Q&A実務 令和元年改正会社法で変わること

Q&A実務 令和元年改正会社法で変わること

令和元年12月4日、会社法の一部を改正する法律が成立し、同月11日に公布されました。本稿は、QA方式にて、令和元年改正会社法の改正ポイントについて解説します。

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令和元年改正会社法で変わること

令和元年12月4日、会社法の一部を改正する法律が成立し、同月11日に公布されました。会社法の改正は平成26年以来となりますが、当時の改正法の附則において、施行後2年を経過した場合に必要に応じ、社外取締役の義務付け等の措置を講ずると規定されたことを受けてのものとなっています。
本稿は、QA方式にて、令和元年改正会社法の改正ポイントについて解説します。

Q1.なぜ、会社法が改正されることになったのでしょうか。

A1

平成時代の前半は規制緩和のニーズもあり、会社法の前身である商法について、平成2年、5年、6年、9年(3回)、11年、12年、13年(3回)、14年、15年、16年とほぼ毎年のように改正が行われていました。そして平成17年の会社法創設で改正に一定の区切りがつき、その後は久しぶりに平成26年改正が実現するにとどまっていました。今般の改正はそれ以来の、令和の時代に入って初めての改正となりました。
こうして改正されることは、平成26年改正の際に既に予定されていました。というのも、平成26年改正会社法の附則に、上場会社等に社外取締役の設置を義務付けるかどうかが議論となり、以下のような規定が置かれたためです。

政府は、この法律の施行後二年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。
(平成26年改正会社法附則第25条、平成27年5月施行)


これを受け、2017(平成29)年より、法務大臣の諮問機関である法制審議会において、会社法制のうちコーポレートガバナンス関係の見直しの審議が開始、2018(平成30)年の中間試案の公表、パブリックコメントの募集を経て、2019(平成31)年2月には要綱のとりまとめが行われるに至りました。2019(令和元)年10月には、要綱に基づき立案された会社法案が国会提出され、国会での審議を経て一部修正のうえ、同年12月に成立、公布されるに至りました。

Q2.どのような改正事項があるのでしょうか。主な改正事項とポイントを教えてください。

A2

株主総会や取締役等に関する規律などについての改正が行われています(図表1)。

図表1 主な改正事項

株主総会に関する規律の見直し
  • 株主総会資料の電子提供制度の創設
  • 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備
取締役等に関する規律の見直し
  • 取締役の報酬に関する規律の見直し
  • 会社補償に関する規律の整備
  • 役員等賠償責任保険契約に関する規律の整備
  • 業務執行の社外取締役への委託
  • 社外取締役を置くことの義務付け
社債の管理等に関する規律の見直し
  • 社債の管理に関する規律の見直し
  • 株式交付制度の創設
  • その他


出典:法務省民事局「会社法の一部を改正する法律の概要」に基づき、あずさ監査法人作成

Q3.株主総会資料の送付方法はどのように変わるのでしょうか。

A3

株主総会資料の電子提供制度という制度が創設されます。これにより、株主総会資料をウェブサイトに掲載し、株主にそのアドレスなどを記載した書面による招集通知を送ることで、株主総会資料を書面で送付しなくて済むようになります。株主総会資料とは、株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類・連結計算書類および事業報告です。この制度の採用は定款に定めることによってできますが、振替株式発行会社、すなわち主として上場会社は定款で採用することを定めなければならなくなり、電子提供制度の利用が義務付けられます。
ウェブサイトへの掲載は、株主総会の日の3週間前の日または株主総会の招集通知を発送した日のいずれか早い日までに行う必要があり、株主総会の日の3ヵ月後まで続ける必要があります。EDINETにおいて有価証券報告書の提出を行うことで電子提供を代替することも可能となります。
改正前会社法では株主総会開催の2週間前までに株主総会資料を書面送付することとされていますので、期限は早まるようですが、書面を送付する必要がなくなること、実務上はコーポレートガバナンス・コードの影響もあり、法定よりも早く送付している企業が多いことから、大きな実務負担はないものと思われます。もっとも、要綱の採決の際に、金融商品取引所の規則において、上場会社は、株主による議案の十分な検討期間を確保するために電子提供措置を株主総会の3週間前よりも早期に開始するよう努める旨の規律を設ける必要があるとする附帯決議がなされています。このため、法定の3週間前より早期に電子提供できるような対応が必要となるでしょう。
また、デジタルデバイドの問題に対処するため、書面で送付してほしいという株主は、会社に書面の送付を請求することができるようになっています。

Q4.株主提案権の濫用はどのように制限されることになるのでしょうか。

A4

株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数が10個までに制限されることになります。ここで議案の数をどう数えるかが問題となりますが、1.役員等の選任等に関する議案、2.役員等の解任等に関する議案、3.会計監査人を再任しないことに関する議案および4.定款の変更に関する2つ以上の議案について異なる議案がされたとしたときに相互に矛盾する可能性のある議案は、それぞれ1つと数えることになります。
また、議案の数が10を超えるときの優先順位については、取締役が定めるものとされ、株主が優先順位を定めている場合には、取締役はそれに従って定めるものとされています。
なお、国会に提出された会社法案では、数だけではなく不当な目的等による議案を制限する規定も提案されていたものの、株主の権利保護の観点から衆議院で修正され、削除されました。

