循環型社会へ向けた製造業の動き

製造業が成長するための、自社製品のIoT化とサービスを組み合わせたハイブリッド型ビジネスモデルの実装と、循環型社会について解説する。

製造業が成長するための、自社製品のIoT化とサービスを組み合わせたハイブリッド型ビジネスモデルの実装と、循環型社会について解説する。

日本の製造業において最大の脅威は、中国である。中国の産業戦略「中国製造2025」では、日本の製造業をフルスコープしつつ、世界でのデジタル基盤の覇権争いに臨んでいる。中国製造2025には、10大重点産業に「航空・宇宙装備」が入っている。23分野には「航空機」「航空エンジン」「航空機械設備・システム」「宇宙関連設備(運搬ロケット、衛星など)」が含まれる。「一帯一路」戦略が有名であるが、今や中国は「一帯一路一空一天」戦略なのだ。
この10産業、23分野をけん引するのは政府主導の5大プロジェクトである。日本の製造業が同じプロジェクトを推進したとしても何の違和感もないほど類似している。しかしそのスピード感は違う。最新の設備投資は政府が支援しており、とても日本の製造業はかなわない。
日本の製造業が成長するには、IoT(モノのインターネット)化された製品とサービスを組み合わせたハイブリッド型ビジネスモデルを実装するべきだ。循環型社会への適用も必要となる。

すでに、その動きは始まっている。ある自動車メーカーではバリューチェーン全体における二酸化炭素(CO2)排出量のうち、自動車を利用する顧客が80%、自社が5%、サプライヤーが15%を占める。顧客への自動車の提供では、電気自動車、水素自動車、ハイブリッド車などへの移行を進めている。
さらに解体しやすい設計の導入や他社との海外共同輸送などを実施している。食品業界では食品廃棄ロスを削減する試みとして、店舗に陳列した食品を捨てずに活かすサービスが始まった。月額1,980円で毎日弁当が届くサービスや、余った食材で特別メニューが食べられる同2,980円のサービスなどだ。
日本政府は国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進しており、数多くの日本企業が賛同している。日本の製造業も循環型社会に適用した再生可能製品やサービスを提供することで成長へのピースを埋められる。

これらの蓋然(がいぜん)性を証明するためには、トレーサビリティーの仕組みをプラットフォーム(基盤)上に構築することが必要となる。このトレーサビリティーの仕組みはブロックチェーン(分散型台帳)や人工知能(AI)を用いたアプリケーション(応用ソフト)がSaaS(サービスとしてのソフトウエア)として提供されるだろう。
この仕組みを世界市場に展開できれば、日本の製造業は、世界のトップに返り咲ける。このサービスインフラは、鉄道や電力、水道などの社会インフラと同様に、産業界の社会インフラとして輸出することもできる。

 

日刊工業新聞 2020年6月25日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

製造業のDX ハイブリッド社会に向けて

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