【第21回~TCFDを旅する~】責任投資原則PRIによるEUタクソノミー適用テスト

【第21回~TCFDを旅する~】責任投資原則PRIによるEUタクソノミー適用テスト

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~ 第21回:今回は、PRIが公表したEUタクソノミー適用テストに関するレポートを概観します。

加藤 俊治

KPMG サステナブルバリュー・ジャパン/LEAD of TCFD/Taxonomy group

あずさ監査法人

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責任投資原則(PRI)は、資産運用会社等40社によるEUタクソノミーの適用テストの結果に関するレポート“TESTING THE TAXONOMY - INSIGHTS FROM THE PRI TAXONOMY PRACTITIONERS GROUP -”を2020年9月9日に公表しました。その適用可能性に疑義が表されることもあったタクソノミーですが、いよいよ実践フェーズに入ったといえるでしょう。
ただし、EU域外国の企業に対しては、その適用可能性に大きな課題があることが明示されています。

レポートの主要な部分は、適用テストの結果判明した課題とその解決案、そしてタクソノミー開発に関する金融規制当局へのレコメンデーションです。

課題とその解決案

データ関連

課題 解決案
  • 必要なデータが不明確、入手不可能、数値化されていない、信頼性に問題がある。
  • DNSHに関する評価をデータ不足により実施できない。
  • EUタクソノミーをEU域外の投資先に適用するのは困難。
  • EUタクソノミーでカバーされていない経済活動がある。
  • 評価の対象となる経済活動が、EUタクソノミーの分類と企業の分類で異なっている。
  • 投資先企業との対話を実施して、データの不足や信頼性を補う。
  • 投資活動を行うチームとサステナビリティ専門家が協働する。
  • 投資先に対して、投資チームと協働してESGデューデリジェンスを実施する。
  • データプロバイダーの協力を仰ぐ。
  • 特にEU域外の投資先については、他の投資家と協働する。

アプローチ方法

課題 解決案
  • EUタクソノミーを理解するのに膨大な時間が掛かる。時間を掛けたからといって、正確な解釈ができるとは限らない。
  • DNSHを評価するには高度な専門性が必要となる。
  • 技術に関する深い洞察がないとEUタクソノミーを解釈できない。
  • データが完全でないと結論の正確性を担保できない。
  • 最初は小さなグループから始める。
  • 場合によっては、主観的な評価になることについて合意形成する。
  • 第三者を利用する。
  • 投資先企業との対話を通じて、正確な評価に近づけていく。

プロジェクト開始に際して

課題 解決案
  • すぐに利用できるソリューションやツールは存在しない。
  • 投資家には、能力、時間、リソースなどの限界がある。
  • データプロバイダーの利用を検討する。
  • 投資先企業のうちごく一部分をサンプリングして、そこから実施する。

金融規制当局へのレコメンデーション

データ関連

  • EUタクソノミーの開示は、非財務情報の開示に含まれるが、現行の非財務情報開示の範囲を超えるものになると想定される。また、非公開企業、グリーンボンドの発行体についても情報開示の拡充を検討するべきではないか。
  • 現状の開示内容では、EUタクソノミー開示に利用するには粒度が粗い。事業単位、製品単位の収益開示、EUタクソノミーに準拠した企業の信頼できる開示情報が必要ではないか。
  • DNSH等に関しては、開示形式の標準化が必要ではないか。
  • 企業によるEUタクソノミー開示に対する監査、保証などの導入を検討するべきではないか。

ガイダンス

  • EUタクソノミーのセーフガードや質的判断基準しか示されないようなDNSHについては、チェックリストのようなものが必要ではないか。特にEU域外の企業を評価するには重要である。
  • EU域外企業にEUタクソノミーを適用するためのツールが必要ではないか。
  • 売上のEUタクソノミー準拠割合の計算に際して、損益計算書を使うのか、キャッシュフロー計算書を使うのか、ガイダンスが必要ではないか。
  • マルチアセット戦略を採用しているファンドは、どのようにグリーン割合のダブルカウントを回避するのか、ガイダンスが必要ではないか。
  • TRを初度適用する時点では、企業による十分な開示が行われていない可能性がある。データの入手可能性が低いことからくる資産運用会社等による開示の限界について、金融規制当局は何らかの配慮を行うべきではないか。

EUタクソノミー関連法令の開発

  • EUタクソノミーでカバーされていない経済活動を含める方向で検討することが適当ではないか。
  • EUタクソノミーに準拠しているか否かを不明確なワード、例えば、“near”や“neutral”などと表現しているケースがあるが、その意味を明確化した方が適当ではないか。
  • EU域外の有価証券に投資している場合、EUタクソノミー上の取扱いをどうするのか、方針が必要ではないか。
  • 他国のタクソノミーとの調整表など、タクソノミーを開発している国との間でEUタクソノミーをどのように当てはめていくのか、検討が必要ではないか。

ご紹介:TCFD及びEUタクソノミーに関するKPMGジャパンのサービス等

KPMGジャパンでは、GSDアプローチによるTCFDアドバイザリーサービスを提供しています。
また、EUタクソノミーに関するご相談を受け付けています。
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※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。

執筆者

KPMGジャパン
コーポレートガバナンスCoE LEAD of TCFD group
テクニカルディレクター/公認会計士
加藤 俊治

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~

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