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プラットフォーム開発に学ぶ「妄想から始める」という思考法

プラットフォーム開発に学ぶ「妄想から始める」という思考法

過去20年ほどの間に、プロダクトやサービスのつくり方が大きく変容し、最近では頻繁に「プラットフォーム」という言葉を耳にするようになりました。これは、多様かつ変化していくニーズに対応するプロダクトやサービスをつくるためには、プラットフォームを定義し、実装することが重要視されるようになってきたためです。

茶谷 公之

代表取締役社長 兼CEO

KPMG Ignition Tokyo

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すでにGAFAなどのデジタルカンパニーは、このプラットフォームを最大限に活用して、その存在感をますます高めています。もちろん言うまでもなく、プラットフォームはこの4社しか持てないわけではなく、自動車産業のような多くのコンポーネントの集合体のハードウェアにおいても存在しますし、私が所属していたビデオゲーム産業のゲームコンソールやネットワーク配信サービスの構築にも存在しています。

プラットフォームの原型は「百貨店」や「市場」であるとも言えます。つまり、プラットフォームは、以前から存在し、時代とともにあり方が変容しているものなのです。

また、プラットフォームは、企業の内在的な問題解決においても注目されています。2019年に経済産業省が発表した「DXレポート」のなかで、「2025年の崖」が指摘されました。これは、企業のITシステムの老朽化、肥大化、複雑化、ブラックボックス化などの問題が、経営や事業戦略上の足かせとなっているという事象を指しています。

このレポートでは、2025年までに技術的な競争力を企業が備えることができなかった場合、爆発的に増加するデータを活用できず、デジタル競争において敗者となる恐れがあると指摘しています。そして、その対策の一手として「共通プラットフォームの導入」を挙げています。

このように、プラットフォームは、ビジネスモデルとしてのみならず、企業のシステムにおいても注目されており、現代のビジネスにおけるキーワードになっているのは周知の通りです。

これまでの組み立て方とは逆のアプローチで

プラットフォームの存在によって、世界中にプロダクトやサービスを迅速に提供しやすくなることは自明のことで、これを構築するためには、単一のプロダクトやサービスを検討し設計するのとは異なるアプローチが必要です。プロダクト設計的あるいはサービス設計的なアプローチを取るとうまく行きません。

なぜうまく行かないのかと言うと、プロダクトやサービスを検討する時に、どのような使われ方をするか(ユースケース)の分析から入ることが多いからです。

例えば、ゲーム機を開発する時に、レーシングゲームだけを念頭において設計するとします。そのゲーム機がレーシングゲーム専用であれば、コントローラーは「ハンドル」が最適解となるでしょう。

しかし、それでは、壮大な物語を描くロールプレイングゲームや、瞬間的な入力操作を要求される手に汗握るアクションゲームなどの多彩なゲームを遊ぶのには最適でなくなってしまうことは容易に想像がつくと思います。

これは極端な例ですが、つまりプラットフォームの構築は、こうした単一のプロダクトやサービスに限った使い方を分析するのとは全く違う観点で進める必要があるということです。

プラットフォーム開発は「妄想」から始める

私の経験上、プラットフォームの開発は、「抽象化」から始めるべきだと考えています。ここでの抽象化とは、先を見通して「妄想」することです。妄想と言うとネガティブな印象があるかもしれませんが、私は意識的に妄想することによって、一般的な見通しを超えた将来像が模索できると考えています。

新しいゲーム機を開発しようとした時、まず私は、これからどういったコンテンツが誕生してくるのか、それが登場する時の技術レベルや通信インフラ普及はどうなっているかなど、幅広い「妄想」をします。

数年先の見通しになるので、当然、ぼんやりしたイメージになることもありますが、できる限り妄想してリアルな仮説を立てることが重要です。その際、単にコンテンツ、つまりゲームソフトウェアの中身だけではなく、そのビジネスモデルや提供方法についても妄想することが重要になります。

提供方法というのは、DVDやブルーレイディスクのようなパッケージメディアなのか、オンラインダウンロードなのか、あるいはストリーミング型で提供されるのかということです。また、課金の方法についても、無料でもある程度遊べて、必要に応じて有料アイテムを購入するフリーツープレイ型なのか、それとも定額を払えば遊び放題の月額課金型なのか、または全く新しい形態にするのかなど、そういったコンテンツを取り巻くさまざまな要素についても妄想することが肝要です。

プラットフォームを定義することは、できる限り多くのアプリケーションの使用を可能にし、プラットフォームが提供する機能や性能がアプリケーションの要求を十分に保証するものでなくてはいけません。その実現までに、非常に抽象度の高い妄想力が求められる作業です。

あらゆる可能性を妄想し、いったん抽象化することによって、将来開発される可能性のあるアプリケーションが見えてきます。すると、それを搭載できるプラットフォームにはどんな機能が必要なのかが見えてくるわけです。抽象的要素を加味したプラットフォームの原型が構想できれば、次はユーザーに期待される多様なユースケースを分析。それを満たす機能や性能を持っているかを検証することになります。

つまり、プラットフォームの構想において、「抽象化」から「具体化」へ移行していくということ。一般には、現存するアプリケーションをカバーし、将来のアプリケーションにまで対応できる進化型プラットフォームが求められますので、「具体化」のプロセスでは、プロダクトやサービスの将来像を含めた検討が必要となるため、想像力を要するというわけです。

このように、プラットフォームを定義する作業は、「抽象化」と「具体化」の間を行ったり来たりして修錬していくものなのです。プラットフォームに搭載するアプリケーションへの広く深い理解と、妄想力が不可欠です。

実際には、プラットフォームを構築する機会を得ることはそれほど多くないかもしれません。しかし、プラットフォームを構築する際に必要な抽象化と具体化、そしてそれらを往復しながら修練していく作業は、さまざまなビジネスにおいて力になるものだと思います。この妄想から始まる思考法は、一般的な見通しを超えた将来像を模索して、世界に向けて新たな価値を提供していくためのアプローチとして活用できるものであり、企業の内在的な問題解決に対しても効果を発揮できるものだと確信しています。

みなさんが、プラットフォームを構築するプロセスを通じて「妄想」し、その「妄想」が具体化され、世界市場においても評価されるビジネスとなればよいと願っています。

※この記事は、「2020年9月7日掲載 Forbes JAPAN Online」に掲載されたものです。この記事の掲載については、Forbes Japanの許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMG Ignition Tokyo
代表取締役社長 兼 CEO
茶谷 公之 

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