eスポーツから生まれた新しい仕事やキャリアの在り方とは

選手やコーチといったeスポーツの「プレーヤー」に焦点を当て、新しい仕事やキャリアの在り方、関連ビジネスについて

選手やコーチといったeスポーツの「プレーヤー」に焦点を当て、新しい仕事やキャリアの在り方、関連ビジネスについて

eスポーツ産業の裾野は年々広がっており、様々な企業・組織が市場に参入している。観光分野ではeスポーツ大会観戦ツアーがファンから人気を博し、医療分野では選手向け目薬も登場している。他にもeスポーツタウン構想や経済特区など様々な事例があるが、今回は主要ステークホルダー(利害関係者)の中でも特にコンテンツの源である「プレーヤー」に焦点を当て、彼らが活動する中で生まれた新しい仕事やキャリアの在り方、及びその関連ビジネスについて紹介していきたい。

「eスポーツ選手」とは大会に出場して賞金や報酬を得る職業としてのゲーマーを指す。市場の急成長や大会賞金の増額を背景に、海外トップ層は年棒数億円を手にするケースも珍しくない。その選手たちをマネジメントする存在がeスポーツチームである。
チームは選手に給与を支払い、生活を金銭面で担保する。当然、選手への技術的な支援もチームの重要な役目であり、海外トップチームの多くは専属コーチやアナリストを複数抱え、選手のサポートに当たっている。コーチは選手に寄り添い、技術的な指導を行うと共に、モチベーション(やる気)を管理し、勝利に向けた包括的なサポートを担う。アナリストは選手のクセ・行動パターン・テクニック・戦術的傾向などをより定量的に分析して、チームにフィードバックすることで勝利に貢献している。
選手やコーチ、アナリストのキャリアは互いに連動しており、またそれぞれの経験を生かして大会の実況者や解説者として活躍する道もある。試合を面白く観戦する上で実況・解説は必要不可欠であり、こちらも今後は需要が拡大していくと予想される。

これらのプレーヤーに関連する新しい仕事やキャリアは、様々な企業・組織にとっても関連ビジネスに参入する好機につながる。例えば、選手やチームの支援ビジネスは既に多くの事業化事例が国内外で出てきており、マイクロソフトが世界的人気チームの「クラウド9」と共同でデータアナリティクス(解析)ツールを開発したほか、日本でも森永製菓が「トレーニングラボfor eスポーツ」を提供している。
また、キャリア形成の観点でも様々な動きが見られる。米国では大学でeスポーツプログラムの提供が早くも2014年より登場し、日本でも複数の専門学校がeスポーツ専攻を設置した。コーチのマッチングビジネスといったサービスも国内外で始まっている。こうした選手やチーム関連ビジネスは今後ますます裾野が広がっていく注目の領域だ。

 

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日経産業新聞 2020年2月25日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
コンサルタント 田中 良樹

裾野広がるeスポーツ

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