欧州の銀行とCOVID-19 - 2020年上半期報告書への影響

欧州の銀行とCOVID-19 - 2020年上半期報告書への影響

COVID-19の感染拡大が欧州の銀行の貸出金勘定に与えた影響について解説しています。

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これまで、欧州の大手銀行の一部(2020年第1四半期報告書)及びカナダの銀行5行(2020年4月30日付けの半期報告書)の開示から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が予想信用損失(ECL)に与えている影響について解説してきました。

今回は、同じ欧州の銀行の2020年6月30日付けの半期報告書における開示を検討します。開示の詳細さが異なるため、以下の分析それぞれに含まれる銀行の数は異なっています。

ECL費用及び税引前利益

最初に、銀行11行について、2020年上半期の損益計算書におけるECL費用の総額※1及び税引前利益を、2019年の同期と比較します。下のグラフは、各行のECL費用の増加率及び税引前利益の変動額を示しています。

※1これは銀行が保有する貸出金のECL費用ではなく、損益計算書におけるECL費用の総額です。

図1 ECL費用及び税引前利益の変化
図1 ECL費用及び税引前利益の変化

(和訳者注:注釈の翻訳)※銀行6は、2019年上半期に損失を、2020年上半期に利益を計上しました。そのため、税引前利益の変動のグラフからは除外されています。

すべての銀行においてECL費用の総額は大幅に増加していますが、増加率は、スペインの銀行の60%からスイスの銀行の1,536%までかなりのばらつきがあります。1,536%の増加は大幅ですが、このスイスの銀行の2019年上半期のECL費用はきわめて少額でした。
興味深いことに、ECL費用の増加率が最も大きかった銀行では税引前利益が増加している一方、ECL費用の増加率が最も小幅だった銀行2行は、税引前利益の減少が最大となっています。
対象とした銀行については、2020年第1四半期及び第2四半期のECL費用の、2019年同期比の平均増加率も算出しました※2。2020年第1四半期のECL費用は、2019年第1四半期に比べて平均で6倍超に増加しています。2020年第2四半期のECL費用は、2019年第2四半期に比べて平均で4倍超に増加しています。

※2第1四半期(及び第2四半期それぞれ)の平均増加率は、対象とした銀行の増加率を合計し、それを対象とした銀行数で割ることによって計算しています。

損失引当率

下のグラフは、欧州の銀行8行の、償却原価で測定される貸出金に対する損失引当金の比率※3を、2019年12月31日、2020年3月31日及び2020年6月30日について示しています。

※3損失引当率とは、償却原価で測定した貸出金の総額での帳簿価額の期末残高に対する、損失引当金の期末残高の比率をいいます。

図2 欧州の銀行8行の損失引当率
図2 欧州の銀行8行の損失引当率

銀行は、2020年の第1四半期及び第2四半期を通じて損失引当金の積み増しを続けてきました。償却原価で測定される貸出金に対する損失引当金の比率の平均※4は、2019年12月31日の1.28%から、2020年3月31日では1.43%へ、そして2020年6月30日では1.55%へと増加しています。

英国の銀行2行は、リテール貸出金とホールセール貸出金それぞれの損失引当金についても開示しています。当該2行の各セクターの損失引当率は、以下のとおりとなっています。

※4損失引当率の平均は、対象とした銀行すべての損失引当率を合計し、それを銀行数で割ることによって計算しています。これは、銀行の貸出金ポートフォリオ及び損失引当金の規模がそれぞれ異なることを考慮していない(すなわち、すべての銀行が均等に加重平均されている)ことを意味します。

図3 リテール及びホールセールの損失引当率
図3 リテール及びホールセールの損失引当率

リテール貸出金の損失引当率は各四半期ごとに徐々に増加し続けていますが、ホールセール貸出金の損失引当率は、第1四半期に比べて第2四半期において急増しています。

貸出金のステージ分類

以前の記事では、貸出金の分析をステージ別に開示している欧州の銀行7行について考察しました。下のグラフは、貸付金全体におけるステージ2及びステージ3の金額の割合が、2020年第2四半期において総じて増加し続けたことを示しています。

