成功しているD2Cブランドに共通する要素とは

「小売りの明日」第27回 - メーカーが消費者に直接販売するD2Cモデルが注目される中、オンラインと店舗の統合を図った米国人気ブランドの成功例を紹介する。

メーカーが消費者に直接販売するD2Cモデルが注目される中、オンラインと店舗の統合を図った米国人気ブランドの成功例を紹介する。

消費者の行動データを売る店舗を運営する米b8ta(ベータ)が日本に参入するとの発表があった(2020年2月執筆時点)。ニューヨークの店舗を見る中で、ベータに加えてもう1店舗注目したいのが大人気コスメブランドの「Glossier(グロッシアー)」だ。
グロッシアーは2014年に創業し、約95億円を資金調達したことでも話題となった、米国でミレニアル世代を中心に熱狂的な人気を得たコスメブランドだ。2017年に売上高は前年比3倍になったと言われている。創業以来オンライン販売専門のブランドだったが、2018年11月にニューヨークに旗艦店をオープンした。
メーカーが消費者に直接販売するD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルが日本でも注目される中、グロッシアーはD2CにOMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインが統合された世界)の概念である、オンラインと店舗の統合を図った好事例と言える。

D2Cモデルのメリットとして、顧客との直接の関係性作りやデータ活用、ブランド発信力の強化が挙げられる。店舗を出すことでこのD2Cモデルにどうプラスになるのか。実際に商品を見て試したいというニーズへの対応と店舗を起点とした新商品のテストマーケティングが可能になる。つまりOMOを実現できるのだ。
店舗を訪れると、商品の前でタブレットを持ったスタッフがその場で決済するので、レジはない。スタッフが新商品の紹介などをしている間に、受け渡す商品が出来上がっているという、とてもスムーズな流れができている。
ショッピングバッグには手書きで来店客の名前が書かれ、新商品のサンプルがもれなく入れられているなど、来店した女性を喜ばせる気遣いが店内にはいくつも散りばめられている。メーカーがオンライン専用の付加価値の高い商品を販売するとともに、店舗も出店し顧客との接点を強固にしていく。この流れは日本でも増えるだろう。

グロッシアーの取組みは、量販店や総合スーパー(GMS)などの各流通チャネルが飽和し苦戦する中で、メーカーが消費者と接点を持ち続ける手法の1つとして重要な選択肢になるだろう。デジタルを軸にしたビジネスモデルの構築ももちろん重要だが、根幹にあるのは、顧客が喜ぶ体験が備わっていることの重要性だろう。これらがマーケティングの普遍的な要素であることを忘れてはならない。グロッシアーは商品が優れている点も見逃せない。リップやマスカラが比較的安く、品質も高いうえに使い勝手がいいという。
従来にない斬新なアイデアを生み出していくことが必要とされる時代。企業にはチャレンジの姿勢が求められている。グロッシアーのように米国にはチャレンジする企業が多いようだった。

 

日経MJ 2020年2月24日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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