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経理財務業務の新常態~財務データ分析プラットフォームFDAを利用したトランスフォーメーション~

経理財務業務の新常態~財務データ分析プラットフォームFDAを利用したトランスフォーメーション~

本稿は、日本企業のために独自開発した財務データ分析業務のプラットフォーム「Financial Data Analytics」と今回リリースした3つのツールについて解説します。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、企業にテレワーク環境への対応を迫り、従来抱えていた経理財務業務の課題(紙ベース、属人化等)を浮き彫りにしました。今後もWithコロナの状況は避けられないことが見込まれるため、業務のデジタル化・標準化を進めることが多くの企業にとって喫緊の課題となりますが、KPMGは、単に業務の提供価値を現状に据え置いたままデジタル化するのではなく、経理財務業務が抱える最大の課題である「高付加価値化へのシフト」を進める好機と捉えて、Withコロナ時代のNew Realityに向けた取組みを行うことが必要と考えます。経理財務業務で価値を創出するためには、企業活動に係るデータ(財務データ)を集計・報告するにとどまらず、それらを分析し、経営層に対して各種のインサイト(洞察や提言)を提供することが必要です。属人的な判断や直感によるものではない、データより導き出された客観的な判断や深度あるデータ分析から生まれるインサイトが企業活動の変革や改善に活かされるよう、経理財務業務の高度化が必要です。
本稿は、あずさ監査法人が、日本企業のために独自開発した財務データ分析業務のプラットフォーム「Financial Data Analytics(以下「FDA」という)」と今回リリースした3つのツール(子会社分析、仕訳分析、経費分析)について解説します。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 新型コロナウイルスへの対応は今後も続くことが見込まれる。経理財務業務のテレワーク化の障害となった紙ベースの業務・属人化は、経理財務業務の本質的な課題解消として取り組む必要がある。
  • 既存の業務を単にデジタル化するだけでは低付加価値な業務が温存される恐れがある。
  • これを機に経理財務業務の高度化に向けた改革に取り組むことが肝要である。
  • 経理財務業務の価値は、データ分析から得られる客観判断やインサイトの経営への提供によって創出される。
  • データ分析により経理財務業務の高度化に取り組む企業に向けて、あずさ監査法人が、日本企業のために独自開発したFDAとリリースした3つのツール(子会社分析、仕訳分析、経費分析)を解説する。

I. コロナ対応で見えてきた経理財務業務の課題と改革

1. コロナ対応で見えてきた本質的な課題への対応の必要性

新型コロナウイルス、その収束が見えないなかで、引き続きビジネスや働き方へ影響を与えています。4月の緊急事態宣言から本格化した企業のコロナ禍は、経理財務業務にも対応を迫り、そのなかで従来から抱える課題をも浮き彫りとしました。振り返ると、経理財務業務の主な課題は、テレワークで決算業務に対応する等現場オペレーションの課題、出勤率の調整等の人事・労務上の課題、不確実性が増し情報が不足するなかでの見積り等の経営判断上の課題、事業継続のための資金繰りの確保など財務上の課題、リモート環境下での外部監査対応等コンプライアンス上の課題など、多方面にわたっていたのではないでしょうか。コロナ対応で顕在化した最大かつ本質的な課題は、経理財務業務において、長年見直されてこなかった紙を前提とした業務(紙資料での確認や押印等)により、デジタル化やデータ活用が遅れ、一部の業務が属人化し、手作業等による非効率な状態にあることを認識しつつも本腰を入れて改革に取り組まなかったことにあるのではないかと考えます。また、このことは、テレワークが進まない主な原因にもなっていると考えられます。多くの企業は、新型コロナウイルス感染症で直面した困難を乗り越え、既に今後の変化に向けた行動を起こしていると思われます。経理・決算業務を聖域とはせず、本質的な課題へ対応することは急務と考えます。

2. 経理財務業務の改革で考慮すべき視点

多くの企業にとっては、紙を前提とした業務、たとえば、伝票への押印や紙の資料を見ながらチェックする業務などの存在がテレワーク化の障害となっているため、これらの業務をデジタル化し、紙なしで業務が完結できるようにすることが喫緊の課題であり、実際に取組みを進めている企業も増加していると思われます。一方で、現行の業務を単にデジタル化するだけでは、業務そのものの提供価値は変わりません。たとえば、従来形式的に行われていた押印を電子承認に変えるようなケースを想像してみてください。テレワークの実現だけを目的として、業務のデジタル化を進めるのではなく、紙ベースの業務は効率が低いだけでなく、付加価値が低い業務が集中している実態も直視して、経理財務業務を効率化・高度化させることも目的に加えて、業務を棚卸し、各業務のそもそもの必要性や提供価値を点検したうえで、デジタル化などの実施方法の見直しを進めることが重要です。
また、いわゆるWithコロナでテレワークが常態化することに対応して、業務のデジタル化と合わせて、業務を標準化して属人化を排除すること、個別の業務に加えて業務の分担・進捗状況の全体も「見える化」することも重要となります。さらに、これらの取組みを親会社の経理財務部門だけではなく、グループ全体に広げることで大きな成果を上げることができます。これらの取組みに係るソリューションの1つとして、決算デジタルプラットフォームによるグループ会社の決算業務マネジメントが挙げられます。決算デジタルプラットフォームは、標準化された処理手続きやエビデンスを含めた成果物をシステムで管理することで、グループ会社の決算業務の進捗状況の見える化を実現し、加えて、担当者が適宜フォローを実施することで、リモート環境下であっても、品質を維持しながら決算業務を想定時間内に完了することを支援します。決算デジタルプラットフォームの詳細については、KPMG Insight Vol.43(2020年7月号)※1をご参照ください。
経理財務業務の高度化はさまざまな方法が考えられますが、1つの例として、財務データやその他の企業活動に係るデータを分析することにより導き出される客観的判断やインサイトを経営に提供することが考えられます。業務のデジタル化は、業務に利用する情報がデジタルデータ化されていることが前提となるため、データ分析に代表される、データを活用した業務の高度化を併せて進めることが有用です。本稿では、財務データ分析プラットフォームFDAをご紹介します。企業がデータ分析による業務の高度化を進めるために、FDAの財務データ分析ツールを利用することをお勧めします。

