IFRS第17号「保険契約」の修正案 - 最後の論点について分析を実施

IFRS第17号「保険契約」の実質的な修正のための再審議プロセスの最後の議論によって、新しい基準がどのように適用されるか明確になりました。

IFRS第17号「保険契約」の実質的な修正のための再審議プロセスの最後の議論によって、新しい基準がどのように適用されるか明確になりました。

ポイント

  • いくつかの分野で修正が確認された
  • 公開草案の提案を変更しない分野が追加で確認された
  • 発効日は3月に再審議される予定である
  • 次のステップ

1. 2020年2月の会議において、国際会計基準審議会(以下、IASBという)は、コメント提供者から受けたIFRS第17号に関するフィードバックを更に検討した上で、下記の分野における修正案を確認した。

(1)投資サービスに帰属する契約上のサービス・マージン(CSM)

IASBは、CSMに関連した投資リターン・サービスが存在するかどうかの要件について確認した。

論点の所在

一般的な測定モデルの下では、現状、以下を考慮して決定されるカバー単位にCSM残高を配分することで、CSMを純損益に認識する。

  • 契約に基づいて提供される給付の量
  • 契約の予想残存期間

IFRS第17号では、直接連動有配当契約以外の保険契約の場合、給付の量と契約の予想残存期間は投資サービスを考慮せず、保険カバーのみを考慮して決定される。

公開草案では、投資リターン・サービスを特定する要件が満たされる場合に、保険サービスと投資リターン・サービスの両者によって決定されるカバー単位に基づいてCSMを配分するという修正案が含まれていた。修正案における適用範囲と実務上の複雑さについて懸念の声が寄せられた。

 

IASBは2020年2月に何を決定したか?

2020年2月の会議で、IASBは以下について確認した。

  • 企業は、直接連動有配当契約以外の保険契約については保険カバーに加え、該当する場合には、投資リターン・サービスの給付の量とサービスが見込まれる期間を考慮して、カバー単位を決定する必要がある。
  • 公開草案の119B項の投資リターン・サービスの要件について、「正の投資リターン」という表現は「投資リターン」に置き換える。
  • 公開草案で提案されている開示要件。
  • Appendix Aに「保険契約サービス」の定義を追加。

IASBは、投資リターン・サービスを提供しない場合であっても、保険契約者に対する保険カバーの給付に貢献する活動を行っている範囲で、投資活動※Iに関連するコストを保険契約の境界線内のキャッシュ・フローとして含めなければならないとする修正についても確認した。


どのような影響があるのか?

企業は確認された修正案に従って投資リターン・サービスが存在するかどうかを決定するために保険契約を評価する必要があり、その評価はカバー期間およびカバー単位の決定に影響を与える可能性がある。

企業は、一般的な測定モデルにより処理されている保険契約について、規則的かつ合理的な基準でCSMを純損益を通じて認識する方法を決定するために、該当がある場合には、保険カバーと投資リターン・サービスの相対的なウェイト付け及びサービスの提供パターンを評価する必要があることを意味する。企業が当該決定を行う際には、直接連動有配当契約や、複数種類の保険カバーを提供する契約に対して、どのような測定アプローチを適用しているかも含めて検討する必要があるかもしれない。

この評価は以下に影響を与える可能性があるため重要である。

  • 利益認識のタイミング。
  • 履行キャッシュ・フローに、関連する投資コストが含まれているかどうか、含まれている場合はどの程度含まれているか。
  • 修正されたカバー期間の定義に従って、保険契約が保険料配分アプローチ(PAA)の適格性を満たすかどうか。

履行キャッシュ・フローに投資コストを含めることにより、企業のシステムとプロセス、利益認識及び財務諸表の表示に広範な影響を与える可能性がある。より具体的には、保険契約者に対する給付に貢献する活動を行っている範囲で、投資活動に関連する追加コストが生じている場合、企業は当該投資活動に関連するコストが保険契約の履行に直接起因するかどうか評価し、判断して決定しなければならない。保険給付に貢献するとは、企業の投資活動が保険契約者に対する給付の価値を高める状況を意味する。さらに、企業は適用される割引率を決定する際に、履行キャッシュ・フローに投資コストを含めることを考慮する必要があり、キャッシュ・フローの前提と整合させる必要がある。

