英国:COVID-19により産業別に明暗が分かれる

KPMG英国のエコノミストは、COVID-19による英国の都市封鎖とソーシャルディスタンスが各産業の経済に与える影響を算定した。

KPMG英国のエコノミストは、COVID-19による英国の都市封鎖とソーシャルディスタンスが各産業の経済に与える影響を算定した。

主なポイント

  • 第1四半期のGDPデータによって都市封鎖が輸送業、およびホスピタリティ業界に甚大な影響を与えたことが示された
  • 今年の産業別の経済的見通しは、都市封鎖とソーシャルディスタンスが鍵となることが明らかになった
  • 最も影響を受けた10セクターのうち7セクターは、英国産業における生産性が平均よりも低く、英国産業別の明暗を際立たせている

3月の経済データから、都市封鎖が英国経済に与えた影響を垣間見ることができます。鉄道、水上輸送、特に航空輸送は急激に落ち込みましたが、輸送製造業も同様に縮小しました。ホテルはさらに深刻な打撃を受け、バーやレストランの2倍も落ち込みました。

今後の産業別のパフォーマンスは、今年の残り期間において大きく変化すると予想されます。都市封鎖中に機能できない産業や、封鎖解除後のソーシャルディスタンス対策による影響が大きいセクターが最も大きなリスクにさらされています。これらにはホスピタリティ業界と旅行業界が含まれます。分析によると、今年は40~50%も縮小する可能性があります。レストランは7月に営業の再開が許可されるかもしれませんが、話をした経営者のうち何人かは、ソーシャルディスタンスのルールにより、既に利益の薄いマージンがさらに目減りするため、営業を再開するのは現実的ではないと言っています。

私たちの分析では、航空輸送は今年、他の輸送部門と比べて不釣り合いなほど影響を受けていることがわかりました(鉄道輸送の35%に対して45%の縮小)。これは、国内旅行と海外旅行の回復の可能性の違いを反映しています。興味深いことに、飛行機の移動量の減少率が高く、回復が遅いため、輸送製造業にも異常値が生じています。典型的な製造パターンを反映したものになるとは考えられず、平均14%であったものが2020年には45%減少しています。輸送機の生産には航空機生産がかなりのシェアが含まれているため、需要の落ち込みにより大きな打撃を受ける可能性があります。

産業別のパフォーマンス2020

産業別のパフォーマンス2020の図表は、Chief Economist's note: The UK's deepening sectoral divide(原文ページ)よりご覧ください。

食品製造業は、COVID-19の影響が最も少ない産業部門の1つですが、外食市場の一部と捉えているため、今後大きく停滞すると予想されます。繊維および木材、製紙製造業は、サプライチェーンの問題と需要の減少、衣料品小売業者は、記録的な余剰在庫とオフィス用品の需要の急落のため、ともに約20%の減少が見込まれます。オンライン小売は急速な成長を遂げるはずですが、卸売と小売の取引については、今年は約12%縮小する可能性があります。建設業においても、同様の生産量の減少が見られるでしょう。

会計、法務、マネジメントコンサルティングサービスを含むプロフェッショナルサービス業は、在宅勤務等に適応しているため、都市封鎖による最悪の影響からは守られ、経済平均を下回って最大で10%減少することが予想されます。英国経済の最大の産業の1つである銀行は、今年は約3%の緩やかな下落を見るでしょう。

いくつかの産業は、パンデミックにより引き起こされた需要の変化による恩恵を受ける立場にあります。 IT通信、倉庫、物流、放送、通信、郵便サービスなど、在宅インフラのサポートや、よりローカライズされた生産を支える業界では、2020年には最大で10%の成長が見込まれます。今回の危機は医薬品業界にも商機をもたらしました。他の製造分野とは異なり、生産高は今年4%増加する可能性があります。

COVID-19の危機が英国の生産性全体にどのように影響するか明らかにするにはまだ早いですが、サプライチェーンの再構築による柔軟性の向上や、ジャストインタイム生産方式といわれる手法の削減など、「ニューノーマル」といわれるビジネスの現実の側面が、生産性を低下させることは間違いないでしょう。しかし、少なくとも短期的には生産性の高い産業においては、今回の危機で最悪の打撃を受けた産業に比べ、比較的状況は良いと言えるでしょう。

日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

KPMG英国では、英国と世界経済に関する最新情報を定期的に配信しています。
以下のリンクよりレポートがダウンロードいただけます。

UK Economic Outlook

お問合せ