eスポーツを取り巻く直接産業と周辺産業

ゲーム業界以外にも大きなビジネスチャンスが見込めるeスポーツのエコシステムである「直接産業」と「周辺産業」を紹介する。

ゲーム業界以外にも大きなビジネスチャンスが見込めるeスポーツのエコシステムである「直接産業」と「周辺産業」を紹介する。

eスポーツの登場でゲーム産業に参入するハードルが下がり、その方法も多彩になった。これは自動車業界で起きている変化に似ている。これまで自動車業界では大手メーカーによる製造が主軸だったが、デジタル時代の到来でウーバーのような新興企業が参入し、業界に大きな変化を起こしている。ゲーム産業でも同じ現象が起きており、もともとゲーム産業とは関わりのなかった会社に大きなビジネスチャンスが訪れている。

業界団体の日本eスポーツ連合(JeSU)によるとeスポーツ産業のエコシステム(生態系)は、eスポーツの「直接産業」とその他の「周辺産業」の大きく2つに分けられる。
直接産業は、大会・チーム運営などに伴うスポンサー・広告、放送・配信権、グッズ・チケット、ゲームライセンスに関わるビジネスである。
これに対して、周辺産業はeスポーツに関わる周辺ビジネスのことを言う。例えば、ゲーム用機器、ゲーム用施設、大会会場と運営ビジネス、オンライン配信プラットフォームから派生する小売りビジネス、ユーチューバーのような個人放送ビジネス、プロ選手育成やゲームシステム開発者育成のための専門学校のような教育ビジネス、プロ選手の移籍に関わる人材紹介エージェントビジネスなどである。
ゲームコンテンツそのものも、ユーザーの楽しみ方も今後は進化していくため、ハードウエアとソフトウエアに分けて考える必要がある。海外では障害者向けのゲーム機器も製造されており、大きなボタンを備えた米マイクロソフトの「Xbox アダプティブ コントローラー」がその代表例だ。

国によってはeスポーツの賭博が合法なところもある。統合型リゾート(IR)では米ラスベガスのホテル「ルクソール」の「eスポーツアリーナ」などエンターテインメントの1つとしてカジノ施設にeスポーツ施設を取り入れているところもある。

ゲームコンテンツ制作も過去と比べてプロセスが大きく変わってきており、大手ゲーム会社(パブリッシャー)ではない企業にも参入チャンスが来ている。
例えば、1つのゲームタイトルを作るのに大規模な投資と長い期間が必要とされていたが、「ユニティ」などのゲーム開発エンジン(ソフト)が無料提供されたことと、一般公開されたゲームにユーザーが手を入れながらファンのコミュニティーに素早く出して反応に応じて修正するDIY的な制作手法が普及したことで、少ない投資と短い期間でゲーム開発が可能になった。この手法で作られたゲームの代表的な成功例として「フォートナイト」や「リーグ・オブ・レジェンド」が挙げられる。

eスポーツの産業構造

eスポーツの産業構造

出所:JeSUの資料を基にKPMG作成

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日経産業新聞 2020年2月19日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
シニアマネジャー Hyun Baro(ヒョン バロ)

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