Q5.取締役の報酬の決定プロセスはどのように変わるのでしょうか。

A5

一定の取締役会設置会社とすべての監査等委員会設置会社は、定款や株主総会の決議によって定めた報酬枠や具体的な報酬の算定方法、金銭でない場合における具体的な内容に基づき、取締役の個人別の報酬の決定方針を取締役会で決定しなければならなくなります。この権限を特定の取締役に委任をすることもできません。
ここで、一定の取締役会設置会社とは具体的に、公開会社であり、かつ、大会社である取締役会設置会社であって、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならない会社です。また、報酬等の決定方針の具体的な内容は今後法務省令で定められることになっていますが、法制審議会会社法制部会の資料によれば、以下のような内容が含まれることになる見込みです。

  • 取締役の個人別の報酬等についての報酬等の種類ごとの比率に係る決定の方針
  • 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の方法(代表取締役に決定を再一任するかどうか等を含む)の方針

Q6.株式報酬やストックオプション制度はどのように変わるのでしょうか。

A6

改正前会社法は、株式の発行や自己株式の処分をするためには、金銭の払込みまたは金銭以外の財産の給付が必要でした。このため、取締役に株式を付与する形の報酬(自社株型報酬)を与える場合、取締役の会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付するという法的構成がとられ、また、ストックオプションについては行使価格を1円とする1円ストックオプションが発行されてきました。これが改正会社法では、上場会社については、定款または株主総会による株式報酬の内容に関する報酬決議に従って募集株式の発行等をする場合には、払込みを不要とすることが認められることになりました。つまり、自社株型報酬の無償発行や0円ストックオプションが解禁されることになります。
また、このように報酬として無償で株式を発行した場合の資本金または準備金の計上額については、法務省令で定められる予定です。

Q7.補償契約とD&O保険に関する規定というのはどのようなものですか。

A7

まず、取締役や監査役などが会社と補償契約を締結することができるという規定が新設されました。補償契約とは、取締役等が職務執行に関して法令の規定への違反が疑われ、または責任追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用のうち通常要する費用や、第三者に生じた損害賠償責任を負う場合に、善意無重過失であるときの一定の損失について、その全部または一部を会社が補償することを約する契約です。
また、D&O保険(役員等賠償責任保険)契約の内容の決定は株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会、ただし取締役または執行役への委任は不可)の決議によらなければならないものとされました。
いずれの契約も会社法の規定がなくとも締結することは可能ですが、契約にあたっての手続等の解釈が必ずしも確立されていないことから、実務が適切に運用されるようにするために規定が新設されています。こうした規定が会社法において整備されることで、優秀な人材を取締役等に登用することができるようにし、取締役などがその職務の執行に伴い損害賠償責任を負うことを過度に恐れ、職務の執行が委縮することがないようにすることが期待されています。

Q8.上場会社のほとんどが社外取締役を設置しているのに、なぜ会社法で社外取締役の設置を義務付ける必要があるのでしょうか。

A8

上場会社等、すなわち監査役設置会社のうち、公開会社であり、かつ大会社であるものであって、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものは、社外取締役の設置が義務付けられることになります。現在、コーポレートガバナンス・コードの要請により東証上場会社の94.8%(2019年8月1日現在)※1が社外取締役を設置しており、今や全取締役の3分の1以上の設置が次なるターゲットとなりつつあります。
このため、法律で設置を義務付けることの実務的な影響はそれほど大きいものではありませんが、海外の機関投資家に対しハードローである会社法により上場会社に社外取締役の設置が一律に強制されているというメッセージを発信することで、我が国上場会社のガバナンスに関する懸念を払拭し、我が国資本市場が信頼されるようにするというねらいがあります。


※1
東京証券取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び 指名委員会・報酬委員会の設置状況」2019年8月31日。

Q9.株式交付制度とはどのようなものですか。

A9

株式交付制度とは、M&Aの新たな手法であり、会社が買収対象会社を完全子会社ではない議決権50%超の子会社とするために、買収対象会社の株式を取得し、その対価として当該株式会社の株式を交付するという制度です(図表2)。

図表2 株式交付制度
株式交付制度

出典:法務省民事局「会社法の一部を改正する法律の概要」に基づき、あずさ監査法人作成

株式交付 株式会社が他の株式会社(会社法上の株式会社に限られ、外国会社は除く)をその子会社とするために、当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付すること(会2条32の2号)
株式交付においては、株式交換と異なり、株式交付親会社は、必ずしも株式交付子会社の発行済株式のすべてを取得するものではないため、株式交付親会社は、株式交付子会社の株式を法律上当然に取得するものとせず、当該株式を有する者から譲り受けるものとされる。


ここで買収対象会社は、日本の会社法上の株式会社に限られ、外国会社は対象外とされています。また、買収会社が買収対象会社の全部の株式を当然に取得するのが株式交換ですが、株式交付は、株式交換と異なり、買収会社は買収対象会社の株式を法律上当然に取得するものとはせず、その株式を有する者から「譲り受ける」形とされています。このため、買収対象会社が上場会社である場合、買収会社が株式交付を行うにあたっては、金融商品取引法上の公開買付手続によらなければなりません。
こうしたことから、株式交付制度は、主として国内の非上場のベンチャー企業などを対象とするM&Aにおいて利用されることが想定されます。

Q10.改正会社法はいつから施行されるのですか。

A10

公布の日である2019年12月11日から1年6ヵ月以内に施行されます。ただし、株主総会資料の電子提供制度など時間を要する改正事項については、公布の日である2019年12月11日から3年6ヵ月以内に施行されます。具体的には、今後公布される政令において定められることになります。
また、施行までに会社施行規則などの関係省令の改正もなされる予定ですので、今後の動向にご留意ください。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
パートナー 和久 友子

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