IFRS第17号 - 基準書発行前の最終調整

2020年半ばのIFRS第17号基準書発行を前に、IASBはいくつかの論点整理(Sweep Issue)を最終化しました。

2020年半ばのIFRS第17号基準書発行を前に、IASBはいくつかの論点整理(Sweep Issue)を最終化しました。

ポイント

  • 変動手数料アプローチ - OCIオプションとリスク軽減オプションの同時適用
  • 再保険 - 不利な元受契約にかかる損失の回収
  • 保険収益 - 法人所得税への対価
  • 残存カバーに係る負債と発生保険金に係る負債の定義
  • 保険契約グループが認識される前に認識された資産及び負債
  • 予想されていない投資要素支払の発生・未発生の取扱い

国際会計基準審議会(以下、IASBという)は5月の会議において、IFRS第17号「保険契約」の最終基準書発行へ向け6つの論点整理(Sweep Issue)について議論した。 会議のアジェンダペーパーにおいてはリスク軽減オプションの問題について詳細な言及がされているが、その他の5論点についてはIFRS第17号の修正案に対する文言の微調整となる。

IASBは残された最後のいくつかの問題を解決しており、6月末までにIFRS第17号の修正版を発行する予定である。保険会社は、IFRS第17号の修正案がビジネスに与える影響及び2023年の適用へ向けた準備状況の評価を微調整する必要がある。

Mary Trussell
KPMG’s Global Lead, Insurance accounting change

変動手数料アプローチ - OCIオプションとリスク軽減オプションの同時適用

変動手数料アプローチ(VFA)を適用して測定された保険契約グループについて、企業が基礎となる項目を保有している状況において、保険金融収益・費用を純損益とその他の包括利益(OCI)に分解するオプションを適用し、さらに同時にリスク軽減オプションを適用している場合、会計上のミスマッチが生じる可能性がある。これは、両方のオプションが各々異なる方法で純損益に認識される保険金融収益・費用の金額を定めており、同時に適用してしまうと、少なくともどちらか一つのオプションにおいて、それが意図している会計上のミスマッチ低減という目的が達成されないからである。

この会計上のミスマッチを回避するために、IFRS 第17号は修正され、VFAにより測定される保険契約にかかる保険金融収益・費用のうち、リスク軽減オプションの適用から生じる金額については、保険金融収益・費用を純損益とOCIに分解する際に適用される現在の要求事項は適用されないことになる。代わりに、リスク軽減オプションを適用する際に、どのように保険金融収益・費用の金額を表示するかについての新しい要求事項が導入されることになる。

  • 公正価値の変動が純損益に計上される金融商品によりリスクが軽減される保険負債の変動は、純損益に表示する。
  • 保有する再保険契約によってリスクが軽減される保険負債の変動は、保有する再保険契約に対して選択したのと同様にOCIオプションの選択を適用することによって表示する。

再保険 - 不利な元受契約にかかる損失の回収

IFRS第17号は、元受契約の当初認識時に発生する損失に対して、保有する再保険契約から回収される金額を認識することを要求するように修正されるが、場合によっては、これらの再保険契約が、不利な保険契約グループの損失のうち、すべてではなく一部のみをカバーすることがある。保険契約グループが1つの会計処理単位であることを前提とすると、IFRS第17号では、不利な契約にかかる当初認識時の損失及び事後測定を契約単位で追跡することは要求していない。

これらを踏まえて、IFRS第17号は企業に対して、再保険契約に対応する保険契約グループの損失部分を決定するために、規則的かつ合理的な配分方法を使用することを要求するように修正される。

保険収益 - 法人所得税への対価

IFRS第17号は、保険契約者から支払われる対価で法人所得税に関連するもののうち、保険契約者に請求可能であることが保険契約の約款において明確なものについては保険収益として認識することが要求されるように修正される。これは、当該税額に関連した金額を履行キャッシュ・フローに含めるとした別の修正に対応するものである。

残存カバーに係る負債と発生保険金に係る負債の定義

残存カバーに係る負債と発生保険金に係る負債の定義ついて、企業が発行した保険契約から生じるすべての義務が含まれることを明確にするために修正される。

保険契約グループが認識される前に認識された資産及び負債

IFRS第17号は、保険契約グループが認識される前に支払われる保険獲得キャッシュ・フローに関して、当初認識時の契約上のサービスマージン(CSM)で考慮されるように、特定の要求事項を含んでいる。一方で、IFRS第17号は、他の種類のキャッシュ・フロー(例:保険契約グループが認識される前に支払われた保険料)や、キャッシュ・フローが生じてなくとも別のIFRS基準書の下で以前に認識された資産と負債(例:ブローカーから請求書を受領した時に認識される負債)に関する特定の要求事項を含んでいない。

IFRS第17号は、企業に以下を要求するように修正される。

  • 保険契約グループのCSMの当初認識において、グループが認識される前に支払または受領された当該グループに関連するキャッシュ・フローについて、以前に認識された資産または負債の認識中止の影響を含める。
  • 実際に支払または受領された保険獲得キャッシュ・フローだけでなく、関連する保険契約グループが認識される前に、別のIFRS基準を適用することによって負債が認識された保険獲得キャッシュ・フロー、例えばIFRS第9号「金融商品」に基づき発生した保険獲得キャッシュ・フローの支払のための金融負債が認識された保険獲得キャッシュ・フローを資産として認識する。

予想されていない投資要素支払の発生・未発生の取扱い

IASBは、関係者から受け取ったフィードバックに基づき、予想されていない投資要素支払の発生・未発生につき会計処理が完全には明確でなかったと考えている。

当初提案されていた修正案では、投資要素が貨幣の時間価値によって影響を受けること、金融リスク及び報告期間期初と予想されていない投資要素支払の発生・未発生時点の間の貨幣の時間価値の変動に影響を受ける可能性がある点について対処することを意図していた。IASBはIFRS第17号の軽微な修正により当該意図を明確化した。CSMに対して行われるこの調整には、予想される投資要素支払に係る保険金融収益・費用は含まれないことになる。

次のステップ

IASBは2020年中頃の最終基準発行へ向けた途上にある。保険会社は、提案された修正案の評価を継続し、修正された基準書が、自社のビジネス及び2023年の適用へ向けた計画に与える影響を理解する必要がある。

英語コンテンツ(原文)

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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