新たなビジネス創出が期待されるeスポーツとは

eスポーツを取り巻く世界と日本の動向と将来性を考察するシリーズ。第1回はeスポーツの概要とそれに付随するビジネスを紹介する。

eスポーツを取り巻く世界と日本の動向と将来性を考察するシリーズ。第1回はeスポーツの概要とそれに付随するビジネスを紹介する。

世界のゲーム産業が今、新しい時代に入りつつある。「ゲームではあるが、単純にゲームだけではないeスポーツ」へのパラダイムシフトが起きている。
従来のゲーム産業はゲームをするプレーヤー側に焦点が当たり、任天堂やソニーなどのゲーム会社とプレーヤーの間の1次ビジネスにとどまっていた。しかし、ゲームから派生したeスポーツは「ゲームを競技として見て楽しむ」、つまり試合中の戦略・戦術・操作テクニック、チームや選手のストーリーなどを一般のスポーツと同等に観戦するようになった。
こうした変化を受け、ゲームをプレーしない層がゲーム観戦で時間を過ごす、オンラインやオフライン上に観戦のために集まる、関連サービスにお金を使うことにつながり、新たな2次・3次ビジネスが生まれ始めた。

例えば、プレーする側が楽しめるeスポーツ施設ビジネスから、パブリックビューイングとお酒が飲めるホスピタリティビジネス、プロ選手を育成する教育ビジネス、ゲーム用チェアなどのプロ選手専用製品、選手の体調管理のためのチーム専属ドクター、ワールドカップ観戦ツアーといった旅行ビジネス、eスポーツファンを狙った金融商品まで、周辺で新しいビジネスが創出されている。

こうした「ゲームのスポーツ性とビジネス」にいち早く着目した海外では、およそ20年前からリーグ大会の開催、企業のスポンサー参入、コンテンツとしての試合放送、プロチーム・プロ選手の登場など、スポーツ産業と同じようなエコシステム(生態系)がeスポーツでも形成されている。国によって発展の仕方や方向性は異なるが、eスポーツは全世界で1つの巨大なコミュニティーとなっている。さらに2022年からはアジア競技大会で正式種目になることをはじめ、今後オリンピック種目になる可能性もあることから、海外ではさらに大きな盛り上がりをみせている。

このような動きは、世界のゲーム産業で3位の日本には大きなチャンスであるが、一方で日本のeスポーツ産業はまだ歩き出したばかりで、課題も複数存在する。
本連載ではeスポーツを取り巻く世界の動向、ビジネスの事例や周辺産業を紹介しながら、日本市場の現状や抱える課題を分析し、日本のeスポーツビジネスの将来について考察する。

世界のeスポーツ市場(2018年)

世界のeスポーツ市場(2018年)

出所:Newzoo「世界eスポーツ市場リポート2019」を元にKPMG作成

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日経産業新聞 2020年2月6日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアマネジャー Hyun Baro(ヒョン バロ)

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