生産リスク対策にかかわる費用対効果とは

「レジリエンスを高める」第13回 - 生産施設・設備など破損すると復旧への投資が巨額になる生産リスクの災害対策について、コストと効果のバランスも含め考察する。

生産施設・設備など破損すると復旧への投資が巨額になる生産リスクの災害対策について、コストと効果のバランスも含め考察する。

地震や大洪水などの自然災害、あるいは爆発・火災・サイバー攻撃などの人為災害による生産施設・設備の物理的な破損や生産に携わる人員が出社不可となれば、生産停止の事態となる。特に生産施設・設備の物理的破損は、販売機会損失に加え復旧関連投資も巨額になる傾向がある。サプライチェーン機能と同様に、生産リスク管理は「優先製品に関連するリスクを可視化・評価し、高リスク領域に対して優先的に対策を実施する」というのが基本的な考え方になる。

まず、生産リスクの可視化・評価においては、生産拠点が所在する場所の自然災害を中心に地政学的リスク分析が重要である。そのうえで、生産拠点内の施設・設備・ライン及び人員について、「代替性の有無」の観点を中心にリスクを評価する。
そして次に対策を検討する。生産リスクへの対策は「発生可能性」や「影響度」によって分類し、リスクの大きさやコストと効果のバランスなどを複合的に判断して決める。最重要なのは「生産停止の可能性」を低減する対策である。仮にリスク評価の結果、生産拠点の地政学的リスクが許容外に高いことが判明した場合は、究極的な選択として、拠点移転や遠隔地に生産拠点を増やすなどの対策をとり、生産停止の可能性を限りなくゼロに近づけることも考えられる。ただし、これらの対策は巨額の投資と工期がかかるため、実施が難しいことが多い。そのため、一定のコスト内で効果が得られる対策の検討から進めるのが現実的だ。1つの例として、生産施設・設備に関する災害対策が考えられる。

生産停止の影響度を低減する対策としては、選択肢の1つとして、他拠点における迅速な代替生産が考えられる。これを実現するためには、生産リソースごとの代替先を「代替整理表」などに一覧化しておくことが有効だ。また、自拠点の復旧早期化も重要なポイントになる。「重要設備の自社メンテナンス可能範囲の拡大」や「優先製品に関連する金型・保守パーツの在庫を遠隔地に保管する」などの対策により、許容停止時間内で生産を復旧できる可能性が高まる。

日経産業新聞 2017年11月24日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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