図4 ステージ2の貸出金の割合
図4 ステージ2の貸出金の割合
図5 ステージ3の貸出金の割合
図5 ステージ3の貸出金の割合

2つの銀行は、第2四半期末におけるステージ2の貸出金の割合が前四半期末対比で著しく増加しました。これらはいずれも、ホールセール市場における伸びによって生じています。他の銀行では、ステージ2の貸出金の割合は、緩やかな増加かまたは微増となりました。7行におけるステージ2の貸出金の割合の平均※5は、2019年12月31日の6.77%から、2020年3月31日では8.28%へ、2020年6月30日では11.31%へと増加しました。しかし、ステージ3の貸出金の割合は、2020年第1四半期と同様に、おおむね安定的に推移しました。

※5 ステージ2に分類された貸出金の割合の平均は、ステージ2の割合を合計し、それを対象とした銀行数で割ることによって計算しています。これは、銀行の貸出金ポートフォリオの規模がそれぞれ異なることを考慮していない(すなわち、すべての銀行が均等に加重平均されている)ことを意味します。

将来予測的な情報

過去の記事では、ECLの測定にあたり将来の経済シナリオにCOVID-19が与える影響を評価するという課題に銀行がどのように取り組んでいるかについて考察してきました。では、2020年6月30日時点で追加して留意すべきことはあるでしょうか?

欧州の銀行11行の2020年6月30日付けの半期報告書を見ると、どの銀行もマクロ経済シナリオのパラメーターをアップデートし、かつすべての銀行が、2020年6月30日、2020年3月31日及び2019年12月31日において同数の経済シナリオを使用していることがわかります。ただし、1行は、2020年6月30日時点でアップサイド・シナリオの確率を0%とし、実質的にシナリオの数を2つに減らしています。

7行は、ベースライン・シナリオ、アップサイド・シナリオ及びダウンサイド・シナリオの確率を開示しています。11行の大多数は、COVID-19が経済に与える影響に応じてそれぞれの確率を変更していますが、変更の方向性にはばらつきがあります。すなわち、悲観的なシナリオの比重をより高くした銀行もあれば、一方でより低くした銀行もあります。

図6 経済シナリオの確率(2019年12月31日vs 2020年6月30日)
図6 経済シナリオの確率(2019年12月31日vs 2020年6月30日)

興味深いことに、2行は、2020年6月30日時点のアップサイド・シナリオの確率を、2019年12月31日と比較して高くしています。

11行すべては、一般的に、貸出業務を行っているマーケットに関連するマクロ経済シナリオへの主要なインプットを開示しています。ただし、銀行は多種多様なマーケットで業務を行っているため、これら銀行のインプットを比較することはできません。

比較ができるマーケットとしては、分析対象とした銀行のうち5行がデータを開示している米国が挙げられます。ベースライン・シナリオは、2020年の米国の平均失業率を7.8%から10.6%と想定しています。2020年の米国のGDP成長率について、ベースライン・シナリオは-4.2%から-6.6%と想定しています。※62021年について、これらの銀行のベースライン・シナリオは、米国の平均失業率を5.0%から7.6%と想定しています。2021年の米国のGDP成長率について、ベースライン・シナリオは3.6%から6.1%と想定しています。

一部の銀行は、2020年と2021年の経済予測について、前回2020年3月の四半期報告書よりも、若干悲観的になっているようです。

11行のうち大多数は、COVID-19の感染拡大が経済に与える影響、政府の支援策及び低調な原油価格に対応するため、ECLモデルで算定した金額に加えて追加引当(management overlay)を適用した旨を開示しています。2020年6月30日時点のECL残高の総額に対するこれら追加引当の割合は(開示されている銀行については)2%から13%ですが、これは以前の記事における範囲と整合しています。

※6銀行が2020年の米国のGDP成長率を、詳細を記載せずに開示している場合は、2020年1月1日から2020年12月31日までの成長率を意味すると想定しています。

次のステップ

この解説は、前例のない状況において、銀行がどのようなアプローチでECLの見積りを行っているのかに関する新しい情報を共有することを目的としています。今後、より多くの情報及びデータが入手可能となるため、引き続き大手銀行の報告書を注視していきます。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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