PSSの実現に向けた3つの手法とは

「製造業のDX ハイブリッド社会に向けて」第5回 - 製造業のIoT推進、サービスの短サイクル化など、持続可能な社会を目的としたPSSの実現に向けた3つの手法について解説する。

製造業のIoT推進、サービスの短サイクル化など、持続可能な社会を目的としたPSSの実現に向けた3つの手法について解説する。

日本の製造業は「変種変量」型および「新サービス」型を組み合わせて、ハイブリッド型社会に適用するように事業ポートフォリオを変えていくと予想する。このハイブリッド型ビジネスモデルは、PSS(プロダクト&サービスシステム)と定義されている。

PSSはまず、自社製品をIoT(モノのインターネット)化することから始める。自社製品がIoT化されれば、今までまったくわからなかった顧客の利用状況が即時に把握できる。元々ある顧客とのタッチポイント(接点)と合わせ、利用に関わる行動を全方位に分析し、新たな製品バリエーションやサービスを短サイクルで実現し続ける。これが「価値循環型のエコシステム」である。
ハイブリッド型モデルの価値循環エコシステム実現に向けて以下の3点を挙げる。

1つ目は、変種変量品を最短納期で実現する製品開発力だ。それには現在の流用設計からモジュラー設計へと変更し、製品群全体に適用されるアーキテクチャー(設計概念)が必要となる。生産効率の観点より、単一機能に分解されたモジュールを複数組み合わせてプラットフォーム(基盤)とする場合もある。この基盤は、設計部品表に登録される。営業部門や顧客が、製品構成を作成するツール(コンフィグレータ)を利用し、最終仕様を作り上げる。
仮に営業部門や最終顧客のニーズを充足できない場合は、足りない機能だけを差分設計し、単一機能型モジュールとして部品表に登録すれば、製品バリエーションを短期間で増やせる。先行技術開発も、アーキテクチャーおよび、モジュール構成を前提にインターフェース設計する。

2つ目は、新サービスの開発は特定顧客の特定ニーズから始めることだ。サービス開始スピードを重要視し、機能型組織ではなく協働型ワンチームで運用する。加えて、社内KPI(重要業績評価指標)ではなく、サービスの評価結果や利用状況などの社外KPIを重視する。これまで重視してきたイベントドリブンからデータドリブンへと作業サイクルを変化させる。

3つ目は「変種変量」と「新サービス開発」の手法だ。ビジネス用の基盤を構築し、デジタル人材を確保・教育する。アプリケーション(応用ソフト)の自社開発は避け、クラウドで展開されるサービスの利用が有効だ。

 

日刊工業新聞 2020年6月24日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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