特別企画 働き方改革は退職給付会計にどう影響するか - 第5章 ポイント制度への変更でどうなる?報酬体系の見直しと退職給付会計の留意点

第5章 ポイント制度への変更でどうなる?報酬体系の見直しと退職給付会計の留意点

旬刊経理情報(中央経済社発行)2020年3月10日号に「定年延長から雇用流動化まで働き方改革は退職給付会計にどう影響するか」に関するあずさ監査法人の解説記事が掲載されました。第5章は、ポイント制度への変更でどうなる?報酬体系の見直しと退職給付会計の留意点について解説します。

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この記事は、「旬刊経理情報2020年3月10日号」に掲載したものです。発行元である中央経済社の許可を得て、あずさ監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載・転用はご遠慮ください。

ポイント

  • 報酬体系は、年功型から能力型への見直しが進んでいる。一方、退職給付もかつては賃金と連動する制度が半数を占めていたが、最近は賃金と連動しないポイント制度が多数を占めている。
  • ポイント制度の退職給付を見直す場合、過去給付分は既得権と考え維持し、将来給付分の付与ポイントのみを変更することが多い。この場合、退職給付債務の計算に用いる期間帰属方法によっては、過去勤務費用が発生しないことがある。

事案の概要

昨今、年功型の報酬体系を見直す動きは広まっており、たとえば日本経済団体連合会が2020年春闘の労使交渉で、年功型など横並びを重視した賃金体系の見直しを会員企業に呼びかけている。従来型のわが国の雇用慣行から脱却し、急速に進むデジタル化などに対応できる人材を確保しやすくする狙いがある。
退職給付に関していえば、賃金と退職給付が連動する制度(一般的なものとして、退職時給与×勤続年数および退職事由に応じた支給率)の採用割合は、2002年度の経団連の調査では半数を超えていたが、2018年度では賃金と連動しないポイント方式の採用が70%近くとなっている(図表11参照)。

図表11 賃金と退職金の関係

 

調査年度 賃金と退職給付が連動 賃金と退職給付が連動しない その他
ポイント方式 別方式
2018 13.3% 69.9% 14.1% 2.7%
2016 16.0% 65.4% 14.8% 3.8%
2014 20.1% 65.6% 10.6% 3.7%
2012 21.4% 65.0% 10.9% 2.7%
2010 25.4% 59.2% 13.1% 2.3%
2008 25.0% 57.0% 14.5% 3.5%
2006 29.6% 50.8% 16.8% 2.8%
2004 42.0% 38.1% 15.4% 4.5%
2002 51.9% 28.0% 15.2% 4.9%

(出所)経団連 「退職金・年金に関する実態調査結果」(2018年9月度他)をもとに筆者作成

職階や職能、勤続に応じて付与されるポイントを累積するポイント制度の退職給付は、前記傾向と整合的であるうえ、従業員にとっても、賃金に連動する退職給付に比べて貰える金額が分かりやすいと言うメリットがある。経団連の「退職金・年金に関する実態調査結果」(2018年9月度)によると、付与ポイントは「資格・職務要素」が60%台半ば、「年功要素」が20%台前半、「考課要素」が10%弱となっている。ポイントテーブルに「考課要素」がない会社や考課の格差が小さい会社もまだ多く、また退職給付に従業員の長期の定着を期待していると「年功要素」である勤続ポイントの割合が多くなる傾向がある。
本来ポイント制度の退職給付は年功の要素が小さいが、退職金受取り時に自己都合減額率を設定しているケースがあり、この部分に関しては年功要素(長期勤続の優遇)がまだ残っているといえる。一方で、企業型の確定拠出年金(DC)は勤続3年以上であれば、事業主掛金返還がなくなるので、年功要素は小さいといえる。

ポイント制度への変更および付与ポイント変更時の退職給付に関する留意事項

報酬体系の見直しに合わせ、現行の退職給付制度をポイント制度に変更したり、現行のポイント制度をより職階や職能を重視する体系に変更したりするケースも散見される。
現行の退職給付制度をポイント制度に変更する場合は、企業会計基準適用指針1号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」に沿って会計処理することになる。確定給付型の現行制度をポイント制度に変更した場合、退職給付債務が変動することが多く、その場合は過去勤務費用を認識・測定し、一定期間で費用処理する必要がある。このとき、過去勤務費用は新しい制度の施行日ではなく、改訂日(労使の合意の結果、規程や規約の変更が決定され周知された日)現在で算定される点に留意が必要である(「実務対応報告2号 「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い」Q1)。
現行のポイント制退職給付制度を見直す場合、既得権保護の観点から過去分の積立ポイントを変更するケースは少なく、将来の付与ポイントを変更することが一般的である。退職給付会計上は、将来の付与ポイントを見直すと予想昇給率変更の要否の検討が必要となる。このとき、退職給付債務の計算前提の一つである期間帰属方法として、給付算定式基準の「将来のポイントの累計を織り込まない方法」または「将来の拠出付与額を織り込まない方法」を採用している場合は、過去分の積立ポイントに基づき退職給付債務を算定するため、将来の付与ポイントを変更しても過去勤務費用は発生しない。ただし、勤務費用は将来の付与ポイントに基づき算定するため、付与ポイント変更の影響を受ける。一方、期間帰属方法として期間定額基準を採用している場合は、退職給付債務が増減し過去勤務費用が発生する。その代わり、勤務費用は給付算定式基準に比べると、付与ポイント変更の影響は抑えられることが多い。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
パートナー 公認会計士 年金数理人
三輪 登信(みわ たかのぶ)

シニアマネジャー 年金数理人
渡部 直樹(わたなべ なおき)
 

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