タイ退職給付会計に係る割引率の変更及び株主総会について

タイニューズレター - 2020年3月末の決算期末における、退職給付会計に係る割引率の変更及び株主総会開催の留意点を紹介します。

2020年3月末の決算期末における、退職給付会計に係る割引率の変更及び株主総会開催の留意点を紹介します。

従業員給付に係る割引率の変更

タイにおいて、国債の利回りが大きく下落しています。(タイ国10年債の利回りは2019年3月末時点の約2.475%から2020年1月末時点には約1.05%まで下落しました。)これを受けて、退職後給付債務の計算に使用する割引率を変更した場合、会計年度の損益に大きな影響を与える可能性があります。
詳細は以下のとおりです。

タイの日系企業の多く(上場企業や金融機関等を除く)が採用している会計基準であるTFRS for NPAEsは経営者の最善の見積りにより退職後給付債務を計上することが規定されおります。その見積り方法は会社の会計方針によって異なっておりますが、以下の会計方針により、退職後給付債務を計上している場合、割引率の変更が会計年度の損益に大きな影響を与える可能性がありますので留意が必要です。

  • TAS19号「従業員給付」を適用し、年金数理人が作成したアクチュアリーレポートに基づき、退職後給付債務を計上している場合
  • 割引率を用いた最善の見積りにより退職後給付債務を計上している場合

通常、アクチュアリーレポートは、期末日よりも前に入手しますが、期末日までに従業員数や基礎率(昇給率、退職率、割引率等)等の重要な変動があれば、期末日前の評価結果を更新しなければなりません。(TAS17号59項)。直近の著しい市場利率の下落は、割引率を変更し退職後給付債務の計算結果を更新すべきことを示唆しています。割引率の見直しが必要性の有無、割引率を変更した場合の影響額及び会計処理について、経理マネジャー等に監査チームとの協議を指示することをご検討ください。

株主総会の開催に関する留意点について

今般の新型コロナウィルス感染拡大の状況を踏まえて、日本からタイへの渡航を控える動きが広がっています。株主総会開催の日程が近づく中、その対応方法についてのお問い合わせが多く寄せられております。下記にタイ民商法典に基づく株主総会の開催要件についてご案内いたしますので、株主総会のご準備にお役立てください。

 

書面決議又はテレビ(WEB・電話)会議

民商法典には、書面決議を許容する明文規定はなく、書面決議は認められないものと解されています。
また、テレビ会議に関する規則及び解説は2016年9月に公表されましたが、主に以下の要件を満たす必要があります。

  • 定足数の3分の1以上の参加者が同じ場所にいること
  • 全ての会議の参加者がタイ国内に所在していること
  • 音声又は音声と映像による記録及び保存(電子データ)
  • 議事録の作成及び保存
  • 登記申請時における証拠書類の追加

 

代理人による議決権行使

株主総会については、代理人による議決権行使が認められます(民商法典1187条)。


定足数について

定款に別段の定めがある場合除き、株主総会の定足数は総資本の4分の1に相当する株主の出席となります。

KPMGのコメント

テレビ会議による株主総会への出席は、全ての参加者がタイ国内に所在するという要件があるため、日系企業には代替手段になりづらいと考えられます。その為、タイへの渡航が難しい日本在住の株主の議決権行使手段として、委任状を利用した代理人による行使が増えるものと予想されます。

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