COVID-19:財務デューデリジェンスに関する検討事項

COVID-19:財務デューデリジェンスに関する検討事項

業績見通しへの関心が高まるなか、COVID-19の影響を調整した調整後EBITDAを作成する価値はあるか。本稿は、KPMG 英国で発行された「 COVID-19: Considerations for financial due diligence」の日本語版です。

Ford Paul

KPMG FAS 執行役員パートナー トランザクションサービスリーダー、データアナリティクス・リーダー/KPMGジャパン プライベートエクイティセクター統括パートナー

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デューデリジェンスにおいて将来の業績見通しへの関心が高まるなか、KPMGは、COVID-19の影響を調整した調整後EBITDA(支払利息・税金・減価償却費控除前利益)の作成はほとんどのケースで限定的な価値しかないと考える。特に2021年度の業績予測はかつてないほど重要性を帯びてきており、KPMGは、デューデリジェンスでは回復状況及びキャッシュフロー予測にフォーカスすべきであると考える。

COVID-19の影響を調整した調整後EBITDA

COVID-19で影響を受けた事業について、COVID-19が発生しなかった前提で2020年度の調整後売上高及び利益を提示する価値はあまりないとKPMGは考える。かかる数値は幾分恣意的ともいえる。
対象事業のDCF(将来キャッシュフローを割引いた値)は、価値評価の基本的要素である。EBITDAは参考値である。しかし、大混乱時にこの参考値はあまり意味をなさない。
すべてのセクターが同じようにCOVID-19の影響を受けるわけではない。また、COVID-19は、よりデジタルなビジネスモデルへの転換を加速させた。これには多額の設備投資を必要としたかもしれないが、持続可能な効率性/ビジネスモデルによってCOVID-19終息後の利益改善・アップサイドもついてくる。

2020年進行期の分析

2020年度は、ほとんどのケースでベースラインのひずみが大きすぎて、調整を提案することができないであろう。パンデミックの継続期間と程度にもよるが、これは2021年度にも当てはまる可能性がある。
しかし、COVID-19によるビジネス各所への影響、取り得る方策、及び講じられた対応策を説明することが重要である。これにより、ビジネスモデルの相対的な復元力とマネジメントチームの質が明らかになる。

2021年度予測の分析

特に2021年度予算の達成可能性など、将来見通しへの関心が高まる中、デューデリジェンスでは以下が分析の中心となるであろう。
  • 複数ケース/感応度/ストレステスト・シナリオ分析/動的財務モデリング – 回復の可否も何もかもが不確かな環境におけるあらゆる「もしも」を想定する柔軟な前提インプット/シナリオ。リアルタイムの市場データ/情報の調査と分析。
  • 直近実績値を基にした2020年第4四半期のRun rate又は2021年第1四半期予測はどうか。また、2021年度の状況/回復の軌道及び根拠。
  • 顧客のパターンと構造的な変化を理解するため、頻繁に使用されている関連する主要なKPIを分析する。
  • 受注率/受注見込み/受注残を分析する。
  • 戦略上及び商業上鍵となる項目を含む市場トレンド/顧客需要。COVID-19がビジネスモデルに及ぼす長期的な影響。
  • 対象事業のデジタル対応力(デジタル化に対する準備状況)/成熟度はどうか。
  • バリュークリエーション(価値創出)のロードマップ/計画は明確か。
  • コストドライバーを詳細に理解する必要がある。コストの規模感は適切で、「将来に適合」しているか。対象事業がCOVID-19のコスト面での恩恵をどのように確保/維持しているか。

事業の収益性を分析する際の主な検討事項

  1. 「リアクション」フェーズ及び「レジリエンス」フェーズにどの程度EBITDAが減少するか。「リアクション」フェーズと「レジリエンス」フェーズはどのくらい続くか。
  2. 「リカバリー」フェーズにEBITDAがどの程度変化するか。「リカバリー」フェーズはどのくらい続くか。「リカバリー」フェーズの軌道はどのような形になるか。
  3. 「ニューリアリティ」フェーズでEBITDAがどこまで戻るか。
事業の収益性を分析する際の主な検討事項

