COVID-19が最も重要なトレンドを加速

過去数ヵ月間で、リテール業界は前例のない不確実性、複雑性および変化を経験しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、成功するリテール企業もあれば、存続の危機に陥る企業もあるでしょう。興味深いことに、COVID-19は、リテール業界ですでに起こっていたビジネスモデルの進化、目的の重視、妥協のないコスト削減、消費者の力の増大といった主要なトレンドに拍車をかけています。

KPMGのリテール業界の専門家によると、これらのトレンドは、コロナ禍によってもたらされたリテール市場における世界的な変化、新しい現実(ニューリアリティ)に、リテール業界がいかに備えるかを示しています。

ニューリアリティに備えてリテール業界のエグゼクティブがビジネスを再構築する際に注視すべき4つの重要なトレンド

トレンド 1 - ビジネスモデルの進化

店舗ベースのリテール活動が全盛期を過ぎたことは、COVID-19以前に明らかになっていました。実店舗が一時的に成長を取り戻すことは確かですが、実店舗のみで成長を維持できる時代が終わったことは明白です。既存のオンライン・チャネルまたは宅配チャネルをもたない多くのリテール企業(特に小規模・中規模企業)は、プラットフォーム企業に注目しています。自社の将来のビジネスモデルを再考した上で、リテール企業は、1)プラットフォームになる、2)プラットフォームを活用する、3)従来通りの事業を継続する、という選択を迫られます。

トレンド 2 - 目的がより重要に

COVID-19による混乱の初期から、各国の政府及び企業の大半は、利益よりも人を優先することを明確にしています。企業は政府の対応要請に応じるために自社のビジネスモデルの改変を進めています。今般の混乱は、既に進行していたトレンドを加速させたにすぎません。例えば、2018年後半に発表されたエデルマン社の消費者意識調査によると、全世界の消費者の3分の2近くが、企業の社会的・政治的問題に対する姿勢によって購買行動を判断すると回答しました。※1

企業の業績は、目的の重要性をさらに強調し、人々の生活にプラスの影響を示した企業は、影響が認識されていない企業の2.5倍の成長を達成していました(過去12か月間)。優れたリテール企業は、今般の危機を利用して、自社が目的を語るだけでなく実行する企業であることを示します。
 

※1 ビリーフ(信念)・ドリブンな顧客購買行動が今や世界の3分の2を占める

トレンド 3 - 事業にかかるコストの再考

ほとんどのリテール企業は、利益率を改善し事業を再構築するには従来型のコスト削減策ではもはや不十分であると認識しています。COVID-19 対応の直接的な影響の中で積極的なコスト抑制戦略を展開した後であっても、今後数年間で事業を利益ある成長に回帰させるためにさらなる努力が必要なことは、ほとんどのリテール企業が認識しています。リテール企業は単にコストを削減して価格を引き上げるのではなく、既存の資産から価値を創出する新たな方法を模索し始めると予想されます。

トレンド 4 - 顧客の選択を詳細に分析する

今日の環境では、顧客は選択肢が豊富であることよりも、商品が入手できることをより重視するようになっています。これにより、多くのリテール企業がオペレーションの方法を変更する可能性があります。実際、多くの国がロックダウンを実施し日用品が品薄になる中、多くの日用品販売企業はより少数の需要の高い商品に焦点を絞り、「必要最小限の範囲」を生産する方法を模索し始めています。そうした中でサプライチェーンの効率性および運転資本指標は大きく改善し、またこれによる顧客の苦情はほぼ発生していません。最終的には、選択肢を減らす方向へ移行することが、サプライチェーンの効率化、コストの低減および顧客満足度の向上につながると考えられます。

英語コンテンツ(原文)

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