投資要素を除いて考えると、保険契約者への給付に貢献する投資活動が含まれる契約は、保険契約者が保険事故なしでは投資リターンから給付を受け取る権利がない点で、投資リターン・サービスと区別されることをIASBは確認した。

投資要素が存在する場合、投資リターン・サービスが提供されているかどうかは明確である。投資リターン・サービスが提供されていないが、投資要素が存在する状況もある。たとえば、保険契約の投資要素に関する投資管理サービスのみを提供する場合、企業は投資リターン・サービスを提供していない。その他の多くのケースについては、企業はこの評価を行う際に、整合的で一貫した判断が必要となることが想定される。

企業は、定性的な情報のみを提供するのではなく、CSMを純損益にいつ認識すると見込んでいるかに関して、定量的な情報を開示することが要求されている。この要件は、財務諸表利用者がさまざまな保険商品について利益認識パターンの理解が可能となる点、他社の商品に関する比較可能性に資する点で有用である。予想されるCSMの純損益への認識パターンに関する開示は、貨幣の時間価値や実績調整による損益などの影響により、将来に実際に計上されるCSMの償却額とは異なる可能性がある点に注意が必要である。

※1IASBは、「投資活動」という用語が解釈の問題につながるかどうかを議論し、IASBスタッフはIFRS第17号の修正版をドラフトする際に文言を検討することに同意した。

(2)直接連動有配当契約のリスク軽減オプション

企業は、純損益を通じて公正価値で測定する(以下、FVTPL)区分で測定されるデリバティブ以外の金融商品を使用して、履行キャッシュ・フローに対する金融リスクの変動を軽減する場合、リスク軽減オプションを適用することが許容される。

論点の所在

IFRS第17号では、直接連動有配当契約から生じる金融リスクを軽減するためにデリバティブを使用する場合、企業はリスク軽減オプションを適用できる。IASBは、当該金融リスクを軽減するために再保険契約を購入する企業に、リスク軽減オプションの適用範囲を拡大することを2019年12月の会議で確認した。リスク軽減オプションを適用している場合、企業は直接連動有配当契約に対する金融リスクの変化の一部またはすべての影響を純損益に認識することが可能となる(リスク軽減オプションを適用していない場合はCSMで調整することになる)。デリバティブまたは再保険契約が関連する直接連動有配当契約の基礎となる項目ではない場合に発生してしまう会計上のミスマッチを排除するために、リスク軽減オプションが提供されている。

保険会社は、直接連動有配当契約から生じる金融リスクを軽減するためにデリバティブ以外の金融資産が使用された場合にも会計上のミスマッチが生じるというフィードバックをIASBに提出した。


IASBは2020年2月に何を決定したか?

IASBは、IFRS第17号B115項でリスク軽減オプションの適用範囲を拡大することを決定した。直接連動有配当契約から生じる金融リスクを軽減するためにFVTPLで測定されるデリバティブ以外の金融資産を使用している場合も、リスク軽減オプションの適用が認められるように、適用範囲が拡大された。


どのような影響があるのか?次に何をすべきか?

適用範囲の拡大は、直接連動有配当契約を発行する多くの保険会社に対する追加的な免除となる。リスク軽減オプションが適用可能な場合には、直接連動有配当契約に対するIFRS第17号B113項(b)の適用から生じる会計上のミスマッチが軽減されることが見込まれる。リスク軽減オプションが適用された場合、基礎となる項目から生じない金融リスクの変動の影響が純損益に直ちに認識され、当該金融リスクを軽減するために企業が保有する、要件を満たした資産の損益が純損益として認識されることで、会計上のミスマッチが低減される。当該オプションの適用により、企業のリスク軽減戦略が有効でないということを示してしまう可能性もある。

リスク軽減オプションはまた、一部のコメント提供者によって提起されていた、時の経過とともに性質が変化する契約の会計上のミスマッチに対し、企業に部分的な免除を提供することとなった。たとえば、積立利率(保証利率)で年金に変換するオプションが付された積立期間のある契約については変動手数料アプローチ(VFA)を適用する必要がある場合もあるが、積立期間のない年金契約は通常、一般的な測定モデルが適用される。修正案に従ってリスク軽減オプションを適用することにより、企業は、金融リスクを軽減するために使用されたデリバティブ以外の金融資産の変動の影響とともに、保険契約の基礎となる項目から生じない金融リスクの変動の影響を純損益に直接認識することができることになる。

