チェコ Tax & Legal Updateニューズレター(2020年4月号)

KPMGチェコで発信している税務、法務、新型コロナウイルス感染症に関するフラッシュニュースを紹介します。

KPMGチェコで発信している税務、法務、新型コロナウイルス感染症に関するフラッシュニュースを紹介します。

目次

  1. 雇用主による従業員の健康保険料の延滞に関する罰金の免除
  2. COVID-19:労災
  3. COVID-19 Legal FAQ
    1. FAQ:パンデミックおよび関連する政府の措置は「不可抗力」とみなされるのか
    2. FAQ:顧客の都合により商品を納入できない場合のサプライヤーの対応
    3. FAQ:事業の閉鎖によって生じた損失の国の補償
    4. FAQ:検疫対策の下での在宅勤務の従業員の雇用契約の更新の必要性
  4. 有限会社および株式会社のパンデミック期間中の財務諸表の承認

1. 雇用主による従業員の健康保険料の延滞に関する罰金の免除

Act on Public Health Insuranceの改正に基づき、2020年9月21日までの期間(2020年3月から8月までの期間分)、従業員の健康保険料の延滞に対して罰金は課されない。

これは健康保険会社のVZP社によって確認済みである。同時に、VZPは、雇用主が標準の期限内に健康保険料の明細書を依然として提出しなければならないことを指摘している。2020年3月20日までに支払う2月分の保険料は通常どおり支払う必要があり、それ以降の支払に対する罰金は通常どおり請求される。

なお、2020年3月から8月までの期間に対する上記罰則の免除は、健康保険に関連する月額保険料に対してのみ適用され、社会保険には適用されない。緊急措置に関連して可決された社会保障、失業保険、年金保険に関する改正に、このような規定は含まれていないことに注意する必要がある。

No penalty for late payment of health insurance premium by employers for employees(6 April 2020)
 

2. COVID-19:労災

チェコ労働法に従い、雇用主は、労働中の事故に起因する損害または非金銭的損害を従業員に補償しなければならない。病気についても、病気が発生する条件下で勤務していた場合、同じことが当てはまる。現在の異常な状況下では、COVID-19に罹患した従業員が労災や職業病への補償を請求することができるかどうかが問題となる。

この点、KPMGの見解では、新型コロナウイルスへの感染は、労災の定義を満たしていない。
新型コロナウイルスへの感染は、職業に起因する病気かどうかは、適切な機関または裁判所によって決定される必要があるが、結果は特定の職業によって異なる可能性がある。医療従事者、警察官、その他の新型コロナ関係の対応者など、パンデミックの最前線で働いている人々に、感染の補償は認められると考えられる。新型コロナウイルスへの感染が最終的に認められた場合、雇用主は、労働災害や疾病に関連する損害に対して雇用主の法的保険を使用して補償する必要がある。

Coronavirus infection - work accident or occupational illness?(6 April 2020)

3.COVID-19 Legal FAQ

商法

FAQ:
パンデミックおよび関連する政府の措置は不可抗力とみなすことができるか?もしそうであるならば、どの時点が不可抗力の始まりとみなされるのか - 緊急事態の宣言か。

不可抗力とは、一般に、契約上の権利・義務を行使する能力に影響を与える、契約当事者の管理・コントロールを超える異常な(例外的な)予測できない状況を意味する。契約では、その正確な定義がしばしば変更され、また、その適用が特定の状況に限定されるため、確認する必要がある。
不可抗力が発生する正確な時点は、状況により異なる場合がある。一般的に(その適用が契約によって除外またはその他の方法で規制されていない限り)、不可抗力の時期は、緊急事態の宣言時、または義務の履行または権利行使を不可能にする特定の措置(特定の目的地への移動を禁止する制限や、施設閉鎖命令)の施行時となる。
しかし、パンデミックが始まった後に契約が締結された場合(緊急事態が宣言された後とは限らない)、関連する措置(政府の措置等)はもはや予測不可能とはいえないため、「不可抗力」とみなされなくなる可能性がある。

FAQ:
顧客がサプライヤーに注文した商品を不要であると通知し、商品の配送に応じない場合、サプライヤーはどのように対処すべきか?

