経理担当者のみなさまに向けて、新型コロナウイルス感染症に係る論点別の解説記事を随時公表しています。

もしかすると、以下にみなさまのお悩みを解決するヒントがあるかもしれません。

2.不利な契約の認識

新型コロナウイルスの感染拡大により当初想定していた取引条件が変更され、採算が取れなくなったり、納期遅延または不履行に対するペナルティが課されたりする可能性があります。IFRSは、契約による義務を履行するための不可避なコストが、当該契約により受け取ると見込まれる経済的便益を上回る契約を「不利な契約」と定義しており、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従い、当該契約による現在の債務を引当金として認識、測定する必要があります。

例えば、コロナ対応による追加コストの発生や、部材調達価格の変更又は仕入先の見直し等によりコストが増加するか、増加すると見込まれる場合、不利な契約に該当する可能性があります。また、需要低下に伴う価格の低下により利益が減少するか、減少すると見込まれる場合も、販売契約が不利になる可能性があります。不可避的なコストを評価する際には、契約の解約条項や不可抗力条項を含め、契約条件を慎重に検討する必要があります。

不利な契約に係るコストと便益を評価する場合、企業は報告日時点での見積りを反映し、非金融資産の減損など、他の資産の回収可能性評価で使用されているものと整合的な前提条件を使用する必要があります。新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況は急速に変化しているため、報告日時点で入手可能な情報、状況及び見通しを反映させるために、企業は報告日以前に行った予測の更新に留意する必要があります。なお、不利な契約に対する引当金を認識する前に、企業は、当該契約に紐づいたすべての資産の減損テストを行います。

執筆者

会計プラクティス部
シニアマネジャー 島田 謡子
マネジャー 北村 智子

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