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Drilling Down: アフターコロナのLNG市場概況 - 価格下落が新規および小規模市場プレーヤーにもたらす可能性

Drilling Down: アフターコロナのLNG市場概況

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やその他さまざまな事象により、液化天然ガス(LNG)市場のダイナミクスが変化しています。業界専門家たちは2020年半ばまでに市場の引き締めが起こると見込んでいましたが、その予測通りには進まず、広範囲にわたる供給過剰により価格の下落圧力が強まっています。

関口 美奈

KPMGジャパン エネルギー&インフラストラクチャーセクター統括パートナー

あずさ監査法人

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ちょうど1年前にヒューストンで開催されたKPMG Global Energy Conferenceにおいて、KPMGは、過去最大数の最終投資決定(FID)により供給過剰が生じることから、2020年上半期を通じてLNGの供給過剰が続き、その後市場は若干引き締まると予測しました。しかし、COVID-19によるパンデミックおよびその他の重大な事象により、結果としてこの強気な予測通りにはなりませんでした。

まず、2019年後半に北東アジアが異常な暖冬となり、当該地域におけるLNG需要が予想を下回りました。そして、それによる供給の余剰分のカーゴは欧州に向かいました。欧州ではアジアで余剰となったLNGを備蓄できるだけの設備があり、低価格に乗じてアービトラージを取り、必要なときに利用するためのLNG在庫を積み増すことができました。

その後、2020年3月にはサウジアラビアとロシアの間の市場争いがもたらしたサウジの増産により原油価格は暴落し、数日間1バレル当たりの価格がマイナスで推移しました。原油価格の下落に伴い、LNGスポット価格も下落しました。

当然ながら、COVID-19の世界的な流行は、現時点において、2020年のLNG需要にとって最も重要な出来事であり、その影響は需要サイドに、より深刻で長期化する可能性のある課題を生じさせています。COVID-19の影響から経済が回復するまでにどれほどの時間を要するかは依然として不透明であり、現在も閉鎖されているビジネスのうちの多くがそのまま廃業となることは確実です。したがって、需要の軟化は当面続く可能性があります。

世界的なLNG市場の需給概況

需要見通し

COVID-19の影響により、世界的なLNG需要がCOVID-19発生前の水準に比べておおむね8%程度減少し、需要が以前の水準まで急速に回復しないと見込まれます。ただし、中国は例外で、政府が経済の回復に向けた取組みを積極的に推進しています。市場専門家によると、2020年下半期内には中国における需要がCOVID-19発生前の水準にまで回復すると見込んでいます。

供給見通し

過去最低水準にある現在のLNG価格は、特に米国を基盤とするプロジェクトにおいて、困難な状況にある生産者およびサプライヤーに多大な圧力をかけています。上記で説明したように、買い手、特に北東アジアおよび欧州におけるプレーヤーについてはすでに備蓄が最大量に達しており、さらなる供給を取り込むことはできません。

この供給過剰な状況によって、買い手は向こう数ヶ月間の輸送をキャンセルせざるを得ない可能性があります。生産者およびサプライヤーは、もし輸送のキャンセルを受け入れるのであれば、事業を再評価し、市場価格下落の状況でも利益を確保するために、オペレーティング・コストを削減する措置が必要となる可能性があります。このような措置には新規のLNG液化プロジェクトの延期が含まれる可能性もあります。しかし、プラント建設の延期は将来的な需給に影響を及ぼすことになります。また、特に米国ではサプライヤーおよび生産者の再編が、一連のM&Aや統合に繋がる可能性があるでしょう。

発展途上国 - 市場参入する小規模プレーヤー

LNG価格を圧迫しているCOVID-19およびその他の要因により、今までの状況すべてが変わる可能性があります。

南アジア、南アメリカ、東ヨーロッパおよびアフリカの多くの国では、気候変動を考慮し、環境に優しいエネルギーへの転換が奨励されてはいるものの、その価格の低さから石炭がエネルギー源として利用されています。LNG価格の下落により、これらの発展途上国は石炭からの転換を容易に行えるようになる可能性があります。

また、中国政府は、LNGの輸入を増加して石炭からの転換を早めるために、より多くの非国有企業に国外でのLNG生産を認めるようになるでしょう。

売り手及び買い手への影響

このような動向は、LNGの買い手および売り手に多くの影響を及ぼします。

  1.  LNG生産業者は引き続き利益率への圧力に晒されるため、コスト効率の向上と経営のスリム化に注力する必要があります。
  2.  価格の下落により買い手のスポット購入への選好が強まるため、売り手には引き続き契約時における買い手からの圧力がかかる可能性があります。したがって、売り手はトレーディングや短期の交渉に関する商業的な手腕を高め展開していく必要があります。
  3.  買い手は自国の市場と地理的により有利な市場における裁定取引から価値を獲得しようとするため、引き続きカーゴを転売する自由を要求してくるでしょう。このことは、買い手が自国外における市場ダイナミクスや動向についての理解を深める必要があることを意味します。
  4.  石油およびガスの総合プレーヤーにとって従来の領域における利益率は引き続き厳しいものとなるため、LNG燃料および関連商品の下流領域で新たなポジションを開拓するという彼らの計画は、現在の環境において、前倒しで進行することになります。そのために、石油およびガスの総合プレーヤーは、LNGへのエネルギー転換やその転換を生み出し急速に進化しているバリューチェーンへの対応計画を加速する必要があります。

執筆者

あずさ監査法人
エネルギー・インフラストラクチャー事業
マネージング・ディレクター 関口 美奈

英語コンテンツ(原文)

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