グローバルサプライチェーンリスクマネジメントという考え方

海外展開で留意すべきサプライチェーンのリスクについて、従来のサプライチェーンマネジメントとの違い、対応について解説する。

海外展開で留意すべきサプライチェーンのリスクについて、従来のサプライチェーンマネジメントとの違い、対応について解説する。

グローバル企業は、日本国内にグループ本社、海外では米国、欧州、アジアという広い単位を統括する地域統括会社、各地域内の製造子会社、販売子会社などで構成され、それぞれの会社はサプライチェーン(供給網)によって国境を越え密接に関連している。各子会社や事業・商品の重要性、サプライチェーン上の重要性を踏まえたグループ会社全体の組織・事業の考慮は欠かせない。
海外展開により商機が拡大する半面、それに伴う新たなリスクに対応するため、グローバルに拡大するサプライチェーンへのリスク対策は、重要な要素になる。

グローバル規模のサプライチェーンリスクマネジメントは、原材料・部品の調達から、生産、物流、販売に至るまで、存在するリスクを特定・評価し、サプライチェーン寸断を回避するために必要な対策を講じることを目指す。製造業における事業継続計画(BCP)と捉えられるが、自社だけでなく関係するサプライヤーや物流会社、海外子会社、販売代理店、委託先など、あらゆる関係者を含めて検討する必要がある。
また、サプライチェーンマネジメントとの違いは、スループット効率(単位時間当たりの処理能力)を図るために「モノの流れ」やそれを実現するシステムに着目するだけでなく、「カネの流れ」「ヒトの配置」「情報の流れ」「設備配置」などの観点からサプライチェーンを俯瞰してリスクを分析することである。
まず前提として、自社に影響を与えるリスク事象は多岐にわたるため、個々の原因に対して想定シナリオをすべて策定することは不可能である。すべての原因を洗い出すことにこだわらず、自社の機能やリソースに着目し、それらの中で直接的な脆弱性を分析するのがよい。テロや災害といった個々の事象は、検討の過程でその妥当性や可能性を測るために一定の考慮はするものの、基本的には「参考程度」として捉えればよい。

今後、特に新興国における事業が成熟期/安定期を迎えるにあたって、日本企業のサプライチェーンを見直す動きはますます進んでいくと考えられる。また、それを取り巻くリスクは多岐にわたり、より複雑で予測不能なものになっていく。グローバルサプライチェーンリスクマネジメントという考え方を自社に根付かせ、真の意味で強いサプライチェーンの構築が重要である。

サプライチェーンに与える影響

想定シナリオ
調達 生産 物流 販売

サプライヤー倒産
工場被害 等

建屋の倒壊
製造設備破損 等

物流網の寸断
倉庫倒壊 等

店舗被災
受発注業務停止 等

 

 

ヒト

要員不足、専門技術の引継ぎが困難に

取引先被災による貸し倒れ、自社被災によるキャッシュフロー悪化

システム システム停止、ネットワーク寸断など
その他 経営リソースへの影響

日経産業新聞 2017年11月20日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング

シニアマネジャー 土谷 豪

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