新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の自動車小売業界への影響
COVID-19がもたらしている日本の自動車小売業界における影響と今後の見通し、また自動車小売業界の重要なアクションについて考察します。(2020年6月調査)
COVID-19がもたらしている日本の自動車小売業界における影響と今後の見通しについて考察します。(2020年6月調査)
Article Posted date
03 September 2020
1.危機前のトレンド
中古車販売台数の増加
2018年の中古車販売台数は580万台(新車販売台数は440万台)、消費増税の販売台数への影響
販売店の統合
(自動車メーカーを中心に、どの販売店においても全モデルが購入可能)
モビリティのトレンド
カーシェア及びハイブリッド電気自動車の増加、コネクテッドカー及び自動運転車の開発に係る課題
2.COVID-19の影響
外出自粛のガイドラインの販売台数に対する影響
2020年5月における年初来の販売台数は、2019年と比較して18.6%減少
販売業者が抱える流動性に関する課題
日本自動車販売協会連合会の政府に対する助成金と支援に関する働きかけ
危機後の景気後退
自動車販売台数は2020年に5%減少と予測、2021年には回復の見込み
消費者の新たな習慣
リモートワーク、オンライン販売、個人消費及び消費者マインドの低下
3.代替的な収益源
販売業者の見通し
- 景気後退により、販売業者が抱える収益性及び在庫管理の課題が引き続き継続
- 助成金と支援への依存が一定期間にわたり継続すると予想
- 販売店の統合が継続すると予想
- 新車販売台数の減少を背景とした中古車販売への注力の強化
- カーシェアリング及びオートリースへの注力
- 実店舗の営業時間の短縮、オンラインプレゼンスへの注力の強化
4.自家用車以外のモビリティへの注目
消費者の見通し
- 金融不安が新車/中古車投資へ影響を与える可能性
- 若年層における自家用車の保有に対する需要が減少し続ける見込み
- ただし、感染への恐怖から移動手段として個人車両の利用が増加する可能性があり、カーシェアリング、オートリース、購入契約に基づく販売への需要が増加すると予想
- オンラインでの自動車検索や購買の仕組み・プラットフォームに対する注目の増加
- オートバイや自転車に対する人気の復権
5.ロックダウン後の混乱及び影響の継続
新車
- 購入の延期及び消費者の需要の変化による販売台数の継続的な減少
- 政府の支援によりコンパクトBEV(バッテリー電気自動車)及びPHEV(プラグインハイブリッドカー)の販売台数が増加する可能性
- 販売台数の減少による在庫維持費の増加
- データシェアリングのモジュールが備わった新車の導入による、顧客との交流の発展
中古車
- 需要が減少する一方、新車の需要との比較においてより優れたレジリエンスを発揮
- 高い在庫水準を背景とした供給の増加による価格の低下
- 中古車市場に参入する販売業者の増加による、競争の激化
自動車販売金融
- 債務不履行率の上昇による自動車ローンの適格基準の更なる厳格化
- 利率引き下げの発表による自動車販売台数の増加の可能性、及びそれに伴う収益の減少
アフターマーケット
- 購入の延期による所有車の長期利用及び需要の増加
- 自動車販売台数の減少を背景に販売業者がアフターマーケットのサービスへ投資する可能性
6.プレイヤーにとって重要なアクション
企業のレジリエンスの構築
1.財務上のレジリエンス: 資産ポートフォリオ全体の評価、及び在庫管理費の削減への注力
- 高い流動性を実現するための流動性ポジションの分析及びアグレッシブな価格設定、短期の運転資金の準備
- 政府及びOEMの支援策の識別
2.経営上のレジリエンス:重要な経営上のリスクの識別及び解決(例:サプライチェーン、従業員の健康)
- 通常通りに近い経営を安全に再開するための戦略の策定
- 消費者マインドの向上に向けて消費者との繋がりを保つための独自の方法の策定
将来の強みの構築
3.将来への備えに注力
- 将来の混乱に対処するための緊急用の手元資金の確保
- デジタルな顧客エクスペリエンスの推進、消費者の将来の行動を考慮したうえでのショールームの規模及びネットワークの最適化
4.賢明な投資への注力
- 消費者の需要及び在庫の適切な分析
- 市場で創出される新たな機会の識別及び投資(例:オートリース、サブスクによる契約)
- 自動車販売台数の減少に伴うアフターマーケットサービスへの投資、付加価値サービスの提供(例:より詳細な点検)