データを活用した小商圏でのファン作りとは

「小売りの明日」第9回 - 商品の明確化、通販や宅配との連携、データ管理と分析の3つの対策を挙げ、今後小商圏化する市場での勝ち残りについて解説する。

商品の明確化、通販や宅配との連携、データ管理と分析の3つの対策を挙げ、今後小商圏化する市場での勝ち残りについて解説する。

日本の人口が減少するなかで、依然として新規出店が続く限り、小売業における「小商圏化」という課題はもはや避けては通れない。コンビニエンスストアの数は人口約2000人あたり1店あり、1日あたり利用客数は約600人(来店シェア26%)、スーパーマーケットでは約6000人に1店あり、1日あたり約1500人(来店シェア25%)の利用客数を確保しなければ経営が成り立たないのが実情だ。
「売上=客数×客単価」というシンプルな方程式で考えれば、これまで以上に客数のシェアを拡大させるか、客単価の向上を実現しなければならない。

イオングループの小型スーパー「まいばすけっと」は2007年には10店ほどだったが、今や800を超える。小型スーパーの約8割が東京都と神奈川県に集中しているのを見ると、都市部の小商圏化が特に顕著なのがうかがえる。
同じくイオングループの展開する有機食品専門スーパー「ビオセボン」も消費者の健康志向に対応した小型スーパーとして出店を拡大している。フランスの販売方法さながらの量り売り販売や、鮮度の良い食材、スタイリッシュな店内が支持を集めている。
これら小型スーパーと競合するのが、通信販売と宅配サービスだ。消費者が通販の定期便サービスで、飲料などをケース単位で購入すれば、日用品の購入手段が通販に流れてしまう。米ウーバーが展開するフードデリバリーサービスの「ウーバーイーツ」や「LINEデリマ」など、宅配サービスの普及も店の総菜や弁当の市場への脅威だ。

今後、小商圏化する市場で勝ち残るには3つの対策が必須となる。1つめは来店のきっかけにつながる商品を明確にすることだ。品ぞろえ面で競合するコンビニやスーパー、ドラッグストアなどにはない商品をどうそろえるのか。顧客の声を吸い上げる仕組みや、精緻な分析が重要になる。
2つめは、「脅威」となるはずの通販や宅配と連携していくことだ。店を情報発信や商品確認の場と位置づけ、重量が重かったり、大ロットだったりする商品は宅配や定期便サービスの契約へとつなげる。他の通販への流出を食い止めるのが狙いだ。
そして3つめは、データ管理と分析だ。1つめと2つめの対策それらすべてをデータで管理することで、一人ひとりの動向やニーズを把握していく。自店の顧客が商圏内の他店に行くことなく、頻度高く来店してもらえるファンになってもらう必要がある。データの活用ができなければ、次の打ち手は生み出せない。

偶然に立ち寄ったのではなく、常に利用してくれる「ファン」の顧客をどう増やしていくのか。来店データや購買データ、居住データなどを顔認証システムや決済システム、アプリなどのテクノロジーを活用して取得していく必要もあるだろう。「小商圏でのファン作り」が、今後の小売業でのデータ分析の最重要テーマだろう。

日経MJ 2019年1月28日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

小売りの明日

お問合せ