eスポーツはスポーツと言えるのか? - eスポーツ市場の理解を深める

ステークホルダー、選手・チームの在り方、市場規模・収益構造といったビジネス観点からeスポーツと一般のスポーツの構造をひもとく。

ステークホルダー、選手・チームの在り方、市場規模・収益構造といったビジネス観点からeスポーツと一般のスポーツの構造をひもとく。

eスポーツはスポーツと言えるのか。世間では様々な議論があるが、今回はそうした論点は避けて、主に「業界ステークホルダー(利害関係者)」「選手・チームの在り方」「市場規模・収益構造」といったビジネス観点から両者の類似性を紐解き、eスポーツ市場の理解を深めたい。

まずは業界ステークホルダーについて。「する・見る・支える」を基本とするリアルスポーツと同様、「プレーヤー・オーディエンス・オペレーター」の大きく3つに整理でき、観戦ビジネスという観点でスポーツと同じ構造になっている。eスポーツチームや選手が業界のプレーヤーで、大会の開催や支援を行うゲーム会社(パブリッシャー)や興行会社などのオペレーターが存在し、オーディエンスに試合というコンテンツが届けられる。

トップのプロeスポーツ選手は1日8~10時間練習する。この努力の結果として試合が面白くなりコンテンツの魅力が増す。その選手たちが練習・試合に集中できる環境を用意する存在がチームであり、サッカーや野球におけるプロ球団が果たす役割と変わらない。

一方、市場規模・収益構造はどうか。こちらは欧州サッカープレミアリーグや米国メジャーリーグなどを引き合いに出すとその差が浮き彫りになる。eスポーツ市場は成長過程にあり、世界的なメジャースポーツと比較するとまだ規模は小さい。
その理由は収益の内訳からも読み取れる。例えばプレミアリーグでは放映権収入が全体の約59%を占め、年間3750億円の放映権料は各チームに分配される。日本でもDAZN(ダゾーン)とJリーグとの配信契約が話題になった。しかし、eスポーツ市場での放映権収入は全体の約20%にとどまり、十分な放映権料を獲得できているリーグは少ない。ファンの視聴を持続的に確保できるリーグや大会の設計が今後の課題の1つだろう。

業界の将来展望はどうか。eスポーツ世界市場の年間成長率は22.3%であり、どのスポーツよりも高い。大リーグでは2017年、イチロー氏が所属していたマイアミ・マーリンズをヤンキース元主将のジーター氏が約1356億円で買収した。現在、世界最大手eスポーツチーム「クラウド9」の市場価値は設立6年目で約300億円である。大リーグなどと比べるとまだまだ伸び代はあるはずだ。

eスポーツの3大構成要員

プレーヤー 選手、チーム、コーチ、アナリスト
オペレーター ゲーム会社(パブリッシャー)、スポンサー、協会、大会主催者、配信プラットフォーム
オーディエンス 大会来場者、動画視聴者

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日経産業新聞 2020年2月20日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
コンサルタント 田中 良樹

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