 

※1 「With/Afterコロナを生き抜くためのCFOアジェンダとDigital Transformation - ニューノーマルに備える決算デジタルプラットフォーム - 」

II. データを活用した経理財務業務の高度化の必要性

KPMGジャパンが実施した「CFOサーベイ2019」では、経理人材に今後求められる能力として、全体の65%が「データ分析・解析能力」を挙げています。テクノロジーを活用して、より多くの財務情報をさまざまな視点・角度から分析・解析する能力を組織として備えること、能力を発揮するその仕組みを構築することが必要になると考えられます。
FDAは、初期導入コストなしの月額料金ですぐに利用が可能であり、多くの日本企業の経理財務部門にとって必要と考えられる財務データ分析の標準的な機能が備わっているため、データ分析を経理財務部門に定着させる変革の第一歩としてご利用いただくことに適しています。データ分析業務による業務の高度化を成功に導くためには、まずFDAの利用を通じて、基礎的なデータ分析業務やその価値を十分に理解し、その定着を図ったうえで、自社に必要なデータ分析の要件やデータ分析業務の運用体制の整備・拡充を図ることが重要です。

III. FDAの特徴と3つのツールの利用について

1. FDAの特徴

FDAは、SaaS(Software as a Service)型のオンライン上のデータ分析業務プラットフォームです。FDAには、あずさ監査法人が有する財務分析ノウハウをベースとして、多くの日本企業に共通の分析ニーズに対応するように、独自開発されたツールが実装されています。また、FDAは、自動で数値の分析とビジュアルの作成を実施するため、手作業でのレポーティング作業が大幅に削減することが可能となり、分析結果を踏まえた次のアクションの検討に時間を割くことができます。FDAの特徴については、図表1を参照ください。

図表1 FDAの特徴
FDAの特徴

現在、リリースしている3つの分析ツールは、財務、子会社の業績分析や不適切会計の検知などに有用な「子会社分析」、会計処理の誤りや異常な取引の検知・モニタリングに有用な「仕訳分析」、従業員立替経費の異常兆候の検知・モニタリングに有用な「経費分析」となります。上記の3つのツールは、財務データ分析により不適切会計の兆候を特定することができるため、コロナ影響による混乱やリモートワーク環境下で管理機能が低下している恐れのあるグループ会社に対し、親会社によるけん制機能を補完する手段としても利用が可能です。また、異常の兆候があった項目に対する調査結果等をコメント欄に残すことができますので、その知見、経験をデータとして蓄積することが可能です。
現状の財務分析の3つのツールは、主として、企業の経理財務部門での利用を想定していますが、グループ会社を管理する経営管理部門や親会社の経理部門を含むグループ会社を監査する立場にある内部監査部門、グループ会社全体のリスクマネジメントを担うリスク管理部門でのご利用も可能です。

2. 3つのツールについて

(1) 子会社分析ツールについて(年次、月次)
親会社経理財務部門等が子会社の財務数値を分析するためのツールです。子会社分析ツールは、グループ会社から提出される連結パッケージデータ(連結調整前)を分析対象とします。子会社分析ツールは、分析指標および閾値の組合せにより定義された分析シナリオに基づき異常値を検知し、検知結果をビジュアルに表示します。加えて、分析担当者は、ツールを利用することで、前期・前年同月比較のほか、長期トレンドやセグメント中央値比較といった視点での分析を行うことができます。異常検知された項目については、原因の調査が実施されることを想定し、調査方法や調査結果をコメントとして記載して記録する機能を実装しています。継続してツールを利用することにより、分析に係る知見・ノウハウが蓄積されるため、属人化の排除のほか、データ分析の効率化・高度化に繋がる効果が期待できます。また、ツールは、分析シナリオごとに検知された異常値に基づき、子会社のリスクがスコアリングされるため、内部監査部門等の監査計画策定やリスク評価の参考情報としても活用いただけます (ツール画面(例)は、図表2参照) 。

図表2 ツール画面(例)
ツール画面(例)

