COVID-19による業務遂行の変革 - 未来は想定よりも早くやってくる

COVID-19による業務遂行の変革 - 未来は想定よりも早くやってくる

保険会社は明らかにデジタルトランスフォーメーションに進み始めている。皮肉にも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大規模な転換の迅速な対応を可能にしている。保険業界全体としては、デジタルの活用や柔軟な作業形態の点で銀行など他の業界に後れを取っていた。この危機は保険業界の対応速度を著しく早め一歩前進させている。

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リモートワーク移行後に保険会社が直面する業務遂行上の成功と課題

COVID-19の世界中の蔓延により、我々はリモートワークへと移行している。空き部屋やキッチンテーブルなどで在宅勤務を行い、ビデオ会議によって同僚たちとつながり、様々なリモートワークのやり方を学んでいる。他の業界同様保険業界もその真っただ中にあり、学び適応し、徐々に広げているが比較的うまくいっているようだ。

これまでも多くの組織は時間をかけてリモートワークを活用してきたが、少なからず何らかの制限が存在していた。今や企業の全業務が同時にリモートワークによって行われている。実際、重大な機能停止は発生しておらず、うまくいっていると言えよう。ただ改善の余地が全くないというわけではない。保険会社は業務を維持し続けているが、顧客の待ち時間が長くなり始めている。

保険会社は明らかにデジタルトランスフォーメーションに進み始めている。皮肉にもCOVID-19が大規模な転換の迅速な対応を可能にしたのである。保険業界全体としては、デジタルの活用や柔軟な作業形態の点で銀行など他の業界に後れを取っていた。この危機は保険業界の対応速度を著しく早め一歩前進させている。

もはや過去には戻れない

保険会社を含め全ての業界は、もはや過去には戻れない。COVID-19によって見えてきたのは「ニューノーマル」と呼ぶべき新たな現実である。危機の終息はいまだ読めないが、終息後はこれまでと異なる業務オペレーションモデル、価値、従業員の期待と体験などを伴う新しい現実の中にいるだろう。

この状況が12-16週間で通常業務の状態に戻るとは考えてはいけない。パンデミックがどれだけの期間、どれだけ深刻な結果をもたらすかは誰にもわからない。世界中の地域でいつからどの程度都市閉鎖が緩和されていくのかもわからない。少なくとも世界中の一定の地域では、リモートワークが数週間から数ヵ月におよぶ期間強制されることになるだろう。また、業務と従業員が抱える新しい業務スタイルは今この時リアルタイムで進行しており、この変化は作業モデルの持続的な変革を推進している。ある同僚が私に「タイムマシンが未来に連れて行ってくれたようだ」と言った。

COVID-19は単に衝撃的だっただけということではない。将来、他のパンデミックや経済危機、主要産業の崩壊などが起こり得る可能性はゼロでないことを改めて我々に知らしめた。保険会社は確実にかつ素早く将来に対して準備を始めなければならない。

現在の具体的な課題

多くの保険会社はリモートワークをうまく活用しているが、いくつかの点において他業種には見られない課題が存在する。例えば次のようなものである。

  • 問合わせが増えるコールセンターの負荷
  • セールスサポートやマーケティングなど伝統的な対面業務へのテクノロジー導入スピードアップ
  • 契約内容変更
  • 請求処理
  • 複雑な引受け(以前に確定した専門領域のリスクの長期引受け)
  • 複雑な査定および保険金請求処理
  • 再保険の報告
  • 決済処理と請求処理(システムへのアクセスと複雑さによるもの)
  • 財務分野のリソース
  • オフショアセンター

教訓(5つのCから)

保険会社はこうした課題にどのように対応していくべきだろうか。KPMGのタレントリスクフレームワークを通してみると、危機および重大な変更について5つのCから解決のヒントが見えてくる。

  • 容量(Capacity):適切な場所に十分な要員がいるか、そして必要なものが揃っているか?
  • 対応能力(Capability):持続可能な観点で効率的に業務を行うために必要な対応能力・スキルセットは何か?
  • 連携(Connectivity):新しい環境での業務遂行、モチベーション維持、連結性維持のためにチームはどのようにつながっているか?
  • コスト(Cost):業務継続を確実にするための業務チームにはどの程度のコストがかかるか?
  • コンプライアンス(Compliance):規制当局は長期間のリモートワークに関して何らか示しているか?

