日米貿易協定の動向及びその概要

日米貿易協定の動向、関税が撤廃又は削減される品目及び原産地規則についてポイントを整理しています。

日米貿易協定の動向、関税が撤廃又は削減される品目及び原産地規則についてポイントを整理しています。

1.日米貿易協定の動向

2019年10月7日、アメリカのワシントンDCにおいて、日米両国は「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定」(以下、日米貿易協定)に署名しました。

内閣官房が公表する日米貿易協定の概要によると、日米貿易協定が発効すれば、世界のGDPの約30%、人口約4.5億人から成る貿易協定が誕生することとなります。
協定が発効する時期についてですが、「両締約国がそれぞれの関係する国内法上の手続を完了した旨を書面により相互に通告した日の後三十日で、又は両締約国が決定する他の日に効力を生ずる」と協定に記されています。米議会のレポートによると、米国側では大統領貿易促進権限(TPA)法に基づき、米議会を通さずに国内手続きを進める可能性が高いとみられています。一方日本側は、年内の臨時国会で国内承認手続を完了させる見通しです。現時点での具体的な発効時期は2020年の早い時期が見込まれています。

なお、日米貿易協定の協定本文は下記リンクからご覧いただけます。 

2.関税が撤廃又は削減される品目について

米国側(米国輸入時)については、産業機械、工作機械、カメラレンズ、特定の化学製品、産業用タイヤ、蒸気タービン、ペン、サングラス、楽器、自転車、自転車部品などの241品目(HSコードベース)に対して関税率が協定の発効と同時に撤廃又は段階的に引下げられます。
日本側(日本輸入時)についても、牛肉、豚肉、果物、野菜、ナッツ類及びチーズなどの米国農産物596品目(HSコードベース)に対して、米国側と同様に協定の発効と同時に撤廃又は段階的に引下げられます。

なお、現時点においては、自動車及び自動車部品の関税については、「関税撤廃に関する更なる交渉の対象となる。」とのみ協定に記されており、今後の交渉の中でその取扱いを協議することとされています。

3.品目別規則及び原産地手続について

日米貿易協定における品目別規則は、主として関税分類変更基準(Changein Tariff Classification :CTC)が採用されています。したがって、他の協定において、産品に対して付加価値基準(ValueAdded: VA)を用いて原産判定しているような場合、品目により原産判定の基準を変える必要が出てくる可能性があります。
輸入時に日米貿易協定に基づく特恵待遇の適用を受けるための具体的な手続については、協定の中で現時点では明らかになっていません。日米貿易協定の具体的な執行上の取り決め等については、今後協議されて行くことになるため、今後もその動向を継続してチェックする必要があります。

 

Trade & Customs Newsletter No.15

執筆者

KPMG税理士法人
関税・間接税サービス
パートナー 梅辻 雅春
パートナー 神津 隆幸

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