IFRS基準(国際財務報告基準) とは

IFRS基準(International Financial Reporting Standards、国際財務報告基準)は全世界の広い地域で、強制適用とされているか、任意適用が認められており、世界的に広く適用されている会計基準です。日本では、強制適用とはされていないものの任意適用が認められており、上場企業を中心に導入が進められています。

IFRS基準導入による2つのメリット

IFRS基準を導入することの主なメリットとして、社外的に財務諸表の比較可能性が向上すること、そして、社内において経営管理に用いられる企業グループの財務数値の有用性が向上することが挙げられます。

1.企業外部からの比較可能性が向上

世界的に適用されているIFRS基準に基づいて企業の財務諸表を作成することによって、国内だけでなく、国際的に財務諸表を比較することが可能になります。これは、財務諸表利用者が意思決定を行う際に有用なだけでなく、企業にとっても海外投資家からの資金調達の機会が増えることにつながります。例えば、EUにおいて上場を目指すような場合にはIFRS基準の適用が必須となっており、他の地域においても資金調達を行う際に有用です。

2.社内における経営管理の有用性が向上

IFRS基準ではなく、日本基準を適用している企業は、連結財務諸表の作成において、IFRS基準または米国基準で作成されている在外子会社の財務諸表を、必要な調整を加えつつも、基本的にそのまま取り込んでいる実務が多くみられます。このような場合、異なる基準によって作成された各社の数値に基づいて、経営管理を行うことは必ずしも効率的ではないと思われます。一方で、IFRS基準を適用した場合には、企業グループの全社において、IFRS基準の適用が求められるため、このような不都合が解消されます。データドリブン(データに基づく経営)の時代である現代において、こうしたデータの質が均一になることは正しい意思決定を行う上で非常に重要だと考えられます。

導入コストと押さえておくべき3つの課題

メリットの大きいIFRS基準の導入ですが、一方で、導入にはコスト負担を伴う準備が必要です。下記の3つの課題が代表例です。

1.人員体制の強化

IFRS基準の導入にあたっては、現状行われている日本基準での会計処理がIFRS基準ではどのように行われるのかを、細部にわたって分析しながら進める必要があります。この作業には、日本基準での会計処理の実務の理解に加えて、IFRS基準に対する幅広い知識と経験が必要とされます。日々の業務に加えて、これらの導入プロジェクトを進められるよう、十分かつ適切な人材を確保することがまず重要になると考えられます。

2.導入スケジュールの計画

IFRS基準の導入は、現状の実務の分析に始まり、IFRS基準の要求事項との差異の分析、新たな会計方針の決定、その新たな会計方針に基づく規定の整備、IFRS基準ベースでの開示への対応等、様々な対応が必要になります。会計分野以外でも、業務フロー及び内部統制の見直し、他部署との調整も必要になります。そのため、これらを適用予定時期から逆算して導入スケジュールを立てることが重要であり、どのフェーズに通常どの程度の人員を割いて、どの程度の期間を見込むべきかを検討する必要があります。ビジネスの複雑性(取引の性質、セグメント数等)やグループ会社の数などによって変わってきますが、一般的には移行日までに1~2年程度の準備期間を設けるケースが多いと思われます。

3.関係会社との連携

IFRS基準は、企業グループ全体に対して適用する必要があります。したがって、親会社だけでなく、子会社に対しても、同様の対応が必要であり、プロジェクトの開始から完了に至るまで、タイムリーに関係会社とコミュニケーションを行うことが非常に重要になります。特に、在外子会社については、言語の違いや会計慣行の違いがプロジェクト進行の障害となることもあり、適切な人材の確保がここでも重要になります。

業種別の論点

上述した3つの課題は各社に共通する全般的なものです。その他にも、少し細かくなりますが業種によって会計上、特に留意すべき論点が存在します。以下はその例です。

  • 製造業:有形固定資産の減価償却方法や耐用年数の見直し、減損など
  • 卸売業:収益認識のタイミング、本人・代理人の区別など
  • IT産業:収益認識のタイミングなど
     

KPMGジャパンのIFRS基準導入支援

これまで見てきたようにIFRS基準の導入には、大きなメリットがある一方で、適切な人材・十分な導入期間の確保、ならびに適切なプロジェクト管理に多くのリソースや知見が求められます。特に、IFRS基準の実務にも詳しい人員を社内で調達するのは容易でない場合が多く、また、導入期に人員が必要であったとしても、その先も同様のリソースが必要であるかは不透明であり、長期的なコスト管理という観点でも、人員の確保には頭を悩ませることと思います。そのような事情を鑑みると、一時的に生じる導入作業について、専門家のサポートを受けることも1つの解決策になるものと考えられます。IFRS基準導入に際して、何か不明な点やお困りの点があれば、お問合せください。

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