当初の予想との違いは、連携や技術ではなく従業員や管理スキルに関するギャップが大きかったことである。技術に関する詳細は別途説明する予定であるが、多くの保険会社がリモート接続に移行する中で帯域に関する課題が多くみられた。

機動的な分散モデルの組織

難しい課題は、遠隔地のチーム配置や対応能力の管理である。こうした課題は旅行および医療補償の保険金請求と顧客問い合わせ対応においてみられるが、自動車保険のような領域では特段みられない。迅速な対応と行動など柔軟性が必要とされ、適宜シフト可能な対応チームが必要となる。

現在の不確実な環境は柔軟性と機能的な組織の分散モデルを作り出している。保険会社の組織は伝統的な構成が多く、チームメンバーは業務を遂行するために同じ場所に出勤する必要があると思われてきた。COVID-19から学んだ教訓は、自由にチームを立ち上げ様々な環境で業務を遂行しても生産的であり得るということだ。また、要求の変化に柔軟に対応するために、自己管理可能で効率的に連携できる小さな作業グループに業務を分解する必要がある。結果として、従業員間の活発なコミュニケーションにつながるだろう。

一方、対面業務の優れた利点をリモートワークにおいて再現しようと苦心しているのも事実である。多くの顧客は対面で共に課題に取り組むことで、創造的かつ自発的となり、アイデアがどんどんと膨らんでいくと話している。仮想環境で同様の状態を作ることはとても難しい。解決には、さらに多くの経験と探求が必要となるだろう。

分散モデルが必要とされるもう1つの分野はインドのようなオフショアセンターの利用である。オフショアセンターの機能性は、これまでに対応してきた緊急の業務上の課題、とくに都市封鎖環境で確認されている。今後、保険会社はオペレーションリスクを最小化するよう、多くの拠点間でオフショアセンターに業務分散する動きが増えるだろう。

重要なリモート管理上の課題

現状は、遠隔地のチームを効率的に管理する能力が必要不可欠となる。チームメンバーは優先順位を理解しているか? 必要なツールをもっているか? プロセスや方策は作業・手順をサポートしているか? 就業時間の組み合わせは適切か? など遠隔地での業務遂行を滞りなく進めるリモート管理が難しいのは確かである。組織は、マネージャーやチームリーダが最大限チームをサポートできるよう支援する必要がある。

物理的にその場に存在しないチームを管理すること、メンバーを鼓舞し支援されているという安心感を与えること、創造性を最大限に発揮してもらえるようにすること、この異常でストレスフルな環境においても個々の精神面と感情面を健やかに保つこと、ゴールを設定すること、パフォーマンスを評価すること、これらについて残念ながらCOVID-19蔓延下において現実的なロードマップは存在していない。特にこの流動的な状況下で目標とパフォーマンスの評価は困難である。今年の給与と報奨の決定はとても難しくなるだろう。

コスト管理とコンプライアンスの徹底

コストに関しては、遠隔地での業務推進体制と通常業務体制とを比較する必要がある。いくつかの業務では、無給休暇、一部有給休暇や一時帰休の実施方法を検討または導入済みであるが、これらは簡単ではない。また、将来的に保険会社においてオフィスワークとリモートワークが半々となる広範囲な組織分割が起こるかもしれない。従業員の一部は週1回のペースでオフィスに来社、コールセンターのスタッフは週3回の勤務といった具合になるかもしれない。これは大きな通勤費の削減をもたらすが、給与との調整を考える必要がある。また別の大きなコストは不動産コストである。全ての会社についていえることだが、危機の後オフィス戦略を見直しスペースを縮小することになるだろう。

さらに、リモートワークではコンプライアンス上の課題がある。従業員に許可されたコミュニケーションと伝送方法の利用が徹底される必要がある。規制また業務上のコンプライアンスは重要なテーマであり、電子承認処理が導入され継続的にコンプライアンス要件に適合していることを確認する必要がある。また、従業員がソーシャルメディアポリシーを遵守し、広く普及しているフィッシング詐欺も意識しなければならない。従業員は3ラインディフェンスモデルにおいて第1線(防御の最前線)であり、些細な過ちが組織に重大な影響を及ぼす。この考え方は外注先、外部契約先の従業員についても適用される。どのようにコミュニケーションしているか、新しいプロセス・方式について明確か、誰が新しい作業連携について監視する責任をもっているのか明確にする必要がある。

今、未来に向かう最適の機会である

今、保険業界は大きな転換点にいる。保険会社は課題を確実につかみ柔軟な業務方法を採用することで新しい未来に進むことができる。デジタル化された業務フローに十分な投資をしない、また最適な新プロセスとツールを採用しない保険会社は、危機の後大きな遅れをとるだろう。

このように、今通常は何年もかかる課題を数週間・数か月の短期で解決することが求められてきている。これはCOVID-19が課した脅威であり好機でもある。


本稿はKPMG Global Head of InsuranceであるLaura Hayの「The future comes early: Insurance workforce transformation through COVID-19」をKPMGジャパン保険チームにて翻訳したものである。

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