IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 非金融資産(有形固定資産等)の減損

IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 非金融資産(有形固定資産等)の減損

IFRS適用企業における、COVID-19が非金融資産(有形固定資産等)の減損に及ぼす影響の解説記事です。

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論点は何か?

減損テストのトリガー

多くの国では、COVID-19コロナウイルスの感染拡大を食い止めるための厳しい対策を実施しています。これらの対策は、経済活動や心情に大きな影響を与え、とりわけ下記に当てはまる世界中の企業の事業活動を混乱させています。

  • 製品やサービスに対する需要の低下、または国家による規制によって打撃を受けている企業;
  • サプライチェーンに依存しているか、COVID-19の影響を大きく受けた国に生産施設を持っている企業;かつ(または)、
  • COVID-19の影響を大きく受けている国との貿易を行っている企業

経済環境の急激な悪化やマクロ経済、業績見通しの不確実性の高まりにより、世界的に株式市場が急落し、それに伴い為替レートや商品価格が大幅に変動しています。その結果、2020年第1四半期にトリガーとなる事象が発生し、したがって減損テストが必要となる蓋然性が、年1回の減損テストが必要とされる資産を含めて、大幅に高まっています。

キャッシュ・フローの見積りにおける課題

トリガーとなる事象が発生した際、経営者は、資産又は資産生成単位(CGU)の回収可能価額(使用価値(VIU)と処分コスト控除後の公正価値(FVLCD※1)のいずれか高い方)を決定しなければなりません。これには通常、経営者が将来キャッシュ・フローを予測することが必要です。経営者が作成した予算及びキャッシュ・フローの予測は、一般的に、回収可能価額を計算する際に使用する割引キャッシュ・フローの出発点となります。予測販売数量、価格、粗利益率、運転資本の変動、為替レート、割引率などの重要な前提条件は、経済や市場の状況が大きく変化した場合には、適宜再評価し、更新する必要があります。処分コスト控除後の公正価値の決定に使用されたキャッシュ・フローは、市場の状況や報告日時点で入手可能な情報に基づいて、市場参加者が使用するであろう仮定を反映して更新する必要があります。[IAS 36.4, 9, 33, IFRS 13.2]

以下についての不確実性の程度を考慮すると、見積りを行うことは困難かもしれません。

  • COVID-19の拡散を封じ込めたり、遅らせたりするために取られた対策の性質、重大度、期間;
  • 事業活動や経済活動が正常に戻るまでに、どのくらいの時間がかかるか;
  • 回復の期待される軌道(すなわち、どのくらい早く経済成長が再開するか)と景気後退の可能性 ;かつ
  • いかに永続的な影響を当該経済や分野に与えるか

※1 FVLCD:fair value less costs of disposal.

割引率へのリスクの反映

使用価値や処分コスト控除後の公正価値の将来キャッシュ・フローを割り引く際に使用される割引率は、不確実性とリスクの増大により、COVID-19の影響を大きく受ける可能性があります。割引率には、報告日における利率とリスク環境の変化の影響を反映すべきです。[IAS 36.56]

COVID-19による事業の中断や経済の不確実性の高まりにより、2020年第1四半期に減損テストの実施が必要になる可能性があります。回収可能価額を算定するために将来のキャッシュ・フローを見積ることは、不確実性の高さを考慮すると困難になるでしょう。

より詳細な情報を得るために

減損テストのトリガー

IAS第36号「資産の減損」は、有形固定資産、使用権資産、無形資産、のれん、取得原価で測定される投資不動産、関連会社及び共同支配企業※2を含む、様々な非金融資産に適用されます。[IAS 36.2, 4]

IAS第36号は、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産については、少なくとも年1回、その他の非金融資産については、減損の兆候(a triggering event=トリガー事象)がある場合に、減損テストを行うことを要求しています。トリガー事象の指標例としては、以下のようなものがあります。

  • 報告期間中に(または近い将来に)、企業が事業展開している市場や経済環境に重大な変化が起こり、その変化が企業に悪影響を及ぼす場合;
  • 企業の純資産の帳簿価額が株式の市場価値を超過している場合[IAS 36.9–10, 12]

COVID-19の影響は、多くの企業に経済状況の重大な混乱をきたし、他の企業にも経済の不確実性の高まりをもたらしており、それがトリガー事象となる可能性があります。