商品を拒否し得る条件の有無および内容について、現在の状況に適用できる特別な条項が契約に含まれているかどうか、契約を慎重に分析する必要がある。契約に基づく顧客の義務(この場合、商品を受け入れて仕入金額を支払う義務)が依然として存在する場合は、顧客がこの義務を果たす必要があることをサプライヤーは主張することができる。
また、商品が顧客に引き渡されなかったとしても、商品の破損リスクは顧客側に存在する。サプライヤーは対象物を裁判所に預託することも可能であるが、裁判所の費用は、商品の受け入れを拒否した顧客が負担する。

FAQ:
事業/施設を閉鎖しなければならないことにより生じた損害について、国に補償を要求できるか。 2020年3月24日発効の保健省による措置の宣言後、この点に関しての変更の有無について。

一般に、国による補償について、2つのRegimeが存在している。

  1. Act No. 240/2000 Coll. (the Crisis Act)
  2. Act No. 82/1998 Coll., on Liability for Damage Caused in the Exercise of Public Authority by a Decision or an Incorrect Official Procedure (the State Liability Act)

緊急事態宣言は、2020年3月12日に政府により30日の期間で宣言された。これに基づいて政府の規制が発令され、人の自由な移動および一部の店舗の閉鎖について制限が課されたが、事業者はCrisis Actに基づいて国に対して損害の請求が可能である旨を規定している。2020年3月23日に、政府は3月12日発効の緊急事態宣言を保健省の臨時措置(2020年3月24日発効)に置き換えたが、この臨時措置にはこれには損害補償について規定されていない。
Crisis Actに基づく損害賠償を回避するために政府がこの変更を行った可能性が考えられる。しかし、現在も緊急事態宣言下にあるため、保健省の臨時措置にもCrisis Actが適用される可能性は否定できない。
損害賠償につき国が準拠を拒否した場合でも、法廷で損害賠償を請求することが可能である。Crisis Actの適用および損害賠償(およびその範囲)の付与に関する最終的な決定は、裁判所に委ねられる。そのため、これまでに生じた損害を定量化しておくことが重要となる。

労働法

FAQ:
今回の検疫措置により、在宅勤務、管理業務しかできない社員の雇用契約の更新の必要性について

COVID-19のパンデミックとそれに関連する特別措置がpublic health protection authoritiesによって課されたために雇用主が従業員に職場での通常の仕事を割り当てることができない場合は、まず、雇用契約が仕事の内容と場所をどの程度広く定義しているかを確認する必要がある。
新しい業務(管理タスクなど)と作業場所(従業員の自宅)が包含されている場合、雇用契約の変更の必要はない。ただし、雇用契約にそれらが含まれていない場合、雇用主はそのような内部ポリシーを作成するか、従業員と自宅での労働条件について個別に合意する必要がある。
新しい業務および/または作業場所を契約に含めることができない場合、従業員は新しい業務および自宅から業務を行う必要はない。したがって、状況は雇用主側で働くことの障害に該当し、この場合、従業員は法律で規定された額の賃金補償を受ける権利がある。

COVID-19 – Legal FAQs and their answers(6 April 2020)

4.有限会社および株式会社のパンデミック期間中の財務諸表の承認

現状、COVID-19のパンデミックにより総会の開催の招集が制限されている中で、どのように開催するかが問題となるが、特に定款に記載されていない場合でもこの緊急事態宣言下においては、Skype等の通信を使用した形での開催、または書面での決議が認められる。
現在の法律によると、株式会社と有限会社の総会は、前の会計期間の終了から6か月以内に財務諸表を承認する必要があるが、現在の状況下においては3ヵ月延長することも可能である。

Approval of financial statements of joint-stock companies and limited liability companies during the pandemic(6 April 2020)

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