サブスクリプション型サービスは製造業にとって脅威となるか、好機となるか

「製造業のDX ハイブリッド社会に向けて」第2回 - 今後さらに成長が期待される「サブスクリプション(定額制)型サービス」に対し、日本の製造業は今後どうあるべきか解説する。

今後さらに成長が期待される「サブスクリプション(定額制)型サービス」に対し、日本の製造業は今後どうあるべきか解説する。

市場拡大が続く利用型サービス「サブスクリプション(定額制)型サービス」の基本戦略は、囲い込み戦略である。定額料金で1ヵ月間「映画やスポーツの試合が見放題」や「乗りたい車を一定条件の範囲で乗り換えられる」といった内容だ。

このような定額サービスを、米アップルが日本市場で展開するのではと言われている(2020年6月執筆時点)。スマートフォン「iPhone」、スマートウオッチ「アップルウオッチ」、タブレット端末「iPad」が対象で、月額利用契約を結んだ消費者に最新機種を常に提供する。
もし、世界の競合企業がこうした囲い込みサービスを始めれば、日本の製造業は長期的に市場を失いかねず、事業の継続性に大きな影響を与える可能性がある。B2B(企業間)では1社ずつ緩やかに市場を侵食していき、初期段階において、それに気付かない恐れもある。先行する米シスコシステムズや米PTCなどのグローバル企業は近年、利用型サービス販売が製品販売を上回るように売上目標を設定している。

利用型サービスは、ITシステムやサービスを動作するのに必要なプラットフォーム(基盤)を用いる。その基盤に不可欠なクラウド環境、第5世代通信(5G)など高速大容量通信、個人認証の信頼性といった新技術は、製造業の成長源であるハードウェアを中心とした技術革新より、はるかに速い速度で成長し続けているからだ。

日本の製造業は長きにわたり、製品中心の差異化で「ジャパンクオリティ」「ジャパンプレミアム」を実現してきた。この成功体験があり、ソフトウェア開発への戦略的投資が進んでいない。
内製化も進んでおらず、子会社に業務委託し、その子会社がさらに第三者の企業に業務委託しているため、絶えず変化する市場ニーズに迅速に対応できていない。こうしたことから、ハイブリッド(複合)型社会で新たなビジネス展開を実現するにあたり、ソフトウェア開発手法の変革や新たなデジタル技術者の確保、内製化は必要条件である。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日刊工業新聞 2020年6月19日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

製造業のDX ハイブリッド社会に向けて

お問合せ