  • 特定の業界が重大な影響を受けています。 - 例えば、旅行業、観光業、エンターテインメント業界、小売業、建設業、製造業、保険業、教育業など。
  • 採取産業の企業もまた、商品価格の下落によって重大な影響を受けている可能性があり、これらの商品に経済的に依存している国の企業もまた、経済的な悪影響のリスクにさらされている可能性があります。
  • 特定の種類の投資用不動産(および賃貸不動産から生じる使用権資産) - 例えば、商業施設や工業用不動産など - は、COVID-19の影響を相当受ける可能性があります。営業停止を余儀なくされたテナントは、近いうちに賃料の支払いができなくなったり、より低い賃料での再交渉を求める可能性があります。また、そうしたテナントは信用力が低下する可能性もあります。同様の考慮事項は、運送業に資産(例えば、航空機や船舶など)をリースしている企業にも適用されるでしょう。

キャッシュ・フローの見積りにおける課題

経済の不確実性の高まりにより、多くの企業にとって、将来キャッシュ・フローの予測は特に困難なものとなる可能性があります。

  • 使用価値についてのキャッシュ・フローの予測は、当該資産または資金生成単位の残存耐用年数にわたって存在するであろう一連の経済状況に関する経営者の最善の見積りを反映した、合理的で裏付け可能な仮定に基づくものでなければなりません。外部の証拠に、より大きな重点を置かなければなりません。[IAS 36.33(a)]
  • 処分コスト控除後の公正価値について、使用される見積り及び仮定は市場参加者の見通しとなります。[IFRS 13.22]

キャッシュ・フローの予測には不確実性が高く、それに伴う課題が多いため、信頼できる中央銀行やその他の国際機関の経済予測など、外部の情報源に基づいて予測することが有用であると考えられます。

経済・金融市場への影響を緩和するために、特定の地域の政府や国際機関は、財政刺激策や流動性の提供、金融支援を約束しています。企業はこれらの対策の条件や状況を理解し、キャッシュ・フロー予測にどのような影響を与えるかを検討する必要があります。

割引率におけるリスクの反映

COVID-19は、リスクフリー・レート、及び将来キャッシュ・フローを割り引くための適切な割引率を決定する際に使用される企業固有のリスク・プレミアム(例えば、資金調達リスク、カントリー・リスク及び予測リスク)に、重要な影響を与える可能性があります。[IAS 36.A1, A16, A18]

リスクフリー・レートは、一般的に、資産または資金生成単位のキャッシュ・フローと同一または類似のデュレーションを有する国債の利回りを基準としています。一部の法域では、2020年第1四半期に長期国債利回りが低下しています。しかし、企業の状況によっては信用リスクやその他のリスク・プレミアムが上昇する可能性もあるため、国債利回りの低下に伴うリスクフリー・レートの低下が、企業の割引率の低下にはつながらない可能性もあります。[Insights into IFRS第16版 3.10.300.120]

COVID-19の割引率への影響については、公正価値測定に関するウェブ記事をご覧ください。

キャッシュ・フロー予測のアプローチの考慮

不確実なマクロ経済の見通しを考えると、経済活動が正常に戻るまで数ヶ月間経済が混乱するというシナリオから、大幅な景気後退の引き金となる長期的な混乱期になるというシナリオまで、多岐にわたるため、見積りの不確実性は通常よりもかなり高くなり、合理的なキャッシュ・フローの予測の範囲も広くなると思われます。

キャッシュ・フローの予測には、2つのアプローチを使用することができます。

  • 単一のキャッシュ・フロー予測、または最も可能性の高いキャッシュ・フローを使用する伝統的アプローチ
  • 複数の確率加重キャッシュ・フロー予測を使用する期待キャッシュ・フロー・アプローチ[IAS 36.A4–A14]

不確実性が高いことを考えると、伝統的アプローチと異なる、期待キャッシュ・フロー・アプローチの使用を検討することが有用かもしれません。伝統的アプローチでは、キャッシュ・フローはリスクによって調整されるのではなく、割引率の決定の際にリスクが反映されます。期待キャッシュ・フロー・アプローチでは、将来のキャッシュ・フローに関する不確実性が、割引率ではなく、使用される様々な確率加重キャッシュ・フロー予測に反映されます。期待キャッシュ・フロー・アプローチでは、通常よりも幅広い将来結果の可能性をより明確に考慮することが、本質的に要求されます。[IFRS 13.B26, IAS 36.A7, Insights into IFRS第16版 3.10.220]

