IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 借手及びその他の債務者の信用リスクはどのように再評価されるか

IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 借手及びその他の債務者の信用リスクの再評価

IFRS適用企業における、COVID-19が信用リスクの評価に及ぼす影響の解説記事です。

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論点は何か?

信用リスクの評価 - 信用リスクの著しい増大と信用減損の識別

信用リスク(借手が債務不履行に陥るリスク)の評価は、通常、IFRS第9号「金融商品」に基づく予想信用損失(ECL)の測定に不可欠な要素です。一部の営業債権やリース債権を除き、企業は、金融商品の信用リスクが当初認識時より著しく増大したかどうかを各報告日に評価する必要があります。増大している場合、エクスポージャーの予想存続期間にわたるECLが認識され、増大していない場合、ECLは今後12ヶ月の予想信用損失に限定されます。企業はまた、エクスポージャーが信用減損しているかどうかを評価する必要があります。[IFRS 9.5.5.3]

ECL測定の他の側面と同様に、当初認識以降の信用リスクの著しい増大(SICR)があるかどうかの評価は、将来に関する予測であり、報告日に過大なコストや労力をかけずに入手可能な合理的で裏付け可能な情報を考慮しなければなりません。[Insights 7.8.110.60]

企業にとっての課題は、COVID-19の感染拡大による経済的影響に関連する、報告日時点で過大なコストや労力をかけずに入手可能な将来予測の情報をSICRの評価に考慮することです。

企業は、金融商品の信用リスクが著しく増大したかどうかの評価に、過大なコストや労力をかけずに入手可能な将来予測の情報を考慮することが求められています。これは、COVID-19の経済的影響については特に難しいかもしれません。

詳細説明

SICRの特定は、通常、銀行やその他の金融機関にとって重要です。多くの銀行は、個々のエクスポージャーについて明示的にデフォルト確率(PD)を計算し、それをSICRの定量的評価を行う際に使用しています。銀行は、個々のエクスポージャーのPDにCOVID-19に関連するデフォルトリスクの変化を適時に組み入れることができるかどうかを検討する必要があります。[IFRS 9.5.5.9]

企業はまた、SICRを特定する際に定性的な要因を考慮する必要があります。例えば、顧客の行動の変化、支払猶予や与信限度額引き上げの要請は、SICRや信用減損を示す可能性があります。[IFRS 9.B5.5.18]

企業が個別の商品ベースで信用リスクの主要な要因を特定できない場合には、SICRを集団的に評価する必要があるかもしれません。例えば、報告日時点で入手可能な情報に基づいて、特定の産業や地域のすべてまたは一部の借手について信用リスクが著しく増大しているかどうかを検討し、増大している場合には、それらのエクスポージャーの全部または一部をステージ2(信用減損がある場合にはステージ3)に移動させる必要があるかもしれません。[IFRS 9.B5.5.16]

政府が直接支援を行うことで、借手が債務不履行に陥る可能性が低下し、SICRの発生を回避できる場合もあります。しかし、信用リスクが著しく増大しているかどうかを評価する際に、金融資産の条件の重要な一部である金融保証に基づくキャッシュフローの回収可能性は考慮されません。このため、政府保証による顧客へのローンの回収予想は、ECLの測定に含まれる可能性がありますが、この保証がデフォルトの可能性を低下させたり、SICRの発生を回避させることはありません。

ソブリン・エクスポージャー

ソブリン債への投資を含む政府へのエクスポージャーを有する企業は、ECLの測定と信用リスクが著しく増大しているかどうかの評価を更新する必要があります。COVID-19は政府の財政を圧迫しており、今後数ヶ月の間にその圧迫はさらに厳しくなる可能性があり、結果としてソブリン信用リスクの評価に影響を与える可能性があります。ネガティブ・アウトルックの投資適格範囲の下限にあるソブリン・エクスポージャーについては、近い将来にSICRが発生する可能性が高くなると思われます。[IFRS 9.5.5.9]

条件変更及び支払猶予

借手はCOVID-19 の影響により、財務上のストレスのより大きなリスクに直面しているため、現在の借入条件に対して、貸手に譲歩を求める可能性があります。例えば、財務制限条項の緩和、利息や元本の返済の延期、金利の引き下げなどを要求するかもしれません。政府は、特定のタイプの顧客に対して譲歩を提供するよう銀行に働きかけるかもしれません。

貸手と借手の両方が、適切な会計処理を決定するためにそのような取り決めを慎重に分析する必要があります。すなわち、下記について評価する必要があります。

  • 金融商品の契約条件に変更があったかどうか。変更があった場合には、それが認識の中止による利得または損失につながるかどうか、または償却原価の再測定につながるかどうか。[IFRS 9.5.4.3]
  • 貸手にとって、その取り決めが SICR または信用減損を示すかどうか、またはローンの一部を直接償却する結果となるかどうか。[IFRS 9.5.5.12]

政府が貸手に支援を提供し、それによって貸手が顧客に支援を提供できるようになった場合、貸手はその支援をどのように会計処理するか、特にIAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府支援の開示」に基づく政府補助金の会計処理が必要かどうかを検討する必要があります。[Insights 7.8.130]

開示

企業は、金融商品から生じるリスクの性質及び程度、並びにそれらのリスクをどのように管理しているかについて開示することが求められています。したがって、企業は、COVID-19が金融商品から生じるリスクに与える重要な影響と、それらのリスクをどのように管理しているかを説明する必要があります。企業は、自社の事業に関連し、かつ、これらの目的を達成するために必要な具体的な開示を決定するために、判断を用いる必要があります。[IFRS 7.31]

具体的な開示の例として、以下のようなものがあります。

  • 金融商品の信用リスクが当初認識時から著しく増大しているかどうかを経営者がどのように判断したか。使用した方法や指標は、現在の状況に応じて変更される可能性があります。例えば、追加的に集団的評価が実施される可能性や、金融商品が異なるグループに分類される可能性などがあります。[IFRS 7.35F]
  • SICRの評価に使用した方法、仮定及び情報。例えば、企業は、SICRの評価に最新の将来予測情報をどのように組み入れたかを説明する必要があるかもしれません。[IFRS 7.35G]
  • ECLから生じる金額を評価できるようにするための、定量的情報及び定性的情報。過去に開示されたいくつかの種類の分析は、COVID-19から生じる影響を明確に伝えるために調整または補足が必要となるかもしれません。[IFRS 7.35H-L]
  • 企業が報告日において行った将来に関する仮定及びその他の見積りの不確実性の主要な発生要因のうち、翌事業年度中に重要な調整をもたらす重要なリスクを有するものに関する情報。[IAS 1.125]

経営者が今すべきこと

経営者は以下について検討する必要があります。

  • 個々のエクスポージャーのPDにCOVID-19関連のデフォルトリスクの変化を適時に組み入れることが可能かどうか
  • SICRの特定に定性的な要因 -(例:顧客の行動の変化、支払猶予や限度額の引き上げの要請)を考慮する
  • 集団的な SICRの評価を実施する
  • 金融商品の契約条件の変更が、認識の中止による利得または損失または再測定に伴う利得または損失の認識につながるかどうか
  • 政府が提供する援助に対して、政府補助金の会計処理を適用することが適切であるか

関連するKPMGのウェブ記事ESMA guidance on the COVID-19 impact on reporting ECLsを参照ください。

国際会計基準審議会は、COVID-19に関するIFRS第9号の適用についてのガイダンスを公表しています。

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執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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