eスポーツの競技人口を支える施設ビジネスとは

アリーナ施設、ゲーミングハウス、PCバン等のeスポーツカフェなど、eスポーツの競技人口を支える施設ビジネスについて考察する。

アリーナ施設、ゲーミングハウス、PCバン等のeスポーツカフェなど、eスポーツの競技人口を支える施設ビジネスについて考察する。

eスポーツの周辺産業の中でも特に市場の発展に重要な施設ビジネスについて紹介する。
eスポーツ施設は役割で3つに分類される。まず大会の開催と観戦ができるアリーナ施設である。大規模になると海外では大手ゲーム会社(パブリッシャー)が自社タイトルのPR目的で開設するケースが多く、有名なところでは米ライアットゲームズが手掛けた韓国ソウルの一等地にある「リーグ・オブ・レジェンドパーク」が挙げられる。500人収容できるアリーナに加え、カフェやグッズ販売所なども併設し、入場チケット以外でも収益を上げている。
日本国内では「LFS(ルフス)池袋」をはじめ50~150人前後が収容できる中規模のアリーナが全国各地で続々と登場している。運営主体はeスポーツ専門会社、飲料メーカーなどのサードパーティーが多いのが特徴である。

次に主にプロゲーマーが利用する練習施設としてゲーミングハウスがある。高速インターネット回線、ゲーム用パソコンを完備した不動産物件を指す。不動産会社には空室対策として、生活が厳しいプロゲーマーには安価な値段で借りられるメリットがある。
eスポーツはオンライン上でできるため、練習施設は不要と思われるかもしれないが、仲間と共に練習することでコミュニケーションロスの防止や試行錯誤の高速化、共同生活におけるチームワークの向上などが期待できる。ある有名チームはゲーミングハウスを利用したことによって成績が向上したとも言われている。

最後に一般層が気軽に楽しめるeスポーツカフェである。韓国では「PCバン」と呼ばれ、1時間2000ウォン(日本円で200円程度)でパソコンゲームをプレーできる。韓国や中国では市場黎明(れいめい)期に爆発的にこうした施設が増え、競技人口を押し上げた。韓国ではPCバンがピーク時には全国2万店舗以上あった。セブンイレブンの韓国内の店舗数が約1万店舗と考えると、いかに普及していたかがわかるだろう。
日本では従来、ゲームセンターがこの役割を担ってきた。ただゲームセンターはゲームのジャンルで言うと主に1対1の格闘ゲームを遊ぶ場となっており、世界の人気パソコンゲームのジャンルである複数人がチームに分かれて戦う「マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ(MOBA)」や主人公の視点からゲーム空間で戦う「ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS)」などをプレーできる場にはなっていない。
これらの施設は日本にもでき始めているが、数はまだ少ない。ファンや競技人口を増やすためにも増えることを期待したい。

eスポーツ施設の3分類

施設名 対象 内容
eスポーツアリーナ  大会 大会の開催、観戦用。主に都心部にあり、eスポーツカフェやグッズ店を併設する場合も
ゲーミングハウス  選手 ゲーム用パソコンや高速回線などを完備したゲーマー向け物件。近年はチームが練習施設として活用
eスポーツカフェ  一般  パソコンゲームを気軽に楽しめる施設。韓国・中国では日本円で1時間100~200円程度でプレーできる

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日経産業新聞 2020年2月27日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
マネジャー 岩田 理史

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