IFRS第17号への移行日より前の期間にはリスク軽減オプションを適用できず、遡及適用が認められていないため、この問題は完全には解決されない。リスク軽減オプションは、移行時から将来にわたって適用されるが、移行時に既に存在する会計上のミスマッチは解決されない。リスク軽減オプションの適用要件を満たす契約に公正価値アプローチを適用することで会計上のミスマッチを軽減することができるかもしれない。

リスク軽減オプションの適用には、IFRS第17号のB116項で定められた適格基準を満たす必要がある。適用範囲が拡充された、直接連動有配当契約に対するリスク軽減オプションの使用を検討している保険会社は、デリバティブ以外の金融資産、デリバティブまたは再保険契約を使用して金融リスクを軽減する旨を文書化したリスク管理方針及びリスク管理戦略が存在することを確認する必要がある。

(3)保険契約者に対する税金の会計上の取扱い

IFRS第17号は、企業が保険契約の契約条件で定められている保険契約者に対して賦課可能な法人税の支払もしくは還付を履行キャッシュ・フローに含めることを要求する。

(4)移行に関する軽減措置とその他の軽微な修正

IASBは修正遡及アプローチの修正と公正価値アプローチにおける軽減措置に関し3つの修正を確認し、移行に関連する15の論点については修正を行わないことを決定した。IASBは公開草案で提案された多くの修正についても確認した。軽微な論点と分類されているが、財務的な観点及びオペレーションの観点から企業に重要な影響を及ぼす可能性がある。

論点の所在

公開草案において複数の軽微な修正や、表現の修正が提案されている。多くの項目について賛同を得られているが、懸念を表明したり、明確化を求めるコメント提供者も一部いた。

移行において認められているアプローチを適用する際に実務上の困難を伴う点について懸念の声があった。コメント提供者からのフィードバックは、アプローチ内でより多くのオプションや柔軟性を求めるものや、具体的な修正や軽減措置を提案するものまで含まれていた。

項目 決定した事項 参照基準
(他に言及していない限り、IFRS第17号を参照)
移行措置に関する軽減措置 - 裁量権付有配当投資契約 企業は、契約の開始時点もしくは契約の当初認識時点の情報が利用可能でない場合、契約が「裁量権付有配当投資契約」の定義を満たすかどうか、移行日時点の情報を用いて決定することができる。 C9項及びC21項
移行措置に関する軽減措置 - 保有している再保険契約

企業は、再保険契約を取得した日を決定する合理的で裏付け可能な情報を有していない場合に、基礎となる保険契約を発行した後に、出再保険契約を取得したとみなさなければならない。

つまり、基礎となる保険契約に係る当初損失に関する損失回収要素を、保有している当該再保険契約について認識することができないことを意味する。

C15A項
移行措置に関する軽減措置 - 期中財務諸表

過去の期中財務諸表で行った会計上の見積りを変更しないという会計方針の選択をした企業が該当する。

修正遡及アプローチのもとで選択した会計方針を遡及的に適用する合理的で裏付け可能な情報が無い場合、移行日において、あたかも移行日より前に期中財務諸表を作成したことがなかったという前提で、企業は以下を決定する。

・契約上のサービス・マージン(CSM)

・損失要素

・保険金融収益又は費用に関連する金額

B137項
別個の投資要素 企業は、裁量権付有配当投資契約の定義を満たす別個の投資要素に対してIFRS第17号を適用する。 11項
契約の認識 企業は、IFRS第17号25項で定める認識基準を満たす契約のみを、報告日に認識している保険契約グループに含める。契約の認識日は契約の発行日とは異なる可能性がある。 28項
(22項は変更されない。)
保険金融収益又は費用 基礎となる項目の公正価値の変動によって生じる保険契約グループの測定の変動(追加及び引出しを除く)は、貨幣の時間価値及び金融リスクの影響により生じた変動である。 B128項(c)
投資要素の定義 すべての状況において返済することについて投資要素の定義に含めた上で定義を最終化し、保険契約者貸付は必ずしも投資要素に該当しない点を明確にする。 Appendix A
B96項(c)に基づくCSMの調整

直接連動有配当保険契約以外の保険契約について、下記の相違のうち、貨幣の時間価値による変動及び金融リスクに関連する仮定に関する部分から生じる履行キャッシュ・フローの変動はCSMを調整しないことが明確にされる。

