製造業が取り得る3つの選択肢とは

利用と所有のバランスを重視するハイブリッド型社会へと大きく変化しつつある中で、製造業が取り得る3つの選択肢について解説する。

利用と所有のバランスを重視するハイブリッド型社会へと大きく変化しつつある中で、製造業が取り得る3つの選択肢について解説する。

利用社会は、その種類や規模を拡大させる一方、消費者は利用するものと所有するものを使い分けてライフスタイルを形成していく。そのようなハイブリッド型社会の中で、日本の製造業が取り得る選択肢は3つある。

1つ目は「さらなる付加価値化」型だ。顧客への付加価値は「品質プレミアム」。その企業なくして製品が成立しないという立場を維持し続けるモデルで既存改善型と分類できる。この実現に必要なのは、適切な先行投資力だ。世界のB2C(企業間)型グローバル企業だけでなく、予備軍企業とも新たな取引を始める必要がある。これは既存改善型の企業が得意とする研究開発効率を高める最も近道である。
2つ目は「変種変量」型で、顧客への付加価値は「製品バリエーション」。オンリーワン製品を提供して高くても売れるというビジネスモデルで既存変革型といえる。変種変量対応に求められるのは、最短リードタイムを実現する製品開発力である。

日本の製造業では流用設計が主流の企業も少なくない。また、ビジネスモデルもプッシュ型でかつ多品種少量生産である。変種変量型ではビジネスモデルはプル型となり、変種変量生産に変わる。いかに早く顧客のニーズを製品化し、届けるかの仕組みが重要だ。
オンリーワンで代表的な日本企業はキーエンスだ。ファブレス企業であり、製造部門をもつ日本の製造業と比較できないが、営業利益率が54.1%、売上総利益率は82.3%(2018年度)であり、学ぶべきことは多い。同社の特徴は他社に類似しないオンリーワン製品の提供であることを忘れてはならない。
最後は「新サービス開発」型。顧客への付加価値は「UX(ユーザーエクスペリエンス=利用者体験)の最大化」であり、デジタル的基盤の上で新たなサービスを提供する企業である。これは、新規創出型と分類できる。

製造業でサービスと聞けば保守サービスを連想しがちだが、この新サービス分野では新たなビジネスを前提としている。その場合、自社の製品やサービスだけでなく、顧客の利用環境全体のエコシステムをデザインする能力を有することが必要となる。また、主要な重要業績評価指標(KPI)は、現在のイベントドリブンから、月間アクティブユーザー(MAU)などのデータドリブンへと変化する。

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日刊工業新聞 2020年6月23日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

製造業のDX ハイブリッド社会に向けて

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