テクノロジー・メディア・通信におけるCOVID-19の危機フェーズ
テクノロジー・メディア・通信業におけるマクロトレンド
テクノロジー
現在の危機のフェーズ | Recovery |
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- エレクトロニクス、電子デバイス、ネットワークサービス事業者
COVID-19の影響長期化が避けられない状況下、巣ごもり需要のフォローを享受するカテゴリーがある一方、共通の課題として流動的な経営環境への対応力を高める必要性が増しています。米国の新政権発足後も継続すると想定される米中摩擦をはじめとする地政学リスク、GAFAやBATHを巡る規制動向・データ利活用のガバナンス強化の方向性、これら環境変化へのアンテナを高く張り、サプライチェーンの持続可能性や事業ポートフォリオ組換えを追求する意思決定を的確に行うことが求められています。
外出や出勤が難しい中の巣ごもり消費やリモートワークの浸透は、コンテンツ視聴やオンラインゲームなどのD2Cサービスはもちろん、大型TV、新世代ゲーム機器、PCなどのハードウェアの販売も順調に回復・伸長させています。ただし、感染再拡大によるリアル店舗の閉鎖や部材調達停滞などによるサプライチェーン寸断のリスクが常態化する中、デマンドサイドの一層のオンラインシフト、サプライサイドの拠点配置や在庫管理の効率性と安定性両面からのコントロール強化を、従来以上に緊張感をもって継続する必要があります。
一方で、リアルとオンラインのハイブリッド化をNew Normalの前提に置いた、新たなUX、DX実現を目指した技術開発・ビジネスモデル開発の一層の加速は間違いなく、自社での取組みはもちろん、他社との協業、M&Aによる取り込みの積極的な検討が見込まれます。これは、従来のオフィス出社を前提としたビジネスモデルであるドキュメントソリューション事業やソーシャルディスタンス確保に制約のあるシェアリングサービスを一例とした経営戦略再検討の動きと相まって、事業ポートフォリオや合従連衡に対する不断の検討が不可欠であることを意味します。
従って、テクノロジー業界においては、堅調な業績回復の一方、多くの側面で想定される環境変化に柔軟・迅速に対応することができるよう、常に複数のオプションを念頭に事業のシナリオプランニングを実施し、レジリエンスの高い経営体質を目指すことが肝要ということができます。
メディア
現在の危機のフェーズ | Resilience |
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- マスメディア
緊急事態宣言解除後は徐々に観客を限定したイベントの開催が可能となり、停滞していた各企業によるマーケティングも再開した。しかしながら、“職場”の再定義(リモートワークの浸透)、“自粛ムード”(巣ごもり)の継続が、既存媒体(新聞、テレビ)から新興媒体(インターネット)への流れを加速させているだけでなく、広告出稿企業の属性の変化が生まれつつある状況です。(遠出・外出に関連する企業は出稿の絞り込み、近場・自宅に関連する企業は出稿の再開)。また、ライブコマースと言った新たなマーケティング手法も生まれつつあります。
このような実態を踏まえて、大手広告代理店は、顧客企業のためのメディアバイイングから、顧客企業のためのコンサルティングに力点をシフトしています。大手広告代理店は強固な顧客基盤と豊富な人材を擁しており、今後コンサルティング業界における競争地図が変わりうる可能性があります。一方、出遅れ感が否めないのが民間放送局です。堅牢な法律・規制に守られている同業界は、従前からの課題であった事業改革はコロナ禍という局面でも遅々として進んでいません。ステイホームの環境を活かし、会員獲得を大きく伸長させたOTT(動画配信事業者)との差が大きく広がっています。
メディア全体を通じての課題は、制作現場でのソーシャルディスタンス等の制約です。欧米ではワクチン接種は開始されたものの、国内でのワクチン接種の開始は現時点では未定であり、テレビドラマ、映画、音楽のコンテンツに重要な遅延が見られます。好調なOTTも来年度以降はコンテンツ不足に陥る可能性がある。このような中でアニメがクローズアップされており、大型M&Aが実行されています。
通信
現在の危機のフェーズ | Recovery |
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- モバイル通信事業者
モバイル通信事業者へのCOVID-19のマイナス影響は限定的であり、中長期的にみると、リモートやオンラインによるビジネス活動の活発化によりDX需要が加速し、プラスとなると見込まれます。
2020年3月末に各社が開始した5Gの通信サービスへの影響として、オープニングイベントの中止、オリンピックパラリンピックの延期に加えて中国工場等の稼働停止による次期iPhone販売予定時期の遅延やネットワーク機器の投資遅延が心配されました。しかしながら、5G対応のiPhoneの発売は1か月程度の遅延に留まり、インフラ整備も各社は当初よりも前倒しの計画を発表しています。第1四半期の端末販売の不調はあったものの、現在COVID-19の影響はリカバリーフェーズに入っているといえるでしょう。
NTTドコモは菅新政権が掲げる携帯電話料金の引下げ要求に応える形で12月初旬に月額2,980円のオンライン専用の新料金プラン”ahamo”を発表しました。本プランはデータ容量20GBの制限はあるものの、メインブランドでの大幅な料金値下げは、競合する他キャリアのみならずMVNOにも大きな衝撃を与えるものとなりました。ドコモに対抗する形で12月下旬にはソフトバンクが”SoftBank on LINE”を、1月中旬にKDDIが”povo”を発表し、大手3社がメインブランドにおいてオンライン限定、データ容量20GB、1回5分以内の通話で月額2,980円という横並びの状態になっています。これにより携帯電話料金の低廉化は進むと考えられるものの、3社による寡占がより強固となることが懸念され、今後楽天モバイルやMVNOがどのような策に出るか、行政が何らかの施策を打ち出すのかが注目されます。楽天モバイルは2020年10月に5Gサービスを4Gと同じ料金体系でスタートし、低価格戦略で先行していましたが、通信の安定性で勝る大手3社がデータ、通話ともに無制限ではないものの楽天モバイルと同じ2,980円のプランを出してきたインパクトは大きく、4月以降無料キャンペーン期間が満了を迎えるユーザーが出始める中で、解約防止のための施策を出さなければいけない状況に追い込まれています。加えて楽天モバイルは、5年前倒しするという通信エリアの拡大、仮想化技術による通信品質への影響や運用費用の削減を想定どおりにコントロールできるか等の課題を抱えており、正念場となっています。
2021年1月現在、第3波によるCOVID-19の感染拡大が続いていますが、モバイル通信事業者の業績はこれまで大きな影響を受けず、比較的堅調に推移してきました。しかしながら、価格競争の激化により通信事業の業績拡大が困難となる中、各社とも非通信事業の成長がますます重要になっています。ペイメント事業を中心としたコンシューマ部門での経済圏の拡大に加え、5Gで収集した大量のデータを活用したビジネスや新サービスの事業化による法人部門の成長が重要な課題となっていくでしょう。また業界全体にとっては、通信料金低廉化の潮流は5G時代の幕開けとともに、独立系MVNOの合従連衡、鉄塔やアンテナといったパッシブインフラの分社化といった業界再編のトリガーとなるかもしれません。
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