会計・監査ダイジェスト 会計及び監査を巡る動向 2020年6月号

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

会計・監査ダイジェストは、日本基準、国際基準、修正国際基準及び米国基準の会計及び監査の主な動向についての概要を記載したものです。

ハイライト

今月は、主に以下のような留意すべき情報が公表されています。

1. 日本基準

法令等の改正

【最終基準】
金融庁、会計方針、収益認識及び会計上の見積りに関する開示等の会計基準の改訂等を踏まえた「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等を公布

金融庁は2020年6月12日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下、「財務諸表等規則」)等の一部を改正する内閣府令」等(以下、「本改正」)を公表した。本改正の概要は以下のとおりである。

(1)企業会計基準委員会が2020年3月31日に公表した「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号・改正)」、「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号・改正)」及び「会計上の見積りの開示に関する会計基準(企業会計基準第31号)」等を受けて、財務諸表等規則等について所要の改正を行っている。

(2)2020年3月31日に公表・改正した上記3つの会計基準を、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第1条第3項及び財務諸表等規則第1条第3項に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として追加指定する改正を行っている。

本改正は、公布日(2020年6月12日)から施行される。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年6月16日発行)

 

【公開草案】
法務省、収益認識・会計上の見積り注記に関する「会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表

法務省は2020年6月4日、「会社計算規則の一部を改正する省令案」(以下、「本省令案」)を公表した。

本省令案は、企業会計基準委員会が2020年3月31日に公表した「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号・改正)」及び「会計上の見積りの開示に関する会計基準(企業会計基準第31号)」を受けて、会社計算規則の改正を行うことを提案している。

本省令は、公布の日から施行される予定であり、適用時期については会計基準等と整合するように経過措置を設けることが提案されている(ただし、収益認識に関する事項に関して早期適用の定めがない点について会計基準と相違がある)。
本省令案に対するコメントは2020年7月3日に締め切られている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年6月10日発行)

 

会計基準等の公表(企業会計基準委員会(ASBJ))

【公開草案】
ASBJ、「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」を公表

ASBJは2020年6月3日、実務対応報告公開草案第59号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」(以下、「本公開草案」)を公表した。本公開草案は、2021年12月末をもってLIBORの公表が停止されることが見込まれていることを受けて、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する特例的な取扱いを設けることにより、金利指標改革に起因するLIBORの置換に直接関係のある契約条件の変更・契約の切替えについてヘッジ会計の継続が可能となるような取扱いを定めることを提案している。

具体的には主な内容は次のとおりである。

  • ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ)
    ヘッジ対象となる予定取引の実行可能性の判断に際しては、ヘッジ対象の金利指標が既存のLIBORから変更されないとみなすこと、また、ヘッジの有効性評価に関する事前テストの実施においては、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標が既存の金利指標から変更されないと仮定することを認めることが提案されている。
    さらに、事後テストにおける有効性評価の結果ヘッジの有効性が認められなかった場合であってもヘッジ会計の継続を認めること、またこの扱いをヘッジ対象及びヘッジ手段の双方の契約において後継金利指標への置換が生じた時点以降についても適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度まではヘッジ会計の継続適用を認めることが提案されている。
  • 金利スワップの特例処理
    金利スワップの特例処理についても繰延ヘッジに準じた措置を設けることで、2023年3月31日以前に終了する事業年度までの継続適用を可能とする対応を提案している。
  • 振当処理
    振当処理についても同様に、2023年3月31日以前に終了する事業年度までは当処理の適用の継続を可能とするための措置を提案している。

適用時期について、本公開草案では、公表日以後適用できることが提案されている。本公開草案の取扱いは、ヘッジ関係ごとに適用を選択できることが提案されている。

コメントの締切りは2020年8月3日である。

なお、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動については不確実な点が多いことから、本公開草案の最終化から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定であることが明らかにされている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年6月10日発行)

INFORMATION

(1) ASBJ、議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を更新(四半期決算開示の考え方)

ASBJは2020年6月26日、四半期決算の開示における考え方を明らかにするため、議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(2020年4月10日、5月11日追補)を更新したことを公表した。
本議事概要では新型コロナウイルス感染症に関連する見積りの仮定(以下、「コロナに係る見積りの仮定」)に関して四半期決算開示の考え方を以下のとおり示している。

  1. 前年度の財務諸表にコロナに係る見積りの仮定に関する追加情報を開示している場合で、四半期決算においてその仮定に重要な変更を行ったときは、変更内容を追加情報として記載する。
  2. 前年度の財務諸表にコロナに係る見積りの仮定を開示していないが、四半期決算にて重要性が増し新たに仮定を開示すべき状況になったときは、仮定の内容を追加情報として記載する(他の注記に含めて記載している場合を除く)。
  3. 前年度の財務諸表にコロナに係る見積りの仮定の開示をしている場合で、四半期決算にて当該仮定に重要な変更を行っていないが、重要な変更がないことが有用な情報となる場合はその旨の追加情報の開示を行うことが望ましい。

