eスポーツで注目される新技術とは - クラウド、5G、AR・VRの活用

クラウドゲームと次世代通信規格「5G」、そしてAR(拡張現実)とVR(仮想現実)など、eスポーツで注目される新技術を紹介する。

クラウドゲームと次世代通信規格「5G」、そしてAR(拡張現実)とVR(仮想現実)など、eスポーツで注目される新技術を紹介する。

ゲーム産業は新規技術を積極活用することで進化してきた。例えば半導体チップの技術革新はパソコンや家庭用ゲーム機、スマートフォンといったゲーム機の多様性を広げた。センシング技術の発展は任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」のような体感ゲームや、現実世界と融合したAR(拡張現実)ゲームなどの新しい体験を生み出した。eスポーツ業界で今後注目すべき技術を紹介する。

執筆時現在(2020年3月)、最も注目度の高い新技術はクラウドゲームと次世代通信規格「5G」だろう。クラウドゲームとはサーバー上でゲームをプレー可能にする技術である。従来はユーザー操作に基づいた演算・処理をゲーム機が担うことでプレー画面をモニターに映していた。クラウドゲームではサーバー上で演算・処理し、プレー画面をモニターにストリーミング配信するため、ゲーム機が不要となる。

クラウドゲームの注目度が高まった背景には5Gの登場がある。クラウドゲームはゲームサーバーとの通信頻度と量が多く、ユーザーの操作がゲーム画面に反映されるまでに遅延が起きやすい。このためリアルタイムが求められるeスポーツへの導入は難しいと考えられてきた。ところが「高速・大容量」「低遅延」「多接続」が特徴の5Gの登場で遅延の問題が解消する可能性が出てきた。

既に大手企業がクラウドゲームのプラットフォームに乗り出している。米グーグルが「Stadia」を一部地域で提供開始。米エヌビディアとソフトバンクが「GeForce Now」の国内展開に向けてテストを行っている。クラウドゲームが普及すると特定のゲーム機を購入する必要がなくなり、eスポーツ人口の一段の増加が期待できる。

ARとVR(仮想現実)も注目したい技術だ。「波動」をドッジボールのように打ち合うARゲーム「HADO(ハドー)」や「VRバドミントン」など少しずつ広がっている。AR/VRゲームは現実では実現が難しい新たなスポーツ体験の創出や障害者や高齢者の活躍も期待できる。

ゲーム向けではないが、VR端末向けにリアルスポーツなどをVR配信するサービス「XRstadium(エックスアールスタジアム)」も登場している。この技術をeスポーツに応用し、例えば3DゲームをVRで好きな視点から観戦することが可能になれば、よりゲームの世界観を楽しめる。

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日経産業新聞 2020年3月3日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
コンサルタント 水沢 丈

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