世界のeスポーツ事情:米国
世界最大のeスポーツ市場である米国について、リアルスポーツとの類似点や大学での取組みを紹介し、eスポーツ隆盛の背景を考察する。
世界最大のeスポーツ市場である米国について、リアルスポーツとの類似点や大学での取組みを紹介し、eスポーツ隆盛の背景を考察する。
今や世界最大の市場規模を誇るeスポーツ先進国、米国。その一番の特徴はライオットゲームズやブリザード・エンターテイメントなどの世界的なゲーム会社(パブリッシャー)がいくつも存在していることである。eスポーツで「ティア1」(最上位層の意味)と呼ばれるゲームタイトルを見ても、「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(CS:GO)」や「ドータ・ツー(Dota2)」など大半が米国製である。
米国でeスポーツに本格的に火がついたのは2009年に「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」が発売になってからで、その後CS:GOやDota2などの大人気タイトルが相次いだ。米国の2018年のeスポーツの市場規模は約3億ドルで、世界の30%以上を占める。
eスポーツはスポーツなのかという議論があるものの、興行としてはリアルスポーツと類似点が多く、特に米国ではリアルスポーツと同じシステムを踏襲するリーグやチームがここ数年で相次いで生まれている。
例えば、オーバーウォッチリーグは都市ベースのチームを各オーナーが所有し、昇格や降格はなく、レギュラーシーズンとプレーオフ形式で進行する。選手には最低年俸が定められ、チームには成績に基づいた賞金と収益を分配する。リーグは拡大を続けており、3シーズン目を迎える2020年は3大陸19都市からチームが参加し、賞金総額は500万ドルになると発表されている。
eスポーツに力を入れる大学も増えている。カリフォルニア大学アーバイン校では大手パブリッシャーであるライオットゲームズの後援でLoL奨励プログラムを2016年に開始した。校内に80台のゲーム用パソコンを用意。毎年10人の枠を設け、実技テストを通して選考する。まさにリアルスポーツと同じ競争環境があり、大学を介してプロへの道が開かれており、スポーツと同じプロセスが出来上がりつつある。
米国のeスポーツ市場は2022年には約6億5000万ドルに拡大する見込みだ。また、大人気タイトルのLoLのリーグの視聴者数は既にプロバスケットボールNBAや大リーグ、アイスホッケーNHLを超えているという統計もあり、米国の主要スポーツの一角を担うようになるのも夢ではないだろう。
eスポーツタイトルの視聴時間順位
順位 | ゲームタイトル | ゲーム会社 | 視聴時間 |
---|---|---|---|
1 | リーグ・オブ・レジェンド | 米ライオットゲームズ | 5150万時間 |
2 | カウンターストライク:グローバルオフェンシブ | 米バルブ・コーポレーション | 1660万時間 |
3 | ドータ・ツー | 米バルブ・コーポレーション | 1060万時間 |
4 | ハースストーン | 米ブリザード・エンターテイメント | 360万時間 |
5 | ロケットリーグ | 米サイオニクス | 350万時間 |
(注)ツイッターとユーチューブの視聴時間
(出所)NewZoo「Game Streaming Tracker」を基にKPMG作成
執筆者
KPMGコンサルティング株式会社
コンサルタント Greene Cody(グリーン コーディー)
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日経産業新聞 2020年2月13日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。