レジリエンスを向上させ想定外に打ち勝つ組織づくりとは

「レジリエンスを高める」第20回 - BCPに終わらない、経営理念、目標設定、外部環境への感度、業務への自律性、組織風土といったレジリエンスの要素について解説する。

「レジリエンスを高める」第20回 - BCPに終わらない、経営理念、目標設定、外部環境への感度、業務への自律性、組織風土といったレジリエンスの要素について解説する。

本連載では、「レジリエンス」の根幹を「危機や環境変化に打ち克ち、それを糧に成長できる組織の力」として捉えてきた。“想定外”の危機が発生してもそれを乗り越え、さらなる発展を遂げる力とも言える。
企業は危機に備えて事業継続計画(BCP)や危機管理マニュアルなど様々な予防策を講じるが、それだけでは組織の力を高めたとは言えない。特に想定外の危機へ対抗するためには、最終的には企業を復旧させる原動力となる、組織そのものの地力・風土を強化することがカギになる。そのために必要な要素として以下の5つが挙げられる。

  1. 経営理念の浸透
    流動性を高めネットワーク化・自律的なチーム指向の組織づくりを進めることは、共通の価値観や行動規範、組織全体に対する求心力の維持確保が課題になる。経営理念の浸透に向けて、対内的な教育活動を中心とした「内部認知」だけではなく、対外的な強いメッセージ発信やブランド強化活動といった「外部情緒」に訴える社員への理念浸透活動の実践が重要となる。

  2. 適切な目標設定と合意
    組織の構成員に課される営業目標や成果目標は、組織をけん引する力になる一方で、リスクを高め、構成員のモラルを低下させる可能性がある。個人の能力・志向・性格特性に応じて柔軟に設定する必要がある。

  3. 外部環境に対する感度
    内向きの思考を克服し、外部環境、特に自社に係るステークホルダー(利害関係者)からの社会的な要請に対してポジティブな感度を組織と構成員が持つ必要がある。

  4. 仕事に対する自律性
    日常的な権限委譲や少人数のチーム制の導入、現場指向の改善サイクルの実践といった活動のみならず、危機に際してもその力を維持し続けられるよう、危機対応における現場支援の専門チームを整備しているケースもある。

  5. 適度な組織の揺らぎ
    組織もしくはプロジェクトなどの単位で、あえて異質なバックグラウンドを持つ人材を投入することで「組織を安定させすぎない」ようにし、組織は変わるという意識を与えて変化に対するポジティブな風土を生む。

このように、レジリエンスのための組織づくりは、危機そのものへの対応力としてだけではなく、変化が著しい昨今の事業環境において企業が生存と成長を図るための欠かせない要素とも言える。

日経産業新聞 2017年12月5日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
パートナー 足立 桂輔

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