どのようなアプローチを採用する場合でも、キャッシュ・フローの割引率は、予想キャッシュ・フローに組み込まれた要因の調整を反映してはならず、その逆も同様です。そうでなければ、一部の要因の影響が二重計上されることになります。[IAS 36.55–56]

耐用年数及び残存価額への影響

最近の事象により、企業の有形固定資産の使用方法や保有戦略が変更された場合、経営者は、当該資産の耐用年数及び残存価額、それらに適用されている減価償却方法が適切であるかどうかを見直す必要があります。この見直しは、資金生成単位または資産の減損テストを行った後にも必要となる場合があります。このような変更は、会計上の見積りの変更として、将来にわたって会計処理されます。[IAS 16.61, Insights into IFRS第16版 3.10.350.30]

開示

アニュアルレポート

のれん及び耐用年数の確定できない無形資産の減損テストにおいては、IAS第36号は、回収可能価額を決定するために使用した重要な仮定の開示を要求しています。また、重要な仮定について合理的に考え得る変更により、資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超える場合には、感応度分析の開示を要求しています。さらに、IAS第1号「財務諸表の表示」は、報告期間の末日における、企業が将来に関して行う重要な仮定及び見積りの不確実性の他の主要な発生要因のうち、翌事業年度中に資産及び負債の帳簿価額に重要な修正を生じさせる重大なリスクがあるものについて、開示を要求しています。[IAS 1.125, 129, 36.134(d)–(f)]

将来に関する経営者の仮定に関連した不確実性は重要である可能性が高いため、回収可能価額の見積りに存在する見積りの不確実性の程度や、合理的に起こり得る主要な仮定の変更に対する回収可能価額の感応度を、財務諸表利用者に理解してもらうために、経営者がしっかりとした開示を行うことが重要です。例えば、マクロ経済の見通しに関連した不確実性の程度(COVID-19 が企業の事業に与えると予想される影響の重大度や期間など)や、サプライチェーンの混乱、工場の操業停止、需要低下などの潜在的な重要性に関する経営者の見解を開示することが適切かもしれません。

要約期中財務諸表

IAS第34号「期中財務報告」は、見積りの変更の内容及び金額の開示を要求しています。減損損失は、重要な場合に、IAS第34号に基づき開示を要求する事象や取引の例です。IAS第34号で指摘されている、期中に重要な減損損失が認識された場合のように、事象又は取引が、直近事業年度の末日からの企業の財政状態又は経営成績の変化を理解する上で重要である場合には、企業の期中財務報告書は、直近事業年度の財務諸表に記載された関連情報の説明及び更新を提供しなければなりません。IAS第36号は、この点で考慮すべき関連する開示を提供しています。[IAS 34.15B(b), 15C, 16A(d)]
 

経営者が今すべきこと

企業の資金生成単位又は個別にテストされる資産に、減損の兆候があるかどうかを検討します。特に、以下の評価を行います。

  • COVID-19 を封じ込めるために取られた措置が当該企業の事業に与える影響
  • 純資産が株式の市場価値を超えているかどうか

予算およびキャッシュ・フローの予測が、報告日時点で入手可能な情報に基づき、企業が適用可能な範囲で以下の事項を反映しているかどうかを検討します。

  • COVID-19の影響の持続期間と重大度に関する中央銀行やその他の国際機関の予測
  • 資金生成単位の製品やサービスに対する供給と需要
  • 経済活動の低下
  • 運送、渡航、検疫の制限の影響
  • 為替レートと商品価格の影響
  • 財政刺激策、流動性の提供、国や国際機関からの金融支援

直近の評価で使用した割引率が、報告日時点のリスク環境を反映して更新されているかどうかを検討します。

期中財務報告書およびアニュアルレポートにおいて、感応度の開示および主要な仮定および主な見積りの不確実性の要因に関する開示を強化することを検討します。

※1 FVLCD:fair value less costs of disposal.
※2 IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」のガイダンスは、持分法投資先に対する投資の減損テストを実施する必要があるかどうかを判断するために使用されています。減損の兆候がある場合、減損テストはIAS第36号に従って行います。[IAS 28.40-42]

執筆者

会計プラクティス部

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