・当期に支払われると見込まれる契約者に対する貸付

・当期に支払われることとなった契約者に対する実際の貸付

B96項(c)
契約者貸付及び収益 契約者貸付から生じたキャッシュ・フローの変動による残存カバーに係る負債の変動は保険収益の金額に影響を与えない。 B123項(a)
受取保険料についての実績調整 企業が現在及び過去のサービスに関連する受取保険料について実績調整を保険収益として表示すべき点を明示する。 106項(a)及びB124項
B96項(d)におけるCSMの調整 直接連動有配当保険契約以外の保険契約について、企業が非金融リスクに係るリスク調整の変動を保険サービス損益と保険金融収益又は費用に分解することを選択した場合、非金融リスクに関連する変動のみに関し、当初認識日に決定した割引率を用いて測定し、CSMを調整する。 B96項(d)
変動手数料アプローチ(VFA)適格性テスト VFA適格性テストは契約単位で行う点が確認された。 B107項
IFRS第3号「企業結合」の結果的な修正 企業は、IFRS第17号の当初適用日より前に発生した企業結合(そして当該企業結合に限り)により取得された保険契約を、取得日ではなく、当初契約日の契約条件及びその他の要素に基づいて、引き続き分類することができる。 IFRS第3号
IFRS第9号「金融商品」の結果的な修正 公開草案の中で明確にした、発行したもしくは保有する金融保証契約ではなく、発行した金融保証契約(IFRS第17号の適用範囲外の場合)がIFRS第9号の適用範囲である点を修正する。 IFRS第9号2.1項

IASBは、コメント提供者よりコメントされた、移行に関する軽減措置や修正に関連する追加の論点について修正は提案していない。集約レベルの要件や、公正価値アプローチの適用、将来キャッシュ・フローの見積りに関する修正などについても、追加の修正は提案されなかった。


どのような影響があるのか?また財務諸表作成者は何を今すべきか?

IASBは提案された修正について確認を行い、財務諸表作成者はIFRS第17号の適用プランを推し進めることができる状況になった。いくつかの修正は「軽微」と分類されているが、IFRS第17号の適用において大きな影響を与えるかもしれない。例えば、VFA適格性テストが保険契約グループレベルではなく、契約単位で行う点に関する確認や、CSMの調整に関する要件の変更は、企業が現在進めているIFRS第17号適用の前提に変化を及ぼすかもしれない。財務諸表作成者はIFRS第17号適用の前提と適用計画について、必要に応じて、見直し・調整すべきである。

期中財務諸表に関する修正は、2020年1月のIASB会議で行われた議論を踏襲している。当該修正により財務諸表作成者にとってオペレーション上の負担が軽減されるかもしれない。しかし、移行時に認識されるCSMの金額及びその後の期間で認識されるCSMの償却額に影響を与える、会計上の見積りの変更に関する重要性によっては、財務的な影響が生じる可能性がある。

移行措置に関して更なる変更が行われないことが確認された。IFRS第17号への移行は実務上困難を伴い、対応に時間を要するため、財務諸表作成者は移行プランを推し進めるべきである。

2. IASBは以下の分野に関するIFRS第17号の要件を変更しないことを決定した。

(1)集約レベル

保険契約者間のリスクを世代間で共有する保険契約の年次コホートの要求事項には、特段の免除は設けられない。

論点の所在

IFRS第17号は、企業が保険契約のグループを認識して測定することを要求している。グループは下記のとおり決定される。

  • 保険契約のポートフォリオを特定する。
  • ポートフォリオを少なくとも3つのグループに分割する。
    • 当初認識時において不利な契約となるグループ
    • 当初認識後に不利となる可能性が大きくない契約のグループ
    • それ以外の契約のグループ
  • さらに、これらを1年を超えて発行されない契約のグループに分割する(年次コホート)。

異なる世代の保険契約者間でリスクを共有している場合、年次コホートの要求事項に対応するコストが高い。相互扶助が働く契約などのように、1つの契約のキャッシュ・フローが他の保険契約者との契約に影響を与える、もしくは影響を受け、他の契約と同じ資産プールを共有するためである。これは、企業が企業自身と保険契約者全体との間で基礎となる項目からのリターンを共有する方法について裁量権を持っている場合、または契約が変動手数料アプローチ(VFA)の適用対象である場合、特に複雑である。
CSMに対する年次コホートの影響に関する情報の損失は、次の場合は限定的である。

