「デジタルレポーティング2.0」の夜明け

「デジタルレポーティング2.0」の夜明け

企業報告の未来~財務・非財務の境界を越えて~第3回:財務報告の領域ではデジタルテクノロジーを活用した企業報告が進み、テクノロジーが企業報告に果たす役割は年々大きくなっています。近年の企業評価における非財務情報の必要性の高まりと、ビッグデータや機械学習などテクノロジーの進化に伴うデジタルレポーティングの進展を3つの視点から考察します。

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財務報告の領域ではデジタルレポーティング(デジタルテクノロジーを活用した企業報告)が進み、テクノロジーが企業報告に果たす役割は年々大きくなっています。近年の企業評価における非財務情報の必要性の高まりとビッグデータや機械学習などテクノロジーの進化によって、私たちは「デジタルレポーティング2.0」とも言える新たな時代の入り口に立っているのかもしれません。

本稿では、デジタルレポーティングの進展を3つの視点から考察します。

第1の視点:報告書作成業務のデジタル化・自動化

自動化による効率化は、企業にとって古くて新しい課題であり、この処方箋として近年注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)によるコンピュータ操作の自動化です。報告書作成業務のうち、基幹システムからの情報のダウンロード、大量データの集計、数値の転記などの定型的、反復的な操作は、RPAによる自動化で作業時間が削減できます。
しかし、自動化の真の障壁は、データがシステムごとに部分最適化され、企業全体での最適化が図られていない点にあります。
その解決には異なるシステム間でのデータの相互運用性を確保するためのデータマネジメントが必要です。その上で、DMS(Disclosure Management System)と呼ばれる開示データ管理の仕組みを導入することで、データの収集、蓄積、分析、報告のプロセスの連携が図られ、業務の効率化が進むでしょう。

第2の視点:非財務情報を含む統合的なデジタルレポーティング

財務報告においては、有価証券報告書におけるEDINETのように、情報がデータ化され、コンピュータが判別可能なタグが付けられ、誰でもアクセス可能な仕組みが構築されています。利用者は知りたい情報のタグさえ指定できれば、企業のデータを入手し、自由に比較や集計をすることができます。
この財務情報のアクセシビリティを支えているのは、グローバルに共通化が進んでいる「財務会計」という企業評価の物差しと、それを電子的に表現するXBRL(eXtensible Business Report Language)という技術です。近年、非財務報告の領域でも、財務領域と同様の進展を予見させる動きが見られます。GRI (Global Reporting Initiative)やCDSB(Climate Disclosure Standards Board)がXBRLの利用を前提としたタクソノミーを公表し、いくつかの企業がそれらを使ったデジタルレポーティングを実践しています。SASB(Sustainability Accounting Standards Board)にも同様の動きが見られ、各基準団体が、それぞれのフレームワークに基づくデジタルレポーティングを推し進めています。
しかし、各基準団体が独自に公表しているタクソノミーは、開示項目の定義が基準間で必ずしも統一されていないため、企業側もデータ利用者側もデジタルレポーティングの恩恵を最大限に享受できていません。
この解決には、「財務会計」と同等レベルでの非財務情報の語彙の共通化に向けた整理が必要であり、非財務報告の基準設定団体を含めたステークホルダー間での合意形成の進展が待たれます。

第3の視点:AI(人工知能)技術を用いた企業評価の動き

AIを用いた高度なテキストマイニング機能により、インターネット上の膨大なテキストデータから企業に関連する情報を収集し、企業を評価しようとする取組みが進んでいます。
英国を拠点とするクオンツ運用会社は、複数のESG評価機関からのデータに加え、日々更新されるニュースメディアサイトから収集した企業に関する情報をAIで自動評価した結果を活用し、企業のESGスコアを提供するサービスを開始しています。また国内でも、企業がウェブサイトで公表した情報をAIによる評価システムで自動的に解析し、ESGスコアを算出する企業評価サイトが登場しています。
これらAI技術を用いた企業評価はまだ黎明期ですが、企業価値との相関性に関する実証研究やさらなる技術進歩により、新たな企業評価の手法として定着する可能性は否定できません。


以上で見てきたような「デジタルレポーティング2.0」と言える世界が現実となったとき、企業報告のあり方やそれに関わる人々の役割は大きく変容することが考えられます。それは、「統合的思考」の実践が、企業価値を大きく左右する時代の到来とも言えるでしょう。

執筆者

KPMGジャパン コーポレートガバナンスCoE
KPMGあずさサステナビリティ株式会社
シニアマネージャー 引場 克尚

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