小売業界に求められる採用手法の見直し~ダイレクトリクルーティングとは~

「小売りの明日」第15回 - 人材確保が課題となっている小売業界の解決策として、ダイレクトリクルーティングの活用方法を成功例も交えて解説する。

「小売りの明日」第15回 - 人材確保が課題となっている小売業界の解決策として、ダイレクトリクルーティングの活用方法を成功例も交えて解説する。

総務省統計局による人口推計をもとに、今後15年で約650万人の労働力が減少するという試算がある。2019年2月時点での国内の雇用者数は5962万人。つまり、これから約11%の雇用が減少するということだ。小売流通業界において営業時間問題などが取りざたされる昨今、労働者の減少は逼迫した課題だ。
この状況で企業の選択肢は2つある。1つは、11%の雇用が減少しても今の業務を維持できる仕組みに変える。もう1つは、11%分の雇用を確保する。しかし、既に到来している採用難の状況で、どのように人材を確保していけばいいのだろうか。

これまでの採用は、求人媒体に自社の応募要項を掲載する、もしくは人材紹介会社からの紹介を得るという手法だ。しかし労働人口が減少している現在、各社が採用を強化するのだからコストも増大し、競争が激化するのは明らかだ。求職者数に対する求人数の比率を示す2019年3月の全国の有効求人倍率2.17倍という数字が何よりもそれを表している。他社と同じフォーマット、つまり横並びの手法で従来より効果が得られるか、よく検証する必要がある。

採用難となる以前に“応募難”という状況に陥りつつあるなか、解決策のキーワードが「ダイレクトリクルーティング」だ。ヤフーやメルカリなども取り入れているという。自社の採用サイトの訴求力を充実させ、その採用サイトを通じて就職希望者にダイレクトに情報を届け、就職希望者が自社サイトから応募してくる流れを創るのが「ダイレクトリクルーティング」だ。その代表的な手法が求人情報専門の検索エンジン「インディード」である。
ある飲食店では「インディード」を活用したことで採用数は2倍以上になり、かつ従来かかっていたアルバイト募集の費用を80%削減することに成功した。「自社の採用サイトを見直し、インディードに掲載した」。取組みはシンプルにこれだけなのだ。インディードから自社の採用サイトへ流れる動線ができるのが重要だろう。応募する人にとっても採用サイトを見た上で、志望意欲が高いままエントリーしてくれる。

ダイレクトリクルーティングでは「インディード」に限らず、インターネット広告やSNS(交流サイト)広告、全世界で4億人が利用するビジネス向けSNSの「リンクトイン」などを活用して、自社がアプローチしたい世代やエリア、経歴、サイトの閲覧傾向などに応じて自社の情報を直接就職希望者のスマートフォンに届けられる。
ダイレクトリクルーティングは海外では主流の人材採用の解決策だが、日本においては普及余地が多大にある。日本企業も今後の人材採用においては避けては通れないだろう。まずは自社の採用サイトを徹底的に充実させることがダイレクトリクルーティングの第一歩になる。

 

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日経MJ 2019年4月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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