  • 契約の基礎となる項目からのリターンに対する金融保証の影響は、契約グループを超えて他の世代と共有され、企業の残りの持分はわずかである。
  • 契約には少額の「固定されたキャッシュ・フロー」のみが含まれ、これらの変更の影響は他の保険契約者と共有されないため、企業が負担する「固定されたキャッシュ・フロー」の金額が僅少である。

IASBは公開草案において年次コホートの要求事項についてコメント提供者へ質問をしなかったが、異なる世代間の保険契約者でリスクを共有する保険契約に年次コホートの要求事項を適用することについてコメント提供者から受け取ったフィードバックを検討することに同意した。


IASBは2020年2月に何を決定したか?

IASBは、IFRS第17号の年次コホートの要求事項を変更しないことを確認した。IASBは、ポートフォリオを年次コホートに分割するコストがその便益を上回る可能性がある場合は限られた状況であると認識した。ただし、免除規定を開発すると複雑性が増加することが想定され、解釈の問題や一貫性のない適用が発生し、結果としてIFRS第17号の導入作業に混乱が生じてしまい、すでに実施している導入作業のメリットが減じられてしまう可能性がある。


どのような影響があるのか?

IASBは、IFRS第17号の年次コホートの取扱いを変更しないことを再確認した。企業は、これらの要件をどのように適用するか留意する必要がある。特に相互扶助の契約を発行する企業は注意が必要である。
IASBは、以下により、年次コホートの目的とメリットが、時の経過による保険契約からのリターンのトレンドに関する重要な情報を提供することに貢献すると示した。

  • 不利な保険契約が収益性の高い保険契約と相殺されることを防ぐ。
  • 保険契約に関連するリターンが、契約のカバー期間にわたって純損益に完全に認識されるようにする。

一部の契約は、要求事項が複雑で適用のコストが大きく、判断が必要になる。ただし、年次コホートによって提供される情報は、特に現在の低金利環境が保険会社に影響を与えていることを踏まえると、財務諸表利用者にとって非常に重要である。

企業は、基礎となる項目が同じプールで共有される年次コホートを通じて、基礎となる項目の公正価値の企業における持分の変化をどのように配分するか検討する必要がある。これには重要な判断が必要であり、企業は財務諸表利用者に役立つ情報となるようなアプローチを検討する必要がある。

IFRS第17号は、年次コホートが適用された場合と同じ結果となる場合、企業が年次コホートレベルよりも高いレベルで契約をグループ化することを容認している。企業は、このようなシナリオの特定を検討する前に、当初認識時だけでなく、継続的にすべてのシナリオで年次コホートを適用した場合と同じ結果となることを証明する実務上の煩雑さを評価する必要がある。多くの契約では、企業は金融保証や実績調整により生じた損益やVFAを通じたその他の結果による影響を受ける。

(2)VFAアプローチにおける配当以外のキャッシュ・フローに関する取扱い

企業は、直接連動有配当契約について、基礎となる項目から生じていない貨幣の時間価値や金融リスクの影響による変動をCSMで調整しなければならないとする、IFRS第17号の要件を変更しない。

(3)時の経過とともに性質が変わる保険契約

例えば、VFA適用契約であったが、契約者がオプションを行使すると年金となる契約、などの時の経過とともに性質が変わる保険契約の取扱いについて、IFRS第17号の要件をIASBは変更しないことを決定し、このトピックに関する教育的マテリアルを公表しないことを決定した。

リスク軽減オプションに関するIASBの決定はある種の軽減措置を提供することになるかもしれない。

「IFRS第17号の発効日を除き、IASBは提案された修正に関する議論を2020年2月のIASB会議で終えた。2020年中頃に公表される最終基準がどのようなものか明らかになってきたため、財務諸表作成者はIFRS第17号へスムーズに移行できるようIFRS第17号適用プロジェクトを進め続けるべきである。」

Joachim Kolschbach
KPMG’s global IFRS insurance leader

次のステップ

IASBは2020年3月の会議で、修正に関する暫定的な決定について全体的な評価を行い、IFRS第17号の発効日及びIFRS第4号「保険契約」におけるIFRS第9号「金融商品」適用の一次的免除の延期について議論する予定である。2020年中頃に最終基準案を公表するというIASBの予定に変更はない。

英語コンテンツ(原文)

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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