ESGの政治 - 政府はどこへ向かっているか

ESGの政治 - 政府はどこへ向かっているか

環境・社会・ガバナンス(ESG)の行動計画と政治の間には切り離せない関係があります。新型コロナウイルス感染症がESGを一時的に棚上げしたかもしれませんが、この状況が沈静化したとき、堅固なアプローチを開発したいと望むならば、金融サービス業界の企業幹部はESGをめぐる新たな政治的環境を理解する必要があります。

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新型コロナウイルスがESGの行動計画(および金融セクターへの影響)にかかわる政治的環境をどのように変えたかを理解するために、私たちはこの主題に関する2人のグローバル・ソートリーダーの話を聞きました。ケイ・スウィンバーンは、現在KPMG英国の金融サービス担当副会長であり、2009年から2019年にかけて欧州議会でウェールズ代表を務め、同期間に欧州議会経済金融委員会の副議長も務めました。ロヒテシュ・ダワンはユーラシア・グループのエネルギー、気候、資源担当のマネージングディレクターであり、グローバルな政治リスクのコンサルタンシーを行っています。国連気候変動枠組条約の元事務局長、イボ・デ・ボーアとともに働いた経験があります。

政治家はESG行動計画を推進する意志と意欲を持っていますか。

ロヒテシュ・ダワン:2020年は気候変動への取り組みが盛り上がることが期待されていました。過去数カ月に新エネルギーの経済性は急速に向上し、投資家は環境・社会・ガバナンス(ESG)のマンデートを積み上げ、グローバル企業が炭素排出に関して実質ゼロ目標の発表をしない日はないといった状況でした。グレタ・トゥーンベリのような市民社会活動家への社会的関心が高まり、各国政府は11月にパリ以来最大の気候政策会議、COP26をグラスゴーで開催する準備を整えていました。

そこに新型コロナウイルス感染症の危機が訪れました。世界経済の急激な減速、原油価格戦争、万が一に備えた自粛がこれらの傾向のいずれにも影響を及ぼします。気候変動の問題は2020年には棚上げされることになるでしょう。従って、気候変動対策の道筋は再調整する必要があります。

ケイ・スウィンバーン:私もロヒテシュと同意見です。現在は政府および市民が、新型コロナウイルス感染症が健康、経済、社会にもたらす影響への対処にもっぱら集中しています。私はいろいろな意味で、この悲劇的経験がESG投資に対する重点的な取組みを拡大する必要性を強めることになるのではないかと考えています。政府はすでに、どうすれば経済を再建できるかを考え始めており、多くの人々がより公平でサステナブルな、環境に配慮した方法でそれを達成することを望んでいます。

私はEUが引き続きESGに関するリーダーの役割を担うと考えています。また、特に金融サービスセクターをよりグリーンなものにするという点で、EUがいくつかの重要な活動を行ってきたことを私たちは見てきました。たとえば欧州グリーン・ディールは、タクソノミーを構築し、グリーン・ベンチマークを設定し、ファンドのための財務情報開示を強化することを目的とした政策対応です。

政治家がリーダーシップを発揮しない場合、どのようなリスクがあるでしょうか。

スウィンバーン:よりサステナブルな方法で経済を再構築しなければ、自国の金融システムと企業がグローバルな資本の流れから遮断されるという政治家たちの懸念は、今後より大きくなるだろうと私は考えています。ブラックロックの昨年(2019年)の発表ですでに明らかなように、一部の資産は資金調達にますます費用がかかるようになり、最終的には、化石燃料に依存する経済は信じがたいほど不利な状況におかれるようになります。

ダワン:新型コロナウイルス感染症の影響で気候変動に関する政治的な取組みが減少するとしても、私たちは今年とそれ以降、気候関連の取組みが増えると予想しています。実際、成長が回復するとき、ESG関連投資に対する投資家の需要は、市場で利用可能なESG関連資産の利用可能性を上回るのではないかと、私は懸念しています。政治と政策が直接的役割を果たすのはこうしたところです。

政府が明確なシグナルと政策を示さない場合、企業や組織には別の事業モデルへと変革する強いインセンティブが欠けるため、新しいESG関連資産の開発が遅れることになります。このようなことが続くと、資本の増加がトップダウンの政策の不在と衝突して無秩序な移行に至るコリジョンコースとなるでしょう。

金融セクターは変化を加速させるためにどのように利用されていますか。

スウィンバーン:新型コロナウイルス感染症の流行前は、EUの金融サービス企業は資本の流れの仲介者として、ESG活動の中心に入り込んでいました。EUは企業の開示そのものを規制してはいません。それは各加盟国の仕事です。しかし、EU全体の金融サービス分野を規制しており、それにより金融セクターは、EUの対応における有益な手段となっていました。原則として、EUは金融セクターにポートフォリオの構成要素のESGフットププリントを開示するように求めています。そのため金融セクターは、開示する必要があるものについて自社の法人顧客と難しい対話を強いられることになりました。

ダワン:それがまさに意図したことであり、新型コロナウイルス感染症が沈静化すれば、これらの開示要件は一部企業の行動を活性化するのではないかと考えています。しかし、目標と期待に関する有意義な政策がなければ、単なる会計上の試みになってしまうと懸念しています。測定方法にもよりますが、一部の試算では、主要石油会社は2012年から2018年の間に設備投資の約1%を再生可能エネルギー投資に支出したと見られます。このとき原油価格は相当に高く、同時に、世論と投資資本が化石燃料から離れつつあることはすでに極めて明確になっていました。したがって、開示の強制などによりESG関連の機運は多少盛り上がるでしょうが、移行のスピードは依然として遅いままだと考えます。

責任投資原則(PRI)が「避けられない政策対応」と呼ぶものに懸念がありますか。

ダワン:その事態を非常に懸念しています。基本的に、PRIはすでに新型コロナウイルス感染症の流行前に、政府が突然「一斉に」行動しなければならなくなり、それにより投資家のポートフォリオが相当なリスクにさらされる可能性があるという懸念を提起していました。もちろん、私も懸念しています。しかし、それはそうなる可能性が最も高いと考えるからではなく、金融コミュニティにとって極端に破壊的であるからです。また、私たちは十分なストレステストとそうした事態への対応計画を目にしたことがありません。

スウィンバーン:これもまた、できればEUが主導してほしいところです。欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督局(EIOPA)、英国の健全性監督機構(PRA)は、一連のストレステストを実施し、当局が金融サービス機関のESGへのエクスポージャについて明確な理解を得るために役立ててきました。中期的には、これにより多くの銀行、特に大規模な多国籍銀行が、世界中のリスクを格段に詳しく考察できるようになるのではないかと考えています。

現在の政治状況の中で、金融サービス機関の幹部にどのようなアドバイスがありますか。

スウィンバーン:私は今後の数ヵ月で、政治的および政策的環境はESG行動計画の有意義な活動に向けてスピードを増すと確信しているので、金融サービス機関の幹部は、この変化が起こりつつあることを否応なく認識しなければならないと考えます。座礁資産のポートフォリオをそのまま持ち続けるということは絶対にしてはなりません。今こそ自社のポートフォリオについて、短期的、中期的、長期的な計画と再考を始めるときです。

ダワン:私もそう思います。金融サービス機関がESG投資とリスクプランニングへの歩みを続けなければならない理由は数多くあります。しかし、ESGマンデートを実行する企業の能力が制限され始めるような、非常に深刻な問題がいくつか進行していると考えます。そこで政治とESGの行動計画との協調が必要となります。また、だからこそ、金融サービス機関の幹部はESG戦略を策定する上で、政治環境に細心の注意を払う必要があるのです。

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