IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - その収益見積りは最新か? - 変動対価、進捗度の測定 -

IFRS適用企業における、COVID-19が収益の見積りに及ぼす影響の解説記事です。

IFRS適用企業における、COVID-19が収益の見積りに及ぼす影響の解説記事です。

論点は何か?

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」のもとでは、収益の認識時点及び認識金額の決定は、企業に見積り及び判断の実施を要求することが多くあります。COVID-19コロナウイルスの感染拡大は、多くの産業を混乱させ、これらの見積りに重大な影響をもたらす可能性のある不確実性を引き起こしています。

例えば、企業は以下の事項を考慮する必要がある可能性があります。

  • 需要を後押しするため、顧客に対し収益の見積金額を減額する新たなインセンティブが提供されていますか?
  • 契約に変動対価が含まれるとき、収益の見積金額に変更はありますか?
  • 独立販売価格の見積りを、新たな契約により更新する必要がありますか?
  • 収益が一定の期間にわたって認識されるとき、完了に向けての進捗度の見積りは最新の予想を反映していますか?

企業は現在の環境を反映させるため、これらの見積りを更新する必要があります。これには重要な判断が求められるかもしれません。

収益の見積りは、最新の予想を反映させるため、更新する必要があります。これは収益の認識時点及び認識金額に影響を与える可能性があります。

詳細説明

変動対価の識別

IFRS第15号によると、契約に変動対価が含まれる場合、企業は権利を得るであろう対価の金額を見積ります。変動対価には値引き、リベート、返金、クレジット、価格譲歩、インセンティブ、業績ボーナス、ペナルティーまたはその他の類似の項目が含まれます。これは明示的又は黙示的(例えば、企業の取引慣行や具体的な声明に基づくなど)であるかもしれません。

企業は、COVID-19の感染拡大に対応して取った行動が、追加の変動対価を生じるかどうか慎重に検討する必要があります。例えば、顧客に提供するインセンティブや譲歩などです。さらに、もし企業のサプライチェーン又は労働力が、その義務を果たせないほどに混乱した場合、取引価格の減額を行うペナルティーが生じる可能性があります。[IFRS 15.50–52]

変動対価の見積り

企業は変動対価の見積りを行いますが、収益の重大な戻入が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ、それを取引価格に含めます(“制限”)。[IFRS 15.56]

企業による制限された金額での見積りは、COVID-19によって重大な影響を受けるかもしれません。例えば、需要の減少は、顧客がリベートや数量値引きの対象となるかについて影響を与えるかもしれません。さらに、運輸会社は、顧客の旅行の中止や延期に伴う返金が増えることにより、収益の見積りを更新する必要があるかもしれません。

企業は、それぞれの報告日において、取引価格の見積りを再評価する必要があります。[IFRS 15.59]

独立販売価格

IFRS第15号において、企業は独立販売価格の比率に基づいて、識別されているそれぞれの履行義務に対し取引価格を配分します。独立販売価格とは、企業が約束した財又はサービスを独立に顧客に販売するであろう価格です。独立販売価格が直接的に観察可能でないときは、企業は合理的に利用可能なすべての情報を考慮し、観察可能なインプットを最大限に利用して見積りを行います。[IFRS 15.74, 77–78]

COVID-19は、観察可能な販売価格が変化する、又は手法を見積もるためのインプットが変化することによって、見積りに対して重大な影響を与えるかもしれません。さらに、契約における財又はサービスが移転したときの収益認識金額に影響を与えるかもしれません。

企業は、新規の契約における取引価格の配分に、最新の見積りを使用していることを確かめる必要があります。ただし、契約開始後の独立販売価格の変動を反映するために、契約開始後に取引価格の再配分を行うことはありません。[IFRS 15.88]

一定の期間にわたる収益認識

企業が財又はサービスを一定の期間にわたり移転するとき、収益は、履行義務の完全な充足に対する企業の進捗度の測定にしたがって認識されます。これは不動産業、建設業、エンジニアリング業、航空宇宙・防衛産業などの分野で一般的です。企業は財又はサービスの移転による履行の状況を描写するために、単一の進捗度測定の方法を適用します。これにはアウトプット法又はインプット法を使用します。[IFRS 15.39–41]

企業がインプット法(例えば、合計予想原価に対する発生原価の割合)を進捗度の測定に用いたとき、履行義務を充足するのに必要であろう合計予想インプットを見積る必要があります。もし予定された作業が完全に終えられない場合、COVID-19はプロジェクトのスケジュールに影響を与えるかもしれません。また、そのような状況は主要なインプットのコストを押し上げることになるかもしれません。

企業は進捗度の見積り及び収益認識が最新の予想を反映していることを確かめる必要があります。これらの見積りの変更は将来に向かって会計処理されます。

開示

年次財務諸表では、企業は変動対価の見積り(制限を含む)及び独立販売価格の見積りに使用した方法、インプット及び仮定について、情報の開示が要求されています。企業はCOVID-19の影響を受けて、この開示を拡大もしくは更新する必要があるかもしれません。[IFRS 15.126]

期中財務諸表では、企業は収益の分解情報の開示を含めることが要求されています。しかしながら、企業はIAS第34号「期中財務報告」の要求事項を満たすために、収益に関するその他の開示を行うかどうかを考慮する必要があります。例えば、収益に関する会計方針の変更がある場合などが考えられます。

経営者が今すべきこと

  • 契約が変動対価を含んでいるかどうか評価しましょう。例えば、顧客へのインセンティブや履行の遅延によるペナルティーなどです。
  • 制限を含めて、変動対価の見積りを更新しましょう。
  • 見積もった独立販売価格に更新が必要か評価しましょう。
  • インプット法により一定の期間にわたって収益が認識されているとき、充足に向けての進捗度が最新の予想合計インプットを反映しているかどうかを評価しましょう。
  • 変動対価及び独立販売価格の見積りに使用した方法、インプット及び仮定に関する情報を開示しましょう。

英語コンテンツ(原文) 

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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