With/After COVID-19における取締役会の役割・責務

COVID-19は未だに終息のメドが見えず、我々の生命・身体の重大な危機となっており、さらには社会・経済活動の停滞という深刻な影響を及ぼしています。

COVID-19は未だに終息のメドが見えず、我々の生命・身体の重大な危機となっており、さらには社会・経済活動の停滞という深刻な影響を及ぼしています。

COVID-19は未だに終息のメドが見えず、我々の生命・身体の重大な危機となっており、さらには社会・経済活動の停滞という深刻な影響を及ぼしています。

社会全体において行動様式の変革が迫られる中、企業においても今までに経験したことのないような大きな影響を受けており、ビジネスモデルや戦略の変更・従業員の働き方の変化等、経営は非常に難しい舵取りを迫られています。

このような環境下に置いて、企業価値をさらに向上させるため、取締役会はどのような振る舞いをすべきか、改めて考察を行います。

モニタリング・モデルへのシフト加速の必要性

日本の会社におけるガバナンスは、いわゆる「モニタリング・モデル」を志向しつつあります。

「モニタリング・モデル」とは、究極的には「経営者の評価」であり、自社の企業価値向上に向けて客観的にどのような方向性を示すべきか、また現執行陣がその方向性に向かえているかということを、取締役会はつねに確認・検証し、助言をしなければなりません。

「モニタリング・モデル」の最大のメリットは、執行陣の経営意思決定のスピードアップと、客観的・俯瞰的な視点からのステークホルダー等の期待事項とのズレの検知・補正にあります。

そのため、取締役会は個々の業務執行への意思決定には関与せず、I.株主等のステークホルダー目線からの経営に関する大局的な基本方針等の決定・2.執行陣の選解任等を含めた能動的なモニタリングを行うことが要求されます。

1.株主等のステークホルダー目線からの経営に関する大局的な基本方針の決定

取締役会では、自社のミッション・バリューに照らし、ステークホルダーの期待を踏まえた中長期的な経営方針を決定します。この際、単なる収益の向上のみならず、企業の持続的成長性を意識し、ESG,SDGsの視点から抽出されるマテリアリティを意識した方向づけが必要となります。アフターコロナを見据え、自社を取り巻くリスクは何か、また自社が果たすべき役割・価値は何かについて取締役一丸となって議論し、大方針を打ち立て、執行陣に対し問いかけをしていくことが必要であると考えます。

2.執行陣の選解任を含めた能動的なモニタリング

モニタリングという言葉は、便利なワードとして使われがちです。それゆえ、モニタリングという言葉を使う人によってイメージしている内容が違ったり、「見ているようで見ていない」状態などをつくり出してしまう懸念もあります。

「能動的」なモニタリングとは、取締役が「経営陣の評価」や「目指すべき大方針からのギャップの検知」のために積極的・具体的な確認・検証を行うことをいいます。執行において「何ができていなくて、機能していない点は何か」等、モニタリングの観点と感度を明確化し、取締役会にて認識を合わせておく必要があります。

不測の事態への対応における取締役会の役割

コロナ禍の発生はどの企業にとっても「不測の事態」であり、この現状を想定し予め対応をしている会社はほぼ存在しなかったと思われます。

一方で、コロナ禍の発生後に速やかに新たなビジネスモデルや働き方への改革に動き出せている会社と後手に回っている会社で差が出てきているのも現実です。このような差はどこから生まれるのでしょうか。

まずは、「コロナ」に限らず、会社にとっての「不測の事態」にはどのようなものがあるか、取締役会等においても議論され、具体的な事象とその対応方針の認識共有が図られている会社においては、「不測の事態」の端緒をいち早く発見し、次の一手を考えることが可能となります。

「不測の事態」として、コロナのようなパンデミックのほか、大規模災害(地震、水害等)、致命的な品質事故、重大な不祥事、国際関係悪化、恐慌・・・等、自社の企業存続を脅かすような事象をとらえ、具体的なリスクや想定影響を理解しておくことが重要となります。

具体的なリスクと想定影響を踏まえ、いざとうときにどのような点をモニタリングすべきか、観点等についても具体化しておくことで、状況を的確に把握するために、執行陣に対し、確認・検証を行いやすくなります。

「不測」の事態は予見しづらい事象であるからこそ、取締役会等でしっかりと議論を行い、あらゆるパターンを想定しておき、執行陣の動きに対し、様々な視点からの問いかけを行っていくことが必要となります。

ニューノーマル下における取締役会の指名・報酬の考え方

1.取締役会の指名におけるポイント
コロナ禍を契機に、世の中の常識が大きく変容しました。それに合わせて、ビジネスモデルや働き方も柔軟に変化させていかなければなりません。このような変化に対応すべく、取締役会の構成メンバーは、スキル・経験の上で多様性を確保し、ステークホルダーの視点にこたえられるようなメンバー構成を考える必要があります。その際のカギとなるのは社外取締役の存在です

ニューノーマルとして、新たなビジネスへの転換や取り巻くリスクにさらされる中、企業の持続的な成長の視点、リスク発見力、局面に応じた柔軟な発想力・応用力等が要求されます。

単に「経営経験がある」等の要件のみならず、より具体的に期待事項を明確化し、複数の要件を満たすような要員を確保するとともに、選任後には役割を明確にすることが必要となります。

2.取締役会の報酬におけるポイント
企業の持続的成長を意識した場合、役員報酬に対しサステナビリティの観点の折り込みについての議論が加速することが見込まれます。ショートタームでは、従業員の安全確保や短期的な事業維持への貢献の加味が考えられます。

ロングタームでは、経済活動をいかに止めないか、雇用創出や、サプライチェーンの維持、社会的な意義のある事業へのシフト(マスク製造や、シールドの製造)、働き方改革を意識した大胆なイノベーション等への貢献の加味が考えられます。

このように、業績評価の中にサステナビリティの観点をいかに織り込んでいくか、世間の動向等についてアンテナを張っておくべきであると思います。
 

まとめ

コロナ禍という未曽有の事態へ直面したことにより、企業経営における取締役会の役割・責務は一層重大なものであることが改めて明確になりました。
従来型のマネジメント・モデルからモニタリング・モデルを志向することにより、持続的成長を果たし、さらなる企業価値の向上を実現可能となるものと考えます。
 

執筆者

KPMGコンサルティング/KPMGジャパン
コーポレートガバナンス センター・オブ・エクセレンス
ディレクター 木村 みさ