実施すべき主な追加的デューデリジェンス

2021年度の予測EBITDAが利益分析のベースラインとなる場合、ディーディリジェンスの焦点は以下の事項となる。よりビジネス的側面に焦点を当てる必要がある。

1. 2020年度予算と2021年度へのブリッジ分析

  • COVID-19前の追加的なデータとして2020年度の当初予算を分析する。その際、過年度予算の長期的な正確性に焦点を当てる。
  • LTM(直近12ヵ月)及び2020年度予算のEBITDAから2021年度のEBITDA予測へのブリッジ分析を行う。主な収益及びコスト項目を分解する。
  • 2020年第2及び第3四半期に実施されるデューデリジェンスでは、2019年度以降のビジネスのトレンド、2020年度の見通しのほか、COVID-19の影響が一時的なものか、より永続的なものかを理解することが鍵となる。

2. 進行期の状況

  • 分析/レポートの発行日時点に至るまでの最新の週次財務情報など、進行期の状況、及びRun rate(2020年第4四半期、2021年第1四半期など)を分析する。
  • COVID-19後に初めて迎える期に売上やコストがどの程度戻っているか分析する。
  • コストベースにおけるCOVID-19の影響を理解することは、予測EBITDAを分析するうえで重要になる。モデルの作成に利用可能な損益計算書のコスト項目について調整後レベルはどのようなものか。

3. KPI、受注状況、及びリアルタイムの市場データ

  • 2021年度予測の合理性を評価するため、COVID-19前後の比較を含め、よく使用される主要なKPIを分析する。
  • 市場のトレンド、長期的な顧客需要及び構造的なビジネスモデルの変化の可能性などを分析する。戦略・コマーシャルデューデリジェンス的視点が鍵となる。
  • 直近の受注残/受注見込み(及び過去における売上への転換率)並びに現在の受注率を分析する。

4. その他の主な検討事項

  • 制限が(例えば2021年度まで)長期化することによってビジネスが影響を受ける可能性がある場合、「リカバリーへの道筋」を明確化する。
  • 政府の様々な支援制度による公的資金を利用した事業について、そのポジショニングを評価する。
  • 事業が受ける影響は様々であるため、分析はケースバイケースで行う必要がある。V字回復を見せる事業、長期的に若干の影響を受けながらも早期に回復する事業、又は安定的に予測通りに改善する事業には、収益性分析におけるプロフォーマ分析が適している場合もある。

ネット・デット及びキャッシュフローに関する検討事項

COVID-19に関連するデッド・ライク・アイテム又はキャッシュ・ライク・アイテムには、顧客/仕入先/従業員からのクレーム、訴訟、不利な契約(Onerous contract)、一時的な再始動コスト、COVID-19対策融資、遡及的な超過有給休暇、VAT/法人税の支払繰延べ、賃貸料の支払繰延べ、設備投資の繰延べ、賞与/報奨金の支払繰延べ、年金基金不足額・積立金保留、リース債務(条件変更した場合)等が含まれる。
現金を留保するために経営者が講じた緊急対策の影響を反映し、2020年度のキャッシュフローにはひずみが生じている可能性がある。
26週間の短期ローリングフォーキャストによるキャッシュフロー予測にフォーカスする。
キャッシュフロー予測には、各対策を解除したときの影響を考慮する必要がある。

運転資本に関する検討事項

調整後運転資本平均は、EBITDAのベースラインの算出に使用された期間と同じ期間に基づいて算出すべきである。したがって、ベンチマークとする調整後運転資本は直近12か月平均ではなく、収益が通常レベルとなる2021年度となる可能性がある。
予測調整後運転資本は、仕入債務回転期間(DPO)、売上債権回転期間(DSO)、及び棚卸資産回転期間(DIO)といった原則的な要素のほか、「ニューリアリティ」におけるその他の債権債務に係る運転資本から算出されることになるであろう(起こり得る景気後退局面で必要とされる在庫保有量や貸倒引当金の新しい通常レベルとは)。
予測調整後運転資本では、COVID-19前の基準に対して想定されたDSO/DPO/DIOを評価するだけでなく、サプライチェーン/顧客の変化の可能性も考慮することが鍵になる。また、期首の貸借対照表に何が残高として含まれているかと、債権・債務がどのように現金に変換される可能性があるかを把握することも重要になる(過年度の残高を精算するにあたり支払い期日延長の合意があるかなど)。

運転資本に関する検討事項

執筆者

KPMG FAS
パートナー ポール・フォード

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