eスポーツアナリティクスの目的と活用法

eスポーツから得られるデータをビジネスにつなげるeスポーツアナリティクスについて、その目的や海外での活用例などを紹介する。

eスポーツから得られるデータをビジネスにつなげるeスポーツアナリティクスについて、その目的や海外での活用例などを紹介する。

リアルスポーツでデータアナリティクス(分析)の取組みが進んでいる。サッカーの2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会では、選手の活躍をリアルタイムに分析・可視化する「エレクトロニック・パフォーマンス&トラッキング・システム(EPTS)」が導入され話題となった。フィールドに設置したセンサーから送られてくるデータをチーム内のデータアナリストが同システムを用いてリアルタイムに分析し、監督の意思決定を支援した。

しかし、現実空間で繰り広げられるスポーツにデジタル分析技術を適応するのは容易ではない。現実の情報を正確にデータへ変換するには、選手の行動を邪魔しない範囲でセンサーを設置することが必要で、センサーの精度も状況と予算によって大きく変わるからだ。

その点、eスポーツはそもそもデジタル空間で行われることから、選手が入力した操作やバトルの結果など様々なデータを、簡単かつ正確に記録でき、データアナリティクスとの親和性は高い。米国のようなeスポーツ先進国では既にデータアナリティクスビジネスが盛り上がっている。

この「eスポーツアナリティクス」は大きく2つの目的に分けて考えられる。
1つ目は選手や個人プレーヤーのゲーム上のパフォーマンスの向上である。集まったデータを活用することで、高品質な解析結果をプレーヤーに提供することが可能だ。例えば、ウェブサービス「ドータバフ」では、人気ゲーム「ドータ・ツー」の各キャラクターの使用率や勝率、ランキング上位プレーヤーの装備などプレーヤーが求めるデータを公開している。プレーヤーは同サイトの情報をもとに自身のゲームプレイを改善し、成績を向上させることが可能だ。

2つ目はeスポーツのコンテンツをオンラインで観戦する層の詳細を分析し、ゲーム会社やスポンサー、プロチームのマーケティング活動を効果的にするためである。eスポーツファンの多くは自身が関心を持つゲームやチームの配信チャンネルやSNS(交流サイト)をフォローし、その動向を追う。そういったプラットフォームから得られたファンのデータは、ゲーム会社がプレーヤーの増加やプロチームがファンを獲得する上で重要な指針となっている。

また、各ゲームやプロチームのファンを分析することが可能で、例えばファンの趣向を階層分けし、適切なスポンサー先の選定といった用途に利用できる。
実際に海外では、ストリームハチェット(スペイン・バルセロナ)がeスポーツのオンライン配信プラットフォームのデータを分析するツールを提供している。プロチームがこのツールを使い、動画視聴数やSNSフォロワー数などのデータを、ファンの獲得やスポンサーのターゲット層分析などに生かすことが可能となっている。

eスポーツアナリティクス2つの目的
対象 目的
プレーヤー ゲームプレーヤーのデータを分析し、プレーヤーのパフォーマンス向上に活用
ファン ユーザーの行動や趣向を分析し、スポンサーの選定やファンの獲得に活用

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日経産業新聞 2020年3月4日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。
 

執筆者

KPMGコンサルティング
コンサルタント 水沢 丈

裾野広がるeスポーツ

お問合せ