あずさ監査法人の関連資料: ポイント解説速報(2020年6月29日発行)

 

(2)金融庁、「四半期報告書における新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」を公表

金融庁は2020年7月1日、「四半期報告書における新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」(以下、「本文書」)を公表した。

本文書では、四半期報告書において、今般の感染症の影響に関する企業情報を適時適切に開示することは、投資家の投資判断にとって重要であるとの考えのもと、企業会計基準委員会が公表した議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症に関する開示の考え方」(2020年4月10日、5月11日追補、6月26日更新)(前述の「(1) ASBJ、議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」を更新(四半期決算開示の考え方)」を参照)を踏まえた開示上の留意点等が示されている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年7月6日発行)

 

日本基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(日本基準)

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2. 国際基準

会計基準等の公表(国際会計基準審議会(IASB)、IFRS解釈指針委員会)

【最終基準】
IASB、「IFRS第17号『保険契約』の修正」を公表

IASBは2020年6月25日、IFRS第17号「保険契約」の内容を一部修正した「保険契約の修正」を最終化し公表した(以下、「本基準書」)。本基準書は、2019年6月に公表された公開草案(ED/2019/4)「保険契約の修正」について寄せられたコメントを踏まえ、審議を重ねた結果として公表されたものであり、主な修正論点の内容は次のとおりである。

(1)発効日の延期
IFRS第17号の発効日を2年遅らせ、2023年1月1日以降に開始する事業年度からとする。

(2)IFRS第17号の適用範囲に関する追加的な例外措置
保険契約の定義を満たす貸付契約やクレジットカード契約等につき、従来一般的に保険会計が適用されていなかったことに鑑み、特定の要件を満たす場合についてIFRS第17号の適用範囲についての例外的な措置を設けることとした。

(3)更新契約に係る保険獲得キャッシュ・フロー
保険獲得キャッシュ・フローを関連する更新後の契約にも配分し、更新後の契約を認識するまで保険獲得キャッシュ・フローを資産として認識する。また、更新後の契約を認識するまで当該資産の回収可能性を評価しなければならない。

(4)保険収益の認識
一般的な測定モデルにおける保険収益の認識(契約上のサービス・マージン(CSM)の各報告期間への配分)は、保険カバーだけでなく、保険契約が提供する投資リターン・サービスも含めて考慮する。

その他、リスク軽減オプションの拡充、再保険契約における会計上のミスマッチの低減、移行措置に関する要求事項の緩和などの論点について、新たな追加修正が行われている。

あずさ監査法人の関連資料:ポイント解説速報(2020年7月1日発行)

 

IFRSについての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(IFRS)

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3. 修正国際基準

新たな基準・公開草案等の公表として、今月、特にお知らせする事項はありません。

修正国際基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(修正国際基準)

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4. 米国基準

会計基準等の公表(米国財務会計基準審議会(FASB))

【最終基準(会計基準更新書(Accounting Standards Update; ASU))】
ASU第2020-05号「顧客との契約から生じる収益(トピック606)及びリース(トピック842) - 特定の企業の適用日」の公表(2020年6月3日 FASB)

本ASUは、新型コロナウイルス感染症拡大により影響を受ける企業の負担を軽減するため、特定の企業について「顧客との契約から生じる収益」(トピック606)及び「リース」(トピック842)の適用時期を1年延期することを規定している。

(1) トピック606

本ASUにより、2020年6月3日現在で財務諸表をまだ公表していない(または財務諸表が公表可能な状態になっていない)一定の企業について、トピック606の適用日が1年延期されるが、延期前の適用日を選択することも認められる。なお、公開の営利企業等で、すでにトピック606を適用している企業については、本ASUの対象ではない。

フランチャイズ企業(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)の加盟時に受け取る一時金(加盟金)に係る収益の認識時期について、FASBは今後論点検討を開始することを決定している。これを受けて、当初のASU案は非公開営利企業のフランチャイザーについて新収益基準の強制適用の1年延期を提案するものであったが、公開草案に寄せられたコメントを踏まえCOVID-19の影響を勘案し、対象を拡大したものである。
 

(2) トピック842

非公開企業及び公開の非営利企業のうち財務諸表をまだ公開していない企業について、新リース基準の適用時期が延期された。早期適用は引き続き認められる。

  公開の営利企業および特定の公開非営利企業(まだ財務諸表を公表していないものを除く)等(変更なし)
公開の非営利企業で、財務諸表をまだ公表していない企業(本ASU)
非公開企業
(本ASU)
トピック842の適用開始時期
2018年12月16日以降開始する事業年度(同期間に含まれる期中期間)
2019年12月16日以降開始する事業年度(同期間に含まれる期中期間) 2021年12月16日以降開始する事業年度(期中期間については2022年12月16日以降開始する事業年度)


あずさ監査法人の関連資料:Defining issues(英語PDF)

 

米国基準についての詳細な情報、過去情報は
あずさ監査法人のウェブサイト(米国基準)

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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