世界のeスポーツ市場(3):中国

中国でのeスポーツ普及の要因の1つである他産業との協業について、オンライン配信業と不動産業を取り上げ具体例を交えて紹介する。

中国でのeスポーツ普及の要因の1つである他産業との協業について、オンライン配信業と不動産業を取り上げ具体例を交えて紹介する。

中国のeスポーツはすでに十数年の歴史がある。2000年代に「ウォークラフト」ゲームシリーズが流行し、2005年にeスポーツの世界大会「ワールドサイバーゲームズ」で中国選手が優勝したことで、eスポーツは国民的なものになった。当時、中国の若者が多く集まる大学寮では昼夜問わずeスポーツを楽しむ大学生であふれていた。大学生たちによる人気が中国eスポーツにおける強固な基盤となり、中国国内でeスポーツ最初のビジネス「eスポーツカフェ」も誕生した。
2020年初頭(執筆時:2020年2月)である現在、中国では様々な産業と協業することで新しいビジネスが生み出され、多様化が進んでいる。今回はオンライン配信業と不動産業での具体例を紹介する。

まずオンライン配信業との協業である。中国ではeスポーツ観戦人口が多いことから、「Douyu」などのオンライン配信・観戦プラットフォームが発展した。プレーの実況から始まり、事業内容や視聴者数などの規模を広げてきた。2020年2月時点では各プラットフォームがプロチームや選手と契約することで、eスポーツコミュニティーとしての地位を確立している。2019年12月には中国オンライン配信プラットフォームの「bilibili」が2020~2022年の中国内での世界大会の独占配信権を120億円で獲得した。今後は多数のスポンサーや協力会社との協業によるビジネスが見込まれる。

次に不動産業に目を向けると、中国政府の支援のもと、各地でeスポーツ特区ができている。例えば杭州政府がeスポーツ産業優遇策を打ち出し、杭州のeスポーツ特区にeスポーツ専用スタジアムを建設したほか、ホテルやeスポーツ教育施設などの企業を誘致した。中国の地方の産業改革や商業不動産関連のビジネスに好影響を与えたといわれている。
直接の経済効果だけではない。eスポーツ特区を中心に周辺の不動産価値が上昇し、土地取引に伴う政府の収入が増えたことによる貢献も見られた。このように中国では、政府の支援で様々な産業によるeスポーツ市場への参入障壁が緩和されている。特に資金的に余裕のある不動産企業が参入したことで、エコシステム(生態系)が構築された。
今後もeスポーツ関連企業と様々な産業のコラボレーションが促進され、先進的な事例が出てくることが予想される。

中国のeスポーツ市場

中国のeスポーツ市場

※単位:億ドル/出所:Newzoo「世界eスポーツ市場リポート2019」を基にKPMG作成

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日経産業新聞 2020年2月17日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
コンサルタント Lu Yirui(ル イルエ)

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