IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 企業はどのように保険金の会計処理を行うべきか?

IFRS適用企業における、COVID-19が保険金の会計処理に及ぼす影響の解説記事です。

IFRS適用企業における、COVID-19が保険金の会計処理に及ぼす影響の解説記事です。

論点は何か?

一部の企業は、COVID-19コロナウイルスの感染拡大によって引き起こされた損失(例えば、業務不履行や運送遅延、キャンセルに対するペナルティーを含む、事業中断又は第三者からの請求)に対して適用される保険に入っているかもしれません。
多くの企業において、保険金の会計処理は新しい領域です。多くの場合、主要な疑問は、保険の請求から予想される収益をいつ認識するのが適切かということです。これを決定するため、企業は保険事故の性質及び時期を検討する必要があります。

COVID-19の感染拡大によって引き起こされた損失に関係する保険金の会計処理は、保険事故の性質及び時期によって決まります。

詳細説明

IFRSのもとでは、保険金の会計処理は、企業が保険事故に対して引当金を認識しているかどうかにより異なります。

補填

COVID-19の感染拡大の結果、一部の企業は法律上又は契約上の義務を達成することが困難になるかもしれず、そして引当金を生じさせるペナルティーを負うかもしれません。保険金は、引当金を決済するために必要となる支出の一部又は全部を補填するかもしれません。
引当金を決済するための保険金は、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に基づき、補填として会計処理され、回収がほぼ確実なときに、別個の資産(関連する収益とともに)として認識されます。補填を受ける権利として認識する金額は、関連する引当金の金額までに制限されています。[IAS 37.53]

事業中断に対する補償

企業の事業中断(例えば、COVID-19による逸失利益)に対して、保険金による補償が適用されるかもしれません。これらの保険金を請求できるかどうかは、具体的な保険契約の条件、政府による措置、及び適用される法律の解釈によって異なります。例えば、もし政府によって、すべての飲食店が閉鎖を命令された場合、飲食店は保険契約にもとづいて請求を行うことができるかもしれません。

逸失利益自体は、引当金を生じさせることはありません。したがって、事業中断に対する補償は、IAS第37号のもとでの補填を受ける権利とはならず、IAS第16号「有形固定資産」に基づき、減損に対する補償のガイダンスを類推適用して会計処理するべきです。このガイダンスにしたがって、企業は補償を受ける無条件の権利を有している場合、事業中断に対する補償を債権として認識します。

以下の2つの要件を両方満たす場合、企業は補償を受け取る無条件の契約上の権利があると考えられます。

  • 企業が補償を請求できる保険契約を締結していること。
  • 報告日現在、企業に求償権を生じさせる損失事象が発生しており、当該請求について保険者が争っていないこと。[Insights into IFRS第16版 3.12.198.10]

補償に係る債権は、保険会社の信用リスクを反映した利率で割り引いた期待キャッシュフローの金額及び時期に基づいて測定されます。[IAS 16.65–66, Insights into IFRS第16版 3.12.195.15,198.10]

経営者が今すべきこと

  • 保険契約の条件を確認し、必要に応じて法律専門家を関与させた上で、COVID-19の感染拡大によって生じた損失に対し、保険契約に基づく請求が可能か決定しましょう。
  • 事業中断が資産の減損のトリガーになっているかどうかについて評価し、必要な場合、減損テストを実施しましょう。
  • 企業が保険金を受け取ることがほぼ確実な場合にのみ、引当金に対する補填を別個の資産として認識しましょう。
  • 事業中断に対する補償を受け取る無条件の権利がある場合にのみ、債権を認識しましょう。

英語コンテンツ(原文)

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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