コロナ禍の銀行業への影響と対応 - 加速するデジタライゼーション
「デジタルID」「マイナンバーカード」など幾つかのキーワードから、コロナ禍における銀行業の今後の対応の方向性について考察します。
「デジタルID」「マイナンバーカード」など幾つかのキーワードから、コロナ禍における銀行業の今後の対応の方向性について考察します。
目次
- コロナ禍の銀行業への5つの影響
- 「キーワード」で考える銀行の対応
- 非対面の顧客取引開始(リモートオンボーディング)
- デジタルID
- マイナンバーカード
- データプライバシー
- リスクベースアプローチ
- デジタル通貨
1.コロナ禍の銀行業への5つの影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今なお世界中で大きな災禍(「コロナ禍」)を与え続けているが、現時点で「銀行業への影響」としては以下の5つを挙げることができる。
影響1
コロナ禍は、対顧客の非接触・非対面のプロセスの重要性を高めた。
- これは銀行に限らず官民の多数の組織に共通して言える※1。
- 感染拡大阻止のために非接触・非対面が求められるからである。
影響2
コロナ禍は、政府によるデジタルインフラ整備への国民の要請を高めた。
- 日本を含めた各国で政府から国民に対する「現金給付」が行われたが、国によって異なるデジタルインフラの整備状況によって支払処理に要する時間は大きく異なった。
- 日本では、7月にまとめられた「骨太方針」※2に「次世代型行政サービスの強力な推進---デジタル・ガバメントの断行」として「マイナンバー制度の抜本的改善」などが記載された。当面は政府主導の対応となるが、いずれ銀行等で政府の対応を踏まえた対応が必要になると考えられる。
影響3
コロナ禍は、個人情報の取得・分析・開示の要請とプライバシー保護の衝突を強調する機会も提供した。
- 「新規感染者の属性情報の公表」や「感染拡大阻止のためのスマホアプリの提供」等がそうした機会の例である。
影響4
コロナ禍は、金融犯罪や詐欺の増加を招き、銀行等に「金融犯罪等に対して低コストで効果的に対処するためにどうすべきか」という課題を与えた。
影響5
コロナ禍は、支払決済手段のキャッシュレス化を後押しした。
- 各国で、現金(紙幣・硬貨)の授受に感染リスクを警戒する傾向がみられた。
- コロナ禍の前から加速傾向にあった中銀デジタル通貨(CBDC)をめぐる動きも、このところ目立っている。
マイクロソフトのナデラCEOが4月末に「2年分のデジタル変革が2ヵ月で起きた」と述べたように、デジタライゼーションは大きく加速している。
※1例えば、(官)政府部内の会議や国際会議等のTV会議による開催、(民)ネット通販・オンライン教育・オンライン診療・テレワークの利用拡大など。
※2「経済財政運営と改革の基本方針 2020」7月17日閣議決定。
2.「キーワード」で考える銀行の対応
銀行は、これらの5つの影響に、今後どのように対応していくべきだろうか。
対応策についての「キーワード」として、次を挙げることができる。
- 非対面の顧客取引開始(リモートオンボーディング)
- デジタルID
- マイナンバーカード
- データプライバシー
- リスクベースアプローチ
- デジタル通貨
以降、これらの「キーワード」に沿って、銀行の「今後の対応」に参考になりそうな情報を提供する。(PDF参照)
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
金融アドバイザリー部
ディレクター 水口 毅
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