活用の例としては、子会社分析ツールでは、グループ会社の連結パッケージデータの財務指標数値を3年間経年比較するため、大局的な視点で、不適切会計に繋がる重要な会計不正や誤謬の兆候がないかを確認・検討することをサポートします。たとえば、ある子会社が属するセグメントは業績不調にもかかわらず、当該子会社だけは業績を維持しているようなケースでは、在庫回転期間の長期トレンドや子会社間比較などを併せて確認することで、在庫の過大計上(原価の過少計上)による粉飾の兆候の有無を検証することが可能です。また、異常項目の数に基づく子会社リスクスコアリング機能やスコアの推移を確認できる機能などが備わっています。これらの機能を使った分析と実態の調査・検証を繰り返すことで、真にリスクの高い子会社を検知して、根本原因の特定や改善に注力することが可能となります。またたとえば、同じ地域にある子会社間で生産性指標を比較して、生産性が悪い子会社を特定したうえで、当該子会社を対象とした詳細なデータ分析により原因を特定し、生産性向上に向けた指導や提言を行うことにも利用できます。

(2) 仕訳分析ツールについて
経理財務部門・内部監査部門等が、会計仕訳をモニタリングすることにより会計処理の誤りや異常な取引の兆候を検知するためのツールです。仕訳分析ツールは会計システムから出力される仕訳明細データが分析対象となります。分析担当者は、月次などのサイクルで、仕訳量の傾向や異常兆候、ルール逸脱について、大きな変動や調査を要する項目がないかを確認します。仕訳データ分析ツールで提供される分析シナリオは、特にエラーや不正が発生しやすいハンド仕訳・決算整理仕訳を対象にリスク仕訳を抽出します。仕訳分析ツールでは、抽出された仕訳がユーザによる内容の把握と絞り込みを効率的・効果的に行えるインターフェースを備えています。仕訳分析ツールは、絞り込みの過程を履歴として残す機能のほか、異常項目に対する調査結果をデータとして取り込む機能を実装しており、データ分析に係る知見・ノウハウの蓄積、メンバー間での共有に活用いただけます(ツール画面(例)は、図表2参照)。
活用の例としては、上述した子会社分析ツールで高リスクとしてスコアリングされた子会社を対象に仕訳分析ツールで詳細に分析をすることが考えられます。仕訳分析ツールは、対象子会社の仕訳明細データを対象にデータ分析することで、分析担当者が不適切会計に繋がるような異常の兆候を示す仕訳の選定と実態調査の準備をサポートします。また、異常な仕訳の実態・原因調査を通じて、子会社に対するけん制力を発揮し、不適切会計を予防する経理財務ガバナンスを向上させることも期待できます。また、仕訳分析ツールは、仕訳量やハンド仕訳の割合を確認することができるため、経理業務量に見合った人員が配置されているのか、ハンド仕訳を減らすような施策がとれているのか、リソース配置の見直しや業務効率化に向けたアクションの検討に繋げる目的にも利用できます。

(3) 経費分析ツールについて
経費分析ツールは、経理部門・内部監査部門等が、従業員立替経費明細データや勤怠データ等を使用して、従業員の立替経費をモニタリングするためのツールです。経費分析ツールは、従業員立替経費の取引全体から異常取引を自動検知し、分析結果を担当者が一目でわかるように可視化するもので、無駄な支出の兆候、申請・承認ルールからの逸脱の兆候、不正利用リスクシナリオに該当するデータを確認でき、経費の適正化などを目的としたモニタリングにご活用いただけます。分析担当者は、異常と判断した経費取引の原因・実態調査を行うことが想定されますので、調査対象取引の一覧出力機能のほか、調査結果を記録してツールに取り込む機能も備えており、継続利用によりデータ分析とモニタリングのノウハウの蓄積が図られます。モニタリングを通じた不正利用への抑止力の発揮などが典型的な利用方法として想定されます。また、経費データの詳細な分析を通じて、経費削減のアクションに繋げることも考えられます。

IV. 今後に向けて

あずさ監査法人は、アカウンティングアドバイザリーサービスとDigital Innovation部が連携し、日本企業の経理財務業務の高度化に活用いただけるような分析ツールの研究・開発を進めています。FDAでは、財務データ分析機能の拡充、追加の財務データ分析ツールのリリースを予定しています。本稿が、経理財務業務の変革の第一歩となれば幸いです。FDAや財務分析のツールのご利用申請やサービスの詳しい内容のお問合せは、フィナンシャルデータアナリティクスよりご連絡ください。

本サービスは、公認会計士法、独立性規則および利益相反等の観点から、提供できる企業や提供できる業務の範囲等に一定の制限がかかる場合があります。詳しくはあずさ監査法人までお問い合わせください。競合企業のご利用はご遠慮ください。また、弊法人の都合により、業務を提供できるお客様の範囲(個人のお客様を含む)や提供できる業務の範囲等に一定の制限がかかる場合があります。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
Digital Innovation部
ディレクター 高羽  満
シニアマネジャー 畠山 卓哉
アカウンティングアドバイザリーサービス
シニアマネジャー 三浦 一成

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