【第20回~TCFDを旅する~】英国がTCFD強制適用へ踏み出す

【第20回~TCFDを旅する~】英国がTCFD強制適用へ踏み出す

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~ 第20回:今回は、強制適用へ一歩踏み出した英国政府のコンサルテーションペーパーを概観します。

加藤 俊治

KPMG サステナブルバリュー・ジャパン/LEAD of TCFD/Taxonomy group

あずさ監査法人

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2020年8月26日に英国の労働年金省(Department for Work & Pensions)は、コンサルテーションペーパー“Taking action on climate risk : improving governance and reporting by occupational pension schemes”(以下、CP)を公表しました。

それは、英国の大手の職域年金等の受託者(trustee)に対して、TCFDに基づいた気候変動リスクの開示を求める内容となっています。

これは、2019年7月に英国政府が公表した「グリーンファイナンス戦略」において英国の全上場企業と大手アセットオーナーに対して、2022年までにTCFD最終提言に基づく気候変動リスクの開示を期待するとしていたことに沿った動きです。

KPMG Insight Vol.40 「TCFDを巡る英国の動向 ~英国のグリーンファイナンス戦略、金融規制当局の動向を鳥瞰する~」ご参照 。

CPは、職域年金等の受託者にTCFD最終提言が求める4分野(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に関する活動(activities)を要求(regulations should require trustees to undertake the following activities)し、その活動に基づいた開示(disclosure)を要求(regulations should require trustees to make the following disclosures)するという構成になっています。

一つ特徴を挙げるとすれば、TCFD最終提言では戦略の中の一項目となっているシナリオ分析に基づくレジリエンスを独立させていることです。

従って、以下ではTCFDの4分野にシナリオ分析を加えた5分野に係る活動と開示の要求内容の概要を記載します。

ガバナンス

  活動 開示 概要
G1
- 気候関連リスクとビジネス機会を継続的に監視する。
G2 - 年金管理者が気候関連リスクとビジネス機会を評価し、管理する。
G1.1 - 受託者による気候関連リスクとビジネス機会の監視状況を開示する。
G2.2 - 気候関連リスクとビジネス機会を評価し、管理する際の各管理者の役割を開示する。

戦略

  活動 開示 概要
S1
- 投資(確定給付年金の場合には、短中長期の資金調達戦略も含む)に影響するような気候関連リスクとビジネス機会を識別する。
S2 - 識別した気候関連リスクとビジネス機会が投資(確定給付年金の場合には資金調達戦略も含む)に与える影響を評価する。
S1.1 - G1、G2の責任を負う者が識別した短中長期の気候関連リスクとビジネス機会を開示する。
S2.2 - 気候関連リスクとビジネス機会が投資(確定給付年金の場合には資金調達戦略も含む)に与える影響を開示する。

シナリオ分析

  活動 開示 概要
S3
- 少なくとも年1回以上、受託機関が可能な範囲で、年金の保有する資産、負債、投資戦略(確定給付年金の場合には資金調達戦略も含む)のレジリエンス(強靭性)を評価する。その際には、少なくとも二つの気候関連シナリオを利用する。そのうち少なくとも一つは、産業革命前と比較してグローバルな平均気温の上昇が1.5度から2.0度となるシナリオでなくてはならない。
S3.1
- 投資戦略(確定給付年金の場合には資金調達戦略も含む)の強靭性を受託機関が可能な範囲で開示する。その際には、少なくとも二つの気候関連シナリオを利用する。そのうち少なくとも一つは、産業革命前と比較してグローバルな平均気温の上昇が1.5度から2.0度となるシナリオでなくてはならない。

リスク管理

  活動 開示 概要
R1
- 受託機関は、気候関連リスクを識別し評価するプロセスを継続的に採用しなくてはならない。
R2 - 受託機関は、気候関連リスクを管理するプロセスを継続的に採用しなくてはならない。
R3 - 受託機関は、気候関連リスクの全体的なリスクへの統合を確実に遂行しなくてはならない。
R1.1 - 受託機関が気候関連リスクを識別し、評価するために構築したプロセスを開示する。
R2.2 - 受託機関が気候関連リスクを管理するために構築したプロセスを開示する。
R3.3 - 上記のプロセスが、どのように全体的なリスク管理に統合されているのかを開示する。

指標と目標

  活動 開示 概要
M1
- 少なくとも一つは温室効果ガス排出量の指標を選択し、少なくとも一つはその他に排出量に関連しない指標を選択することで、年金資産の気候関連リスクとビジネス機会を評価する。選択した指標は常に見直す。
少なくとも四半期ごとに上記二つの指標に関するデータを可能な範囲で入手する。
M2 - 少なくとも四半期ごとに温室効果ガス排出量の指標と排出量に関連しない指標を利用して、年金資産の気候関連リスクとビジネス機会に対する評価を行うために、温室効果ガス排出量等を計算する。
M3 - 少なくとも年次では、M2に整合するように気候関連リスクを管理するための一つ以上の目標を定める。それは、温室効果ガス排出関連でも非関連でもよい。
M4 - 少なくとも四半期ごとに、受託機関が可能な範囲で、目標に対する達成度を測定する。
M1.1 - 温室効果ガス排出量の指標と排出量に関連しない指標を開示する。
M2.2 - 指標に関連するデータの入手が一部に止まっていたり、見積データである場合には、その理由を開示する。
M3.3 - M3における目標を開示する。
M4.4 - M4における達成度を開示する。

ご紹介:TCFD及びEUタクソノミーに関するKPMGジャパンのサービス等

KPMGジャパンでは、GSDアプローチによるTCFDアドバイザリーサービスを提供しています。
また、EUタクソノミーに関するご相談を受け付けています。
詳細は、ページ内の「お問合せフォーム」もしくは「ご依頼・ご相談 RFP(提案書依頼)」からお問い合わせください。
 

※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。

執筆者

KPMGジャパン
コーポレートガバナンスCoE LEAD of TCFD group
テクニカルディレクター/公認会計士
加藤 俊治

TCFDを旅する ~